第5章: 黒い巨塔と、白く濁る子宮

第5章: 黒い巨塔と、白く濁る子宮
複数客との同時プレイをこなしてから、また一週間が経っていた。
ヴェールの楽屋で、智美は鏡の前で髪を整えていた。今日のステージの内容は、まだ詳しく聞かされていなかった。ただ、涼が「特別な準備をしておけ」と言っただけで、いつもより早く呼び出されていた。
――何だろう。
胸の内で呟く声は、もはや不安よりも、むしろ淡い期待に近いものだった。新しい舞台、新しい辱め、その度に支払われる金。それが、彼女の日常を形作るリズムになっていた。
幕の陰から、紫織が現れた。
今日の彼女は、漆黒のレザーのガーターと、乳首を完全に露出させた網状のトップスという、過激さを増した衣装をまとっている。その手には、智美用の衣装らしい布切れがぶら下がっていた。
「智美ちゃん、今日は特別ゲストとの共演よ」
紫織の声には、いつもより艶やかな、ぞくりとするような興奮が滲んでいた。
「ゲスト……ですか」
「そう。ケインって知ってる?あの、黒くてでっかい外人さん」
智美の記憶がかすかに揺らぐ。確か、ヴェールにたまに現れる、圧倒的な体格の黒人男性だった。客席の隅に座り、陽気に笑いながら、舞台上の女たちを品定めするような眼差しを向けているのを、何度か目にしたことがある。
「あの……筋肉のすごい方」
「そうそう。で、今日はあの人と智美ちゃんがメインのステージなの。ケインのあれ、見たことある?」
紫織は、意味深に自分の股間あたりを指さした。
智美は首を振った。見たことはない。だが、噂だけは耳にしていた。あの男のペニスは、普通の人間のものではないと。女を壊すほどの巨塔だと。
「初めて見る時は、誰もが腰を抜かすわよ。あれが智美ちゃんのまだ小さい膣に入るんだから……考えただけで、私のあそこが疼いちゃう」
紫織は自分の腿の内側をさすりながら、くすくすと笑った。
智美の喉が、かすかに鳴った。恐怖が、じわりと胃の底から湧き上がってくる。今までの男たちとは、明らかに次元が違う。あの体格なら、あの筋張った腰なら、自分など簡単に粉々にできるだろう。
「怖い……の?」
智美は、自分でも気づかぬうちに、そんな言葉を零していた。
紫織は鏡に映る智美の顔を覗き込み、優しく、しかし確かに残忍な微笑みを浮かべた。
「怖いに決まってるわ。でもね、智美ちゃん。あれで貫かれた女は、みんな口を揃えて言うの。『もう、普通の男じゃ物足りない』って」
「壊れる……って聞きました」
「壊れるわよ。膣も、心も。でもそれがいいの。壊れたら、もう何も考えなくて済む。ただ感じるだけで、頭が真っ白になるの」
紫織は智美の肩に手を置き、その耳元に唇を寄せた。
「智美ちゃんも、もうそろそろ本物の快楽を知る時だと思う。今までの痛みや恥ずかしさの向こう側にある、ぶっ飛んだ世界をね」
吐息が耳朶に触れる。智美は身震いした。恐怖と、紫織の言葉に掻き立てられた得体の知れない興味とが、絡み合う。
「で、これが今日の衣装」
紫織が手にしていたものは、純白の、胸元と腰周りにフリルがついた、いわゆる「清楚系」のワンピースだった。しかし、布地は透けるほど薄く、背後には大きな開きがあり、前もって何も着用しないよう指示された。
「ケインとのコントラストを強調するために、白い衣装なの。これで少女に見せかけて、その少女が黒い巨根で犯される……客はそういうの、大好きなのよ」
智美は無言でうなずき、そのワンピースを受け取った。布地は滑らかで冷たく、まるで汚れを知らない少女の肌のようだった。
舞台袖は、いつもより熱気に包まれていた。
客席は満席で、ざわめきが幕を震わせる。特別ステージの告知が功を奏したのだろう。涼が暗がりに立っていた。今日は黒のタートルネックにスラックスという、舞台監督のような身なりだ。
「客の熱は最高潮だ。ケインの人気は高い。お前がうまくやれば、チップだけでも百万は軽く超えるだろう」
彼の声は、冷静なビジネストークのようだった。
「しっかり……やります」
智美は、震える声で答えた。
「あいつは乱暴に見えて、コントロールはできる。痛がれば、少しは手加減するかもしれん。だが、見せ場はあくまでお前が引き裂かれる瞬間だ。悲鳴はしっかり上げろ。それで客はさらに熱狂する」
涼は智美の頬を、事務的にぽんと軽く叩いた。
「さあ、行け」
幕が上がった。
スポットライトの白い光が、智美の全身を包む。純白のワンピースは光を通し、その下の裸身の輪郭がぼんやりと浮かび上がる。客席からため息混じりの歓声が上がった。
そして、舞台反対側の幕から、ケインが現れた。
彼の圧倒的な存在感に、空気が一瞬で重くなった。タンクトップから覗く隆起した胸筋と上腕。スウェットパンツの下でも明らかな、太くたくましい腿。身長差は三十センチ以上もあり、智美は彼の胸元あたりまでしか届かない。
ケインの顔は、陽気な笑みに歪んでいた。白い歯が、暗い肌にくっきりと浮かぶ。
「おーい、みんな!今夜はこの小さな日本のお姫様と遊ぶぜ!」
流暢な日本語だが、訛りが強い。その大声は、客席を沸かせた。
彼はステップを踏みながら智美に近づき、あっという間に彼女の背後に回った。巨大な掌が、智美の頭の上にのし掛かる。
「うわっ……!」
思わず声が漏れる。ケインは智美の頭を軽くごしごしと撫でながら、客席にウィンクした。
「ほら、みてみろよこの小ささ!俺の股間のやつ、こいつに入ると思うか?無理だろ、ってみんな思ってるだろ?」
客席から笑いと野次が飛ぶ。
ケインは智美の身体をくるりと回し、正面から抱き寄せた。智美の顔は、彼の胸板に埋もれる。汗と、強い男性用ボディローションの香りが混ざった、濃厚な体臭が鼻を衝く。
「でもな、入れてやるよ。このちっぽけな穴に、ぶち込んでやる。だからみんな、よく見ててくれ。これから、この子がどうなっちゃうか、な!」
ケインは智美を離すと、ずかずかと舞台中央へ歩いた。そして、何の躊躇いもなく、自分のスウェットパンツとボクサーパンツを一気に下ろした。
客席から、どよめきというより、唖然としたような息づかいが一斉に上がった。
智美の視界に、それがあらわれた。
――黒い……塔……
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