第4章: 大人になっても…

第4章: 大人になっても…
あれから十年、時は無情に過ぎ去っていった。小学四年生だった少女は、今や二十歳の大学生。東京の国立大学に進学し、親元を離れた一人暮らし。電話の向こうでは、母親の里沙がいつもと同じ、上ずった声で私の近況を聞いてくる。
「優香、家庭教師のバイト、順調? うちの優香が…こんなに立派になるなんて、近所の奥様たちの自慢の種よ」
そう言われるたび、私は適当に相槌を打ちながら、壁に背中を押し付けられる。自慢の種?この私が?白い壁の向こうには、私の本当の「バイト」の光景が広がっている。アルバイトと偽ったその場所は、非合法のストリップバー。観衆の前で、獣と戯れる、私だけの舞台だった。
バイトの日は、決まって部屋の薄暗がりの中で、自分を変えていく。日中の大学で着る、ごく普通のセーターやジーンズを脱ぎ捨て、黒いレザーのストラップが数本だけになった、身体のラインを強調するだけの衣装に身を包む。鏡に映る自分は、見慣れない他人のよう。でも、この身体こそが、夜の私の正体。冷たい空気に肌が震えるのを感じながら、私はバス停へと向かう。街のネオンが滲み、人々の喧騒が遠のいていく。目的地の扉を開けるたび、漂ってくるのは、安い酒の匂い、汗の匂い、そして、何より濃密な、獣特有の生々しい匂い。
今日の相手は、グレートデーン。コロンとは比べ物にならないほど、巨大な体を持つ。その漆黒の被毛は、ステージの色とりどりのライトを吸い込み、まるで影の塊のよう。知的で冷たい瞳が、私を品定めするように見下ろしている。観客のどよめきが、背中を押す。私はゆっくりとステージの中央へと歩み出り、獣の前に膝をつく。冷たい床の感触が、ひざから伝わる。
まずは、その巨大なペニスを味わうことから始まる。まだ鞘に収まっているものを、私の舌が巧みに刺激する。じゅるじゅる、と唾液が音を立て、獣の匂いが口いっぱいに広がる。やがて、ぬるりと先端が顔を出す。コロンの時よりもずっと太く、青白い血管が浮き出た、生々しい肉の塊。私はそれを咥え込む。喉の奥まで押し込まれるような圧迫感と、粘つくような熱。舌の上で脈動するのを感じながら、私は頭を動かす。これが私の仕事。これが、私を生かしている快楽の原点。観客の視線を背中に感じながら、私はその肉を愛でるように、執拗にしゃぶり続ける。
十分に昂ぶったことを確かめると、私は四つん這いになる。観衆の前で、自分の最も秘められた穴を、獣に差し出す。グレートデーンは私の背中に前足を乗せ、その重量で押さえつける。がっしりとした筋肉の塊が、私の華奢な体を完全に支配する。そして、温かくて湿った、巨大な先端が、私の肛門を探り当てる。
「んっ……!」
ぐっと、力強く押し込まれる。十年前、あのリビングで感じた痛みが、蘇る。でも、今の私の体は、その侵入を拒否しない。むしろ、受け入れるために、穴を緩めて待っている。ぬるりとした愛液と、自分の唾液で濡れた肛門は、ぐにり、と音を立てて、その巨大な肉棒を飲み込んでいく。裂けるような快感が、背骨を伝って脳に突き上げる。
「あっ……ああっ……」
グレートデーンの腰が、激しく動き始める。そのリズミカルなピストンは、獣の本能そのもの。ぐちゅぐちゅ、ぬちゃぬちゃ、という下品な音が、静かなホールに響き渡る。私の小さな穴が、巨大な獣のものとして、容赦なく蹂躙されている。その度に、体中が痺れ、意識が遠のいていく。そして、ある瞬間、ペニスの根元が、ぱんっと膨らむのを感じる。射精を前にした、犬の「結節(ノット)」だ。
「ひぐっ……!」
それが、私の体内でさらに膨れ上がり、抜けなくなる。体は完全にロックされ、逃げ場もない。この完全な支配、この助けなさが、私の奥底に眠っていた、あの日の記憶を呼び覚ます。小学四年生の私。部屋の隅で、震える体でコロンに犯されていた、あの頃の私。
「……コロン」
無意識に、その名が口から零れる。グレートデーンの激しい動きが、コロンのそれと重なる。怖くて、恥ずかしくて、でも、止められなかったあの疼き。汚れた穴を舐められた時の甘い痺れ。すべてが、現在の快感と融合し、濁流となって私を飲み込む。
「だめ……こんなの……コロン、ぁあああっ!」
体が、びくりと跳ねる。肛門を中心に、電撃が走る。最初の絶頂。だが、獣は止まらない。結節が敏感な内壁をこすり続けるたびに、新たな快感の波が襲いかかる。私は意識を失いそうになりながら、体を震わせ、何度も何度も絶頂を繰り返す。涙と涎が混じり合い、顔はぐしゃぐしゃ。それでも、獣のピストンは続く。やがて、グレートデーンが低い唸り声を上げ、熱い濁流が私の体の奥深くに放出される。その熱で、意識が完全に飛んだ。
しばらくして、結節が縮み、巨大なペニスがゆっくりと私の体内から抜けていく。ぐずり、と下品な音を立てて、抜け落ちた瞬間、どろりとした獣の精液と、私自身の愛液が、肛門から溢れ出し、太ももを伝って滴り落ちる。ぐったりと崩れ落ちる私を、観客の拍手が迎える。その拍手は、まるで別の世界の音のようだった。
私はよろめきながら、控え室へと戻る。鏡に映る顔は、悦びに蕩けきった、見るもおぞましい女の顔。でも、その瞳の奥には、十年前、あの日の絶望と悦びが、今も生き続けていた。親元を離れ、大人になった私の中で、十歳の少女は、獣と共に、永遠に生き続けるのだった。
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