第5章: 小さな魔性の遊び場
第5章: 小さな魔性の遊び場
佐藤勇気くんの部屋で、彼が蕩けきった表情でベッドに倒れ込むのを見下ろしながら、麻美は口の隅に残った、彼の若い味を舌先でなぞった。塩辛くて、少し青臭い、まだ熟れていない果実のような味。でも、その味が自分のものになったという満足感は、一瞬で消え去ってしまった。まるで熱い砂に水を注いだかのように、心の奥底にある乾いた穴は、何もかも吸い込んでしまうだけで、少しも潤うことはない。夕日が窓から差し込み、部屋をオレンジと紫の不思議な色に染めている。その光の中で、麻美は自分の影を見た。それは、自分の体よりずっと長く、黒々としていて、まるで別の生き物のように床に広がっていた。これが、私なの?麻美は静かに立ち上がり、何事もなかったかようにスカートを下ろし、ブラウスのボタンを直した。勇気くんはまだ、快感の余韻に浮かされたまま、意識が戻ってこない。もう、彼は自分の言いなり。でも、その事実は麻美に何の喜びも与えなかった。ただ、次の獲物を探すための、静かな暇つぶしに過ぎなかった。
翌日の放課後、麻美は意図的に教室に残った。友達は「また勉強してるの?」と声をかけて帰っていった。一人きりになった教室は、夕暮れの光を浴びて、まるで海の底のように静かで、どこか寂しげだった。机の上のチョークの粉が、きらきらと光っている。その時、廊下のほうから、ゴロゴロと重い音が近づいてくる。用務員のおじさんだ。白い作業着を着た、少し腰の曲がった男性。彼は毎日、この時間になると教室の掃除に入る。麻美は胸の奥で、小さな拍手をした。完璧なタイミング。彼は教室に入ってくると、麻美がいることに気づいてびっくりしたように目を丸くした。
「おや、渡辺さんか。まだいたのかい?」
「うん。ちょっと、宿題が終わらなくて…」
麻美は困ったような顔をして、鉛筆を握りしめた。おじさんは「ほう」と言って、ほうきで床を掃き始める。ざーっ、ざーっという音が、静寂の中で大きく響く。麻美は彼の動きを、猫が獲物を観察するように見つめていた。そして、彼が教室の隅のゴミ箱を空けに背を向けた瞬間、麻美は動いた。彼女はこっそりと自分の席を立ち、トイレの方へと向かった。でも、男子トイレの前で立ち止まった。そして、おじさんが気づくように、わざとらしくドアを開け閉めした。カチャン、という音が響く。
「おや…?」
おじさんがほうきを置き、不審そうにこちらを向いた。麻美は男子トイレのドアの前で、もじもじとしながら彼を見た。
「おじさん…。あの、男子トイレの方、水が漏れてるみたいなんだ…」
「へっ?漏れてだと?」
おじさんは驚いて、急いで駆け寄ってきた。彼の仕事着から、汗と洗剤の混ざったような、少し甘ったるい匂いがした。
「どこだい?」
「えっと、一番奥の個室…」
麻美はそう言って、おじさんをトイレの中へと導いた。薄暗く、消毒液の匂いが鼻をつく空間。おじさんは「なんだ、普通じゃないか」と言いながらも、一番奥の個室のドアを開けた。その瞬間、麻美は彼の背後に回り込み、ドアをバタンと閉めた。カチャリ、と鍵がかかる音が狭い空間に響き渡った。
「おい、渡辺さん、なんだこれは…!」
おじさんは驚いて振り返る。しかし、その目の前で、麻美はゆっくりとスカートの裾をまくり上げた。下着は、もうつけていない。昨日、勇気くんの部屋で興奮して濡らしてしまったものを、そのまま脱ぎ捨ててきたのだ。無防備な、十一歳の女の子の性器が、おじさんの目の前に突きつけられた。うっすらと生えた柔らかな産毛、まだぷっくりと膨らんだ陰唇。そして、その中心の割れ目からは、既に愛液がじゅわじゅわと滲み出て、薄いピンク色の粘膜を艶やかに濡らしている。子供特有の、少し甘酸っぱいような生々しい匂いが、おじさんの鼻孔を突いた。
「おじさん…。あたし、おしっこ、我慢できなくなっちゃった…」
麻美は赤くなった頬で、幼い声でそう言うと、そのまま便器の前にしゃがみ込んだ。そして、おじさんの顔をまっすぐに見つめながら、少しずつ足を開いていく。おじさんはもう、何も言えなかった。ただ、目を見開き、喉をからからさせながら、麻美の動きを見つめるしかなかった。麻美はお尻を少し浮かせ、ぐっと力を込めた。すると、しゅるしゅるっ、という小さな音と共に、黄金色の尿の線が、彼女の秘部から勢いよく放たれた。ざぁーーっ!という、下品で大胆な音が、個室のタイルの壁に反響する。温かいおしっこが便器に当たって跳ね返し、その匂いが濃密に立ち込める。おじさんはその光景に完全に魂を抜かれていた。無垢な少女の顔をした麻美が、目の前であらゆる羞恥を投げ捨て、最も原始的な行為を見せつけている。そのギャップが、彼の理性を粉々に砕いた。おしっこの勢いが弱まり、ぽつぽつと垂れる最後の一滴まで、麻美はおじさんから目をそらさなかった。そして、終わると、ふっと息を吐いて、振り返る。
「あ、あの…ごめんなさい、漏れちゃって…」
彼女はそう言って、立とうとするふりをして、わざとよろめいた。おじさんは思わず彼女を支えようと手を伸ばす。その手が、麻美のまだ濡れた、温かいお尻に触れてしまった。ぐにゅっ、と柔らかい感触。おじさんの体が、ビクッと痙攣した。その瞬間、麻美はにっこりと笑った。それは、もう子供の笑顔ではなかった。男を完全に手玉に取った、小さな魔性の勝利の笑顔だった。彼女はおじさんの腕を払いのけると、何事もなかったかようにドアを開け、その場を去っていった。残されたのは、おしっこの匂いと、絶望的な興奮で震える用務員のおじさんだけだった。
その週末、麻美はクラスの女の子、美咲ちゃんの家に遊びに行った。美咲ちゃんの家は、勇気くんの家とはまた違う、明るくてリビングが広い家だった。お父さんは眼鏡をかけた優しそうな人で、「よく来たね、麻美ちゃん」と笑顔で迎えてくれた。麻美は「お邪魔します」と元気に挨拶すると、美咲ちゃんと一緒にリビングの床に座り、お絵描きを始めた。お父さんはソファで新聞を読んでいる。その光景は、どこにでもある、平和な一家の風景だった。麻美はその平和を、自分の手で汚していくのが好きだった。
「ねえ、美咲ちゃん。クレヨン、落ちたかも」
麻美はそう言って、ソファの下に手を伸ばすフリをした。そして、四つん這いになる格好で、ゆっくりとスカートをめくっていった。今日は、意識的に丈の短いスカートをはいてきた。下着は、やっぱりつけていない。四つん這いになると、自然とスカートは腰までめくれ上がり、小さなお尻が丸出しになる。白くて、まだ脂肪がついていて、プニプニとした二つの丸。そして、その中央に、ぴったりと閉じた、色の薄い小さなお尻の穴。麻美はその穴を、お父さんに見せるために、少しだけ腰をひねった。お父さんは新聞から目を上げ、その瞬間、息を呑んだ。カシャリ、と新聞が握りしめられる音がした。彼の視線が、麻美の無防備なアナルに完全に釘付けになっているのを、麻美は背中で感じた。見てる。絶対に見てる。その事実が、麻美の秘部にまた熱を帯びさせた。
「あれ、ないなぁ…」
麻美はそう言って、さらに腰を動かす。すると、お尻の穴が、くぅっ、と少し開くような動きをした。その締まりの良い、小さな穴の動きが、お父さんの最後の理性の糸を断ち切った。彼はカッと顔を赤くし、新聞の下で何かを隠そうともがく。麻美はそっと顔を上げ、お父さんの目を捕らえた。そして、無邪気そのものの瞳で、こう尋ねた。
「お父さん、何か落ちてないかなぁ?お尻のあたり、なんかひんやりするんだけど…」
その言葉に、お父さんはもう耐えられなかった。彼は「ち、違う!何もない!」と叫ぶように言って、顔を両手で覆った。その肩が、小さく震えている。麻美は満足げに微笑み、スカートを下ろして元の座り方に戻った。もう、彼は堕ちた。自分の娘の友達である、十一歳の少女の無防備なアナルを見て、男として興奮してしまった。その罪悪感と欲望が、彼をこれからずっと苦しめるだろう。麻美はその想像をすると、心の底から、冷たい笑いがこみ上げてきた。
夜、麻美は自分の部屋の鏡の前に立った。母はまた、知らない男の匂いを家に持ち込んでいる。廊下の向こうから、かすかに甘ったるい香水の匂いと、抑えきれない女の喘ぎ声が聞こえてくる。いつもと同じ音。でも、麻美はもう孤独に聴いてはいなかった。鏡に映る自分の顔を見つめる。亜麻色の髪、大きな瞳。でも、その瞳はもう、何も映していない。まるで黒い穴のように、虚ろに開いている。今日、用務員のおじさんを堕とし、美咲ちゃんのお父さんを苦しめた。でも、心の穴は、以前にも増して深く、冷たい風が吹き抜けていく。麻美はゆっくりと、自分の服を脱いでいった。ブラウス、スカート。そして、裸の自分を鏡に映した。まだ幼い、発達途中の体。ぺったんこな胸、そして、今日、男たちを狂わせた秘部。麻美は指で、自分の性器をそっと触った。ぐしょっと、濡れている。でも、それは快感から来るものじゃない。ただ、からだが覚えているだけ。男の視線、男の吐息、男の欲望。その記憶が、体を濡らしているだけだ。鏡に映る少女は、誰かを愛したことも、誰かに愛されたこともない。ただ、男を堕とすというゲームに明け暮れる、小さな魔性だった。麻美は鏡に額を押し付けた。冷たいガラスの感触が、少し心地よかった。鏡の中の自分も、同じように額を押し付けている。その虚ろな瞳で、麻美は静かに呟いた。
「私、誰?」
答えは返ってこない。ただ、母の喘ぎ声が、ますます激しくなっていくのを聞くだけだった。麻美の遊び場は、これからも広がっていくだろう。でも、その遊び場にいるのは、永遠に一人っきりだった。
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