パパ活初心者同士…四十歳差の恋人
あらすじ
定年後も関連会社で働く佐田清彦(62)の、孤独ながらも安定した日常。常連のスナックで、益田とママが話題にする「パパ活」の話に、内心そっとときめく。持てなかった過去と、今さらながらの好奇心。その夜、自宅でスマホを手に、身分証明が必要な堅実そうなパパ活サイトに登録する。何度か失敗し、つながったのは「美術大学油画専攻・19歳」を名乗る小池美和だった。メッセージのやり取りから、彼女の真面目すぎる、世間知らずな性格が伝わってくる。初めての対面相談。彼女は黒髪ストレートに眼鏡、高校生と見まがう幼さで現れた。学費と画材購入代のために始めたという美和は、律儀に「セックスはできませんが」と前置きする。佐田にその気はなく、むしろ緊張をほぐそうとカフェで話すうち、美和は「お金をもらうためにはホテルに行かないと」と勝手に思い込み、自分から近くのラブホテルを誘う。戸惑いながらもついていく清彦。チェックインの機械の前で二人でまごつく姿が、年の差を一瞬消し去る。
第1章 孤独な日常と、仄かな誘い

第1章: 孤独な日常と、仄かな誘い
午後六時を回ったオフィスの窓からは、薄暮がゆっくりと街を染めていた。
佐田清彦は、書類に押すはんこの位置をわずかに調整し、そっと息を吐いた。関連会社とはいえ、定年後に再就職できたことへの感謝は、毎日のように胸をよぎる。それでも、六十二歳という年齢が、時にひしひしと重くのしかかる。帰宅しても待っているのは、静まり返った二LDKのマンションだけだ。
──今日も、あのスナックに寄って帰るか。
そう思いながら、地味なグレーのダウンジャケットの袖を通した。ネクタイはもう外している。首元が少し楽になる。
駅前から一本路地を入ったその店は、「楓」という控えめな看板を掲げていた。十年以上、通い続けている数少ない場所のひとつだ。
チャイムの音とともにドアを開けると、ほのかに甘い香水の匂いと、静かなジャズが流れる空間が広がった。
「あら、佐田さん。お疲れさま」
カウンターの中から、栗色のウェーブが豊かなママが顔を上げ、慣れた笑みを向けてくれる。黒い光沢のあるドレスが、柔らかな店内の照明に照らされて、ほんのりと輝いている。
「こんばんは。相変わらずいい香りですね」
清彦は決まり文句のようにそう言い、常連の席であるカウンターの端に腰を下ろした。すぐ隣には、すでに赤らんだ顔をした益田が、ウイスキーの水割りを傾けていた。
「おう、佐田。遅いじゃねえか。もう一杯目が終わるところだぜ」
「仕事が少し伸びてしまいまして。益田さんは相変わらずお早い」
「はっはっは! ここのママの話が面白くてな、つい長居しちまうんだよ」
益田は小太りの体を揺らして笑った。開襟シャツの一番上のボタンが外れており、のんきそうな雰囲気を醸し出している。
ママが清彦の前に、水割りのグラスと、小さな鉢に入れた枝豆をそっと置いた。
「いつものでよろしいですか、佐田さん」
「ええ、ありがとうございます」
グラスを手に取ると、冷たい感触が指先に伝わる。少し緊張が解けるのを感じた。
益田はママの方に体を向けた。
「でさ、さっきの話の続きだけどよ、ママ。あの子、結局どうなったんだ?」
ママはほんのりと困ったような、それでいてどこか楽しげな微笑みを浮かべながら、グラスを磨く手を緩やかに動かし続けた。
「ええ、結局はお断りしたみたいですわ。『まだそんなこと考えるには早いです』って。まあ、仕方ないですよね、まだ二十歳になったばかりですし」
「はあ? もったいねえなあ。今の時代、そういうので学費稼ぐ子も多いってのに」
清彦は話の流れを聞きながら、そっと枝豆を口に運んだ。塩気がほどよく、ほんのり温かい。
「何の話ですか?」
ふと尋ねると、益田が大きく身を乗り出した。
「ああ、佐田、知らねえのか? パパ活だよ、パパ活。今どきの女子大生がね、学費とか生活費とか稼ぐために、年の離れたおっさんと会うんだってさ。飯食って話して、それでお小遣いもらう。中にはその先までいくのもいるらしいがな」
──パパ活。
その言葉は、清彦の耳に、奇妙な反響を残した。テレビやネットでちらりと見かけたことはある。しかし、実際に身近な話題として、こうして酒場で語られるのを聞くのは初めてだ。
「そ、そうなんですか」
「そうだよ! ママの知り合いの娘さんが、友達がやってるって話を聞いてきてさ。でも本人はやる気ないみたいでね。もったいないって思うんだよ、俺は」
ママは優しく首を振った。
「でも、益田さん。あの子は真面目ですから。そういうのに手を出すタイプじゃないんですよ。それに、危ない目に遭うかもしれないじゃありませんか」
「まあ、確かにそうだな。怪しいやつもいるだろうし。でもさ、ちゃんとしたサイトもあるらしいぜ。身分証明が必要なとこだと、登録も厳しいし、安全だって聞いた」
清彦は無意識に、グラスの中の氷をカランカランと揺らしていた。指先が少し冷たくなっている。
──お金で、話ができる。
それは、どこか歪んだ取引に思えた。しかし、その歪みの奥に、ひそやかに灯るような可能性も、感じられないわけではなかった。
持てなかった。若い頃から、女性との付き合い方はいつも不器用で、気づけば独りで過ごす時間ばかりが積み重なっていた。定年まで勤めた会社でも、恋愛話や家族の話題には、ただ聞き役に回るだけだった。
今さら、そんなことを考えても仕方ない。歳は取った。髪には白髪が混じり、顔には深い皺が刻まれている。それでも、胸の奥で微かに揺らめく「もしも」という言葉が、消え去ることはなかった。
「……佐田さん、どうかしました?」
ママの声にはげられ、清彦ははっと我に返った。
「い、いえ。ただ、少し考え事をしておりまして」
益田がけたたましく笑った。
「はっは! 佐田も興味あるんだろ? でもな、お前みたいな真面目そうな顔してると、逆に怪しまれるかもしれねえぞ。『こんなオジサン、大丈夫か?』ってな」
「べ、別に興味があるわけでは……」
「まあまあ、益田さん。佐田さんをからかわないでくださいよ」
ママが仲裁するように言い、清彦のグラスにそっとウイスキーを注ぎ足した。
「でも、確かに世の中は変わりましたわね。私たちが若い頃には考えられなかったようなことが、当たり前のようにあるんですから」
その言葉に、清彦は小さく頷いた。
そうだ、時代は変わった。自分が若かった頃とは、全てが違う。ならば、ほんの少しだけ、その変化に触れてみても、罰は当たらないのではないか。
──ただ、話をするだけなら。
そう思うと、心臓の鼓動が、少しだけ早くなっているのに気づいた。
その夜、清彦は自宅のソファに座り、スマートフォンの画面をじっと見つめていた。
リビングは静かだ。テレビの音もなく、聞こえるのは室外機の微かな唸りだけ。五十五歳を過ぎてやっと手に入れたこのマンションは、清潔で、整っていて、完璧に孤独だった。
検索バーに「パパ活 サイト」と打ち込む指先が、わずかに震えている。
いくつものサイトが表示される。派手な広告写真が並び、言葉遣いもざらついたものがある。清彦は眉をひそめた。そんなものは、自分には合わない。
そして、ふと目に留まった。シンプルなデザインで、「身分証明書による本人確認を徹底しています」と掲げているサイトがあった。
指が、自然とそのリンクをタップした。
登録画面には、生年月日、職業、年収の欄が並ぶ。全て正直に記入する。嘘はつけない性分だ。プロフィール写真は、スーツを着た、数年前の自分を使った。笑顔を作ろうとしたが、どこか硬い表情になった。
メッセージ機能で、何人かの女性に挨拶を送ってみた。返事が来るのは半分ほど。そのほとんどが、一回のメッセージで途絶えた。
──やはり、無理なのか。
少し落胆しながら、最後の一つのプロフィールを開いた。
「美術大学油画専攻、19歳。学費と画材購入のため、はじめてパパ活をしてみます。お話しするのが好きです」
プロフィール写真は、顔がはっきり写っていない。長い黒髪が肩にかかり、丸いフレームの眼鏡が微かに光っている。服装は白いブラウスに、紺色のプリーツスカート。高校生のようだ。
少し躊躇ったが、清彦はメッセージを打ち始めた。
「はじめまして。佐田と申します。プロフィールを拝見しました。美術、いいですね。私は詳しくありませんが、興味があります」
送信ボタンを押すと、すぐに既読がついた。
返事が返ってくるまで、十秒とかからなかった。
「はじめまして、美和と申します。ご連絡いただき、ありがとうございます。美術について、お話できる機会があれば嬉しいです。ただ、一つお伝えしておかなくてはならないことがあります。私は、その、セックスはできません。もし、それをお望みでしたら、お断りさせていただきます。すみません」
文章から、ひどく緊張しているのが伝わってきた。それ以上に、律儀で真面目すぎる性格が、滲み出ている。
清彦はすぐに返信した。
「いえいえ、それで結構です。ただ、お話ができればと思いまして。もしよろしければ、近くのカフェで、お茶程度でも」
しばらく間が空いた。
「ありがとうございます。では、お願いします。場所と日時を、教えていただけますか?」
約束は、三日後の土曜日、午後二時に、駅前の大きな書店にあるカフェに決まった。
当日、清彦は十年ぶりに新しいチノパンをはき、襟のしっかりしたYシャツを選んだ。少し若すぎるかと思い、結局いつもの地味な紺色のカーディガンを羽織った。
カフェには十分早く着いた。窓際の席に座り、コーヒーを頼んで待つ。手のひらにじんわりと汗がにじんでいる。
──十九歳か。孫ほどの年齢差だ。
ふとそんなことを考えると、得体の知れない罪悪感が胸をよぎった。しかし、もう後戻りはできない。
二時ちょうど、入口のガラスドアが開いた。
長い、墨のように黒いストレートの髪。白いブラウスに紺のスカート、そして黒いニーハイソックス。丸いフレームの眼鏡の奥には、切れ長で、どこかうつろな黒目が光っていた。
高校生と見まがう、未成熟な佇まい。スレンダーで、胸の膨らみも控えめだ。が、その姿は、清彦が想像していた以上に「少女」そのものだった。
彼女はきょろきょろと店内を見回し、清彦と目が合うと、ぴくりと体を震わせた。そして、小さく息を吸い込み、ゆっくりと近づいてきた。
「あの……佐田さん、でしょうか?」
声はか細く、しかし澄んでいる。少し上ずっている。
「はい、私です。美和さんですね。どうぞ、お掛けください」
清彦は立ち上がり、いささかぎこちなく椅子を引いた。
美和はぺこりと丁寧にお辞儀をし、そっと席に着いた。リュックサックを膝の上に置き、ぎゅっと抱きしめるような仕草をした。
「お会いできて、光栄です。お忙しいところ、申し訳ありません」
「いえ、こちらこそ。ええと……何か飲みますか?」
「あ、はい。では、紅茶で……」
美和はメニューをほとんど見もせずに答えた。緊張が伝染するように、清彦も喉が渇いた。
注文を済ませ、しばらく沈黙が流れた。外を歩く人のざわめきが、ガラス越しにぼんやりと聞こえてくる。
「美和さんは、美術大学油画専攻なんですね」
清彦がまず口を開いた。
「はい。油絵を専攻しています。でも、まだ一年生なので、基礎ばかりで……」
「それはすごい。絵を描くのは、子どもの頃から好きだったんですか?」
その問いに、美和の表情がほんのりと緩んだ。
「はい。物心ついた時から、紙と鉛筆が好きでした。特に、人の表情を描くのが……その、人の内面みたいなものが、少しでも描き出せたらな、って」
彼女の目が、一瞬だけ輝いた。それは、自分の好きなことを語る者に共通の、熱のようなものだ。
「内面、か。確かに、絵画ってそういうものかもしれませんね。私は、そういう芸術的なことはからっきしでして」
「そんなことありませんよ。佐田さんのお仕事は?」
「ええ、今は関連会社で、経理関係の書類仕事をしています。以前は、本社でずっと同じようなことをしていましたが」
「経理……数字を扱うお仕事ですよね。私、数字は苦手です。でも、きちんと正確に処理されている様子は、ある種の美しさを感じます。秩序があるというか」
その言葉に、清彦は驚いた。
「美しさ、ですか。そう言われるのは初めてです」
「すみません、変なこと言って」
「いえ、とても嬉しいです」
ほんの少し、緊張が解けた。紅茶が運ばれてきて、美和は砂糖を一粒だけカップに入れ、スプーンでゆっくりとかき混ぜた。その仕草が、どこか子供っぽく、また愛らしかった。
一時間ほど、美術の話、大学の話、そして清彦の仕事の話をした。美和は、時に真剣に、時に恥ずかしそうに、しかし一生懸命に話を聞いてくれた。清彦が詰まりながら話す様子を、決してせかさなかった。
やがて、美和がそっと時計を見た。
「あの……佐田さん。もう、そろそろ時間が……」
「あ、そうですね。ええと……」
清彦は、封筒を取り出そうとした。事前に準備していた、約束の金額だ。しかし、その前に、美和が顔を上げ、真っ直ぐに清彦を見つめた。
その目は、さっきまでの柔和さから一変し、どこか覚悟を決めたような、硬い輝きを宿していた。
「佐田さん。お金をいただくからには、私も……ちゃんと、対価をお支払いしなければいけないと思います」
「え?」
「カフェでのお話だけでは、申し訳ないです。なので……」
美和は唇をかんだ。頬が少し赤らんでいる。
「ホテルに行きませんか? 近くに、そういう場所があると思います。私は……初めてなので、よくわからないですが、機械でチェックインするやつなら、少し調べました」
清彦は、言葉を失った。
ホテル? 彼女は、何を言っているのだろう。いや、彼女の言葉の意味は明らかだ。しかし、清彦にはそんなつもりは毛頭ない。ただ、この緊張した少女と、もう少し話がしたかっただけだ。
「ちょ、ちょっと待ってください、美和さん。別に、そんなことをする必要は……」
「わ、私がいたらないばっかりに、魅力がないんでしょうか?」
美和の声が震えた。目がうるんでいる。
「どうか、すみませんが、お願いします。私、一生懸命しますから。そうしないと、お金をもらう資格がないような気がして……」
彼女は完全に誤解している。パパ活という行為に対して、極端にストイックで歪んだ解釈をしている。清彦は慌てた。
「違います! 美和さんは十分……いや、そんなことじゃなくて、私はただ美和さんと話がしたくて……」
「でも!」
美和は勢いよく立ち上がった。周囲の視線が少し集まる。
「私、約束は守りたいんです。いただくものに対して、誠実でありたい。だから……お願いします。近くの、あの……ラブホテルに」
その言葉を聞き、清彦は呆然とした。
そして、彼女の眼差しが、どこまでも真剣で、必死であることを理解した。この少女は、世間知らずで、純粋で、そして頑ななまでに「約束」を重んじるのだ。
断り続けることもできた。しかし、彼女がそれでも諦めず、あるいは傷つくかもしれない。それよりも、彼女の「誠実さ」を、踏みにじるような気がした。
──何てことを。
清彦は、ゆっくりと立ち上がった。
「……わかりました。でも、何も無理はしなくていいですからね。ただ……場所がわかるんですか?」
美和は、はっとして小さく頷いた。
「はい。前に、友達に聞いたことがあって……駅の東口を出たところに、あります」
「そうですか。じゃあ……行きましょうか」
外に出ると、夕方の冷たい空気が頬を撫でた。歓楽街の入口に近い、そのラブホテルは、派手なネオンサインを灯していた。清彦も、この歳になるまで足を踏み入れたことがない場所だ。
美和は、真っ直ぐにその建物に向かって歩き始めた。背筋がぴんと伸びているが、歩幅は小さく、足取りは明らかに緊張に震えていた。
自動ドアが開き、無機質な明るさのロビーに足を踏み入れる。正面には、大きなタッチパネルのチェックイン機がある。誰もいない。
二人は、その機械の前に立った。
「えっと……ここで、ボタンを押すんですよね」
美和が小声で呟く。指先が、画面の上で少し揺れている。
清彦も、どうすればいいかわからない。画面上には、部屋のタイプと宿泊時間、料金が表示されている。全てが初めての体験だ。
「あの……三時間で、いいですか?」
美和が振り返らずに尋ねた。
「ええ、それで」
彼女は、表示されている中から一番安い部屋を選び、クレジットカードを挿入する場所を探した。
「あれ? ここかな……でも、私、カード持ってません……」
「私が持ちますよ」
清彦が財布からカードを取り出し、差し込んだ。機械がぶんぶんと音を立て、カードを読み込む。
その間、二人は並んで、無言で画面を見つめていた。肩と肩が、わずかに触れ合う距離。清彦は、美和の体から、ほのかな石鹸の香りがするのに気づいた。
──変な状況だ。
ふと、そんな思いがよぎった。六十二歳の男と、十九歳の少女が、ラブホテルのチェックイン機の前で、まるで迷子のように立ち尽くしている。
しかし、その共有した困惑が、不思議と年の差という壁を、少しだけ薄くしているようにも感じた。ここには、人生の先輩も後輩もいない。ただ、初めての場所に戸惑う二人の人間がいるだけだ。
カードが戻り、鍵のようなカードキーと、レシートが出てきた。
美和がそれをそっと取り、清彦に渡そうとした。
「どうぞ」
「あ、ありがとう」
清彦が受け取ると、彼女はほっとしたように小さく息を吐いた。
「部屋は……三階だそうです。エレベーターは……」
彼女がまた先に歩き出す。清彦はその細い背中を見つめながら、ゆっくりと後を追った。
エレベーターの中は鏡張りで、二人の姿がくっきりと映った。清彦の地味なカーディガンと、美和の清楚なブラウス姿が、この場にそぐわないほどに浮いて見える。
美和はうつむき、床を見つめていた。耳たぶが赤い。
ドアが開き、廊下に出る。カーペットがふかふかとしていて、足音を吸い込む。部屋番号を探し、カードキーをかざす。
「ピッ」という電子音とともに、ドアが開いた。
中は薄暗く、自動で照明がついた。派手な紫色の壁紙と、大きな円形のベッド。天井には鏡が張られていた。
美和は入口で足が止まった。ぽかんと口を開け、目を見張っている。
清彦も、思わず咽せ返るような空気を吸い込んだ。
そして、彼は気づいた。
何かが、もう後戻りできないところまで、ゆっくりと、しかし確実に転がり始めていることを。
第2章 初めての密室と、触れ合う体温

第2章: 初めての密室と、触れ合う体温
エレベーターが静かに三階で停止した音は、金属的な軽い響きだった。
扉が開くと、薄暗い廊下が延びていた。
壁は濃いえんじ色のベルベット調で、足元には柄の派手なカーペットが敷かれている。
「……こ、こちらみたいです」
美和が、手に握ったキーカードに印刷された部屋番号を、かすれた声で確かめた。
彼女の指先がわずかに震えていた。
佐田清彦はただ頷くしかなく、自分の喉が渇いているのを感じた。
彼女の後ろについて廊下を進む。
部屋のドアは他の扉と比べて特に目立つ装飾はないが、重厚な木目調だった。
美和がカードをかざす。
「ピー」という電子音と共に、ロックが外れる音がした。
「……入ります」
美和がそう呟くと、ドアノブを回した。
中は、外の廊下よりもさらに暗かった。
美和が壁を探り、照明のスイッチを見つけて押す。
ぱっと灯ったのは、間接照明の柔らかなオレンジ色の光だった。
部屋は二人が想像していたより広かった。
中央には大きめの円形ベッドがどっしりと置かれ、天井には鏡が張られていた。
壁には抽象画風の派手な絵がかけられ、部屋の隅にはジャグジーバスと思しきものが備え付けられている。
「……わあ」
美和が息を呑んだ。
その声には、驚きと、どこか非現実的なものを見てしまったような困惑が混ざっていた。
佐田もまた、言葉を失った。
これまで入ったことのない種類の空間が、そこには広がっていた。
自分たちが今、何をしにここに来たのかという現実が、その派手な内装によって突きつけられるようで、彼はたまらず目をそらした。
美和はそっとドアを閉め、内側から鎖をかけた。
かちゃり、という小さな音が、余計に室内の静けさを強調した。
「……すみません。こんな場所、初めてで……」
美和が背中を向けたまま、か細く言った。
彼女の肩が、微かに縮こまっているように見えた。
「い、いえ……私も初めてですから」
佐田はそう答えるのが精一杯だった。
彼は部屋の中央に立ったまま、どこに座ればいいのかもわからず、ただ固まっていた。
ベッドのシーツは真っ白で、無機質にひだが整えられている。
そこに体を横たえるという想像さえ、まだ現実味を帯びてこない。
美和がゆっくりと振り返った。
彼女の顔は、間接照明のせいで影ができ、普段よりもさらに幼く見えた。
丸いフレームの眼鏡の奥で、黒い瞳がきょとんとしている。
「……お約束ですから」
美和がぽつりと言った。
「え?」
「お金をいただく以上、私も……ちゃんとしなければいけないと思います」
彼女の言葉は、どこか棒読みのように、練習してきた台詞を繰り返しているようだった。
その律儀さが、かえって佐田の胸を締め付けた。
「美和さん、そんなに無理しなくていいんです。ただ……ここに来ただけでも……」
「ダメです」
美和は首を振った。
黒く長い髪が肩を揺すった。
「私、こういうこと、わかってないかもしれないですけど……いただくものには、きちんとお返ししないと。それが……私の、やり方なんです」
彼女はそう言うと、一歩、佐田に近寄った。
そして、震える手を差し出して、佐田のダウンジャケットのファスナーに触れた。
「……失礼します」
かさかさ、という小さな音だけが、張り詰めた空気を切り裂いた。
ファスナーが下り、ジャケットが開かれる。
佐田は息を止めた。
彼女の指先が、彼の胸に触れる。
ほんの一瞬、ツィード地のシャツの上を通り過ぎるだけの接触だったが、その温もりが、生地の向こう側にはっきりと伝わってきた。
「……私、美術大学なので」
美和が、息を詰めながら話し始めた。
「裸体を見るのは……慣れています。ヌードのモデルさんも、何度も描きましたから」
彼女はそう言いながら、ジャケットの肩をそっと押し下げた。
佐田は無意識に腕を抜き、ジャケットが床に落ちるのを感じた。
次に彼女の手が、彼のシャツのボタンに移った。
一番上のボタンが外れる。
「……でも」
美和の声が、一段と低くなった。
「触るのは……初めてです」
二つ目のボタン。
三つ目。
彼女の指の動きはぎこちなく、時々、ボタンホールからボタンがすり抜けずに、もたついた。
そのたびに、彼女の息遣いが少しだけ乱れるのが聞こえた。
佐田はただ、じっとしているしかなかった。
自分より四十歳以上も年下の少女が、震える手で自分の服を脱がそうとしている。
その光景は、どこまでも非現実的で、そしてどこまでも生々しかった。
シャツが完全に開かれた。
彼はやせ型で、年相応に胸板には厚みがなく、肋骨の浮き上がりが少し目立つ。
長年デスクワークを続けてきたせいか、腹筋は緩んでおり、皮膚には年の波が刻まれていた。
「……すみません」
美和が突然、謝った。
「何が……です?」
「私、こういうの……よくわからなくて。ただ、見たままを……そうですね、観察するように……しか、できないかもしれません」
彼女はそう言うと、視線を佐田のズボンのベルトに下ろした。
彼女の手が、革のベルトに触れる。
バックルを外す音が、かちゃりと乾いた響きを立てた。
ジッパーが下りる音。
チノパンのボタンが外される。
そして、彼女が彼のパンツをそっと下ろした時、佐田は自分の中にある変化を、否応なく意識させられた。
下着の上から、ぼんやりと形が浮かび上がっている。
彼自身、そんなに簡単に興奮するとは思っていなかった。
長い間、そういう欲求すら麻痺していたような気がしていたからだ。
だが、今、この十九歳の少女の真剣なまなざしの前に、自分の体が正直に反応している。
美和はパンツを完全に脱がせると、跪くように腰を下ろした。
彼女の視線の高さは、ちょうど彼の腰の辺りになる。
「……これが」
美和が、かすかに息を漏らした。
「男性の……そうですね」
彼女は学術的な用語を探しているようだった。
「陰茎……ですね」
その言葉を、彼女が口にした時の、真っ直ぐな響き。
恥じらいよりも先に、好奇心が滲んでいるように聞こえた。
彼女はゆっくりと手を伸ばし、彼のトランクスの生地に触れた。
その下で、確かに形を変えているものがあった。
「触っても……いいですか?」
美和が上を見上げた。
眼鏡のレンズの向こうで、彼女の瞳はきらきらと光っていた。
「……ええ。どうぞ」
佐田はそう答えるのがやっとだった。
彼女の指先が、トランクスの端を掴み、ゆっくりと引き下ろした。
まずは陰毛が現れ、その下から、くすんだ肌色をした陰茎が、ゆっくりと顔を出した。
まだ完全には勃起しておらず、だらりとたれ下がっている。
先端の亀頭は包皮に半分覆われ、わずかに湿った光を帯びていた。
「……ふうん」
美和は、画家がモデルを観察する時のように、首をかしげて眺めた。
「思ってたより……柔らかそうですね」
彼女はそう呟くと、恐る恐る手を伸ばし、人差し指の腹で、陰茎の根元をそっと触れた。
「……温かい」
彼女の指が、ゆっくりと幹を這い上がる。
包皮の皺をなぞり、先端へ。
そして、ついに亀頭の先に触れた時、佐田は思わず息を詰めた。
「……ちょっと、濡れてますね」
美和がそう言うと、その触れた指先を、自分の目の前にかざした。
彼女は少し躊躇い、それから、その指をそっと舌先で舐めた。
一瞬、目を細めた。
「……ちょっと、不思議な味がします」
彼女は率直に感想を口にした。
「塩気というか……ちょっと、鉄っぽいというか。でも、嫌な味じゃないです」
その純真な分析に、佐田は逆に激しい恥ずかしさが襲った。
そして同時に、彼の陰茎が、彼女の視線と口にされた感想に反応して、ぐっと脈打つのを感じた。
肉が固くなり、徐々に立ち上がっていく。
「……あ」
美和が小さく声を上げた。
「大きくなって……きました」
彼女は興味深そうに、その変化を見つめていた。
そして、再び手を伸ばし、今度はしっかりと握り込んだ。
「……硬い」
彼女は握った手の中で、陰茎がさらに膨らんでいくのを感じているようだった。
「こんなに熱を持って……生きてるみたいです」
彼女はそう呟くと、前屈みになり、顔を近づけた。
彼女の息が、亀頭の先端に直接かかる。
温かく、湿った吐息。
「……舐めても……いいですか?」
彼女が尋ねた。
声は震えていたが、そこには逃げる気配はなかった。
「……お願いします」
佐田は、自分でも驚くほど自然に、そう答えた。
美和はうなずくと、舌をちょっとだけ出した。
桃色の小さな舌先が、亀頭のてっぺんを、つん、と軽く突いた。
「……ん」
彼女は何かを確かめるように、また舐めた。
今度は少し広めに、先端全体を覆うように。
「くちゅっ」
小さな音がした。
彼女は目を閉じて、味わっているようだった。
そして、もう一度、今度は唇で包み込むように咥えた。
完全に口に入れたわけではない。
ただ、先端をくわえ、舌で弄んでいるだけだった。
「ちゅっ……んっ……ちょっと……すっぱいような……」
彼女が囁くように言うたびに、その息が彼の敏感な部分に直接触れた。
佐田は、自分の股間で十九歳の少女の口が動いているという現実に、めまいを覚えそうになった。
「……美和さん」
彼は思わず、彼女の名を呼んだ。
美和は口を離し、上を見上げた。
彼女の唇が、唾液でわずかに光っている。
「……私も、何か……しないと、いけませんか?」
彼女は真剣な顔で尋ねた。
「だって、これだけじゃ……私ばっかり、させてもらってるみたいで」
その律儀な発想に、佐田は胸が熱くなった。
「……美和さんも、脱いで……いただけますか?」
彼はそう頼んだ。
声がかすれていた。
美和は一瞬、目を見開いたが、すぐにゆっくりとうなずいた。
「……はい。そうですね。私も、脱がないと……不公平ですよね」
彼女は立ち上がり、自分のブラウスのボタンを外し始めた。
彼女の手つきは、佐田の服を脱がせた時よりもさらにぎこちなく、時間がかかった。
白いブラウスが開かれ、下から現れたのは、真っ白な綿のブラだった。
それは彼女の年齢にふさわしく、飾り気のない、機能的なものだった。
彼女は躊躇いながらも、ブラのフロントホックを外した。
かすかなパチン、という音。
ブラが緩み、それからゆっくりとずり落ちた。
現れた胸は、確かに未発達で、控えめな膨らみだった。
乳首は薄い桃色で、小さく、緊張で少し硬くなっているように見えた。
「……自分では、裸婦のモデルはやったことなくて」
美和が恥ずかしそうに言った。
彼女は腕で胸を隠そうともせず、ただじっと立っていた。
「いつも描く側ですから……モデルになるのは、なんか……違う感じがします」
「……綺麗ですよ」
佐田は本心からそう言った。
美術的な美しさというよりも、彼女の無防備な裸体そのものが、切なくなるほど純粋に見えた。
彼女の肌は透き通るように白く、鎖骨がはっきりと浮かび上がり、肋骨のわずかな凹凸が、光と影を生み出していた。
「……本当ですか?」
美和が、うつむき加減で尋ねた。
「ええ。本当に」
彼女はほんの少し、頬を緩めたように見えた。
それから、彼女はスカートのホックを外し、プリーツスカートをずり落とした。
下は、これまた飾り気のない白い綿のショーツだった。
彼女は一度深く息を吸い込むと、ショーツも脱いだ。
すらりと伸びた脚。
腿の内側は、驚くほど白く、血管が青く透けて見えるほどだった。
そして、その腿の付け根に、こんもりと盛り上がった陰毛が現れた。
毛は黒く、まだ量は多くない。
その下に、ぷっくりと膨らんだ小さな陰唇の襞が、ほんのりと桃色に色づいて覗いていた。
「……私の、あそこ……見られてる」
美和が、声を震わせて呟いた。
彼女の手が無意識に股間を覆おうとしたが、途中で止まった。
「……汚くないですか? お風呂にも入ってないし……」
「私だってそうです。だから……気にしないでください」
佐田はそう言うと、彼女の前にひざまずいた。
彼の目線は、ちょうど彼女の股間の高さになる。
「……美和さんの、ここ……舐めさせてもらえませんか?」
彼は恥ずかしさで顔が火照るのを感じながら、頼んだ。
美和は一瞬、固まった。
彼女の腿が微かに震えている。
「……だって……そんなこと、私が気持ちよくなるだけじゃないですか……」
「それでいいんです」
佐田はそう答えた。
「美和さんが気持ちよくなるのを見て……私も、嬉しいから」
それは嘘ではなかった。
彼はもう、自分が興奮していることよりも、この少女に可能な限りの快楽を与えたいと、強く思っていた。
美和は長いため息をつくと、ゆっくりと脚を開いた。
「……じゃあ……お願いします。でも、本当に……汚いと思います……」
彼女の股間が、完全に佐田の目の前に露わになった。
陰毛は思った以上に繊細で、その下の陰唇は小さく、ぷっくりと膨らんでいた。
大陰唇は薄いピンク色で、中央の割れ目から、少しだけ小陰唇の先端がのぞいている。
全体が湿り気を帯び、わずかに光っていた。
「……きれいだ」
佐田は思わずそう呟いた。
そして、顔を近づけた。
彼女の体の匂いが、そっと鼻をくすぐった。
石鹸の香りと、ほのかな汗の気配、そしてどこか甘酸っぱい、少女特有の匂い。
彼は舌を出し、まずは外側の大陰唇を、そっと舐めてみた。
「……あっ」
美和の腿が、ぴくっと震えた。
彼女の肌は、驚くほど柔らかく、温かかった。
佐田はさらに舌先を割れ目に沿わせ、ゆっくりと上へ、そして下へ。
「んっ……はぁ……」
美和の息遣いが乱れた。
彼女の手が、思わず佐田の頭に触れ、髪を掴んだ。
「そ、そこ……ちょっと……くすぐったいです……」
彼女の声が、普段よりも高く、甘ったるく響いた。
佐田は割れ目の奥を探るように、舌先を少し押し込んだ。
すると、たちまちじんわりと温かい愛液が滲み出し、彼の舌先を濡らした。
「……あ……だめ……そんなに中まで……」
美和が腰を引こうとしたが、彼女の手は佐田の頭を離そうとしない。
佐田はその愛液の味を確かめた。
ほのかな塩気と、独特の甘み。
美和が彼の陰茎を舐めた時と同じように、嫌な味では全くなかった。
彼はさらに熱心に舐め始めた。
割れ目の一番上、陰核があるとされる場所を探り、舌先でこする。
「あっ! だ、そこ……!」
美和の声が突然跳ね上がった。
彼女の腰が、ぴくんと突き出た。
佐田はそこが弱点だと悟り、集中して舌先で小さな陰核を刺激し始めた。
つつくように。
舐め回すように。
ときどき軽く吸い付く。
「あ、ああっ……や、やだ……何これ……知らない……感じが……」
美和の声は完全に乱れ、彼女の腿は大きく開き、腰は微かに揺れ始めた。
彼女の手が佐田の頭を強く押し付け、今度は離れまいとしている。
「お、おかしい……体が……勝手に……あっ、ああっ……!」
彼女の声が詰まり、そして甲高くなる。
佐田は彼女の愛液がますます湧き出し、彼の顎を伝って滴り落ちるのを感じた。
彼は片手を彼女の腿に回し、もう片方の手で彼女のお尻を支え、より深く顔を埋めた。
「んっ……ちゅぱ……ちゅるっ……美和さん……気持ちいいですか……?」
彼は口を離し、喘ぎながら尋ねた。
「……う、うん……気持ちいい……すごく……私、こんなの……初めてで……」
美和の目には、涙が浮かんでいた。
彼女はもう羞恥心を忘れ、快楽に身を委ねている。
佐田は再び舌を弄び始めた。
今度はより速く、より強く。
「あ、ああっ! もう……だめ……なにか来る感じ……私、なにが起こるかわかんない……!」
美和の腰の動きが激しくなり、彼女の股間は彼の顔に押し付けられ、愛液がたっぷりと溢れ出した。
「あ……あああっ……!」
彼女の体が、弓なりに反り返った。
腿が強く痙攣し、彼女の指が佐田の髪に食い込んだ。
そして、長い、震えるような吐息が漏れた。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
美和はそのままの姿勢で、大きく息を弾ませていた。
彼女の股間は、舐められて赤く腫れ、愛液でびっしょりと光っていた。
佐田は顔を上げ、彼女の恍惚とした表情を見た。
彼女の眼鏡は曇り、頬は紅潮し、口は半開きのままだった。
「……すみません」
しばらくして、美和がかすれた声で言った。
「私だけ……気持ちよくなっちゃって……佐田さんは、まだ……ですよね」
彼女はよろめきながらも、佐田の前にひざまずいた。
彼の陰茎は、依然として大きく勃起したまま、先端から透明な先走り液を垂らしていた。
「……私も、続けます」
美和はそう言うと、再び彼の陰茎を口に含んだ。
今度は最初よりも深く、半分以上を咥え込んだ。
「んっ……ちゅぱ……ん……」
彼女は舌で幹を舐め上げ、亀頭をくちゅくちゅと音を立てて啜り、ときどき顔を上げて、息を切らしながら佐田を見上げた。
その姿は、まだ完全に興奮から醒めきっておらず、瞳がうつろで、唇が淫らに光っていた。
佐田は彼女の頭をそっと撫でながら、もう一度、彼女の股間に顔を寄せた。
彼女の絶頂の余韻で、陰唇は完全に開き、奥の薄紅色の粘膜まで見えていた。
彼は舌でその襞をそっとなぞり、再び陰核を刺激し始めた。
「んあっ! ま、また……?」
美和が口の中で驚いたように声を上げたが、すぐに再び陰茎を咥え込み、より熱心に動き始めた。
二人は六十九の形で、互いの性器を舐め、啜り合った。
唾液と愛液が混じり合い、くちゅくちゅ、じゅるっという湿った音が、部屋に響き渡る。
「んっ……はぁ……佐田さん……私……また、変な感じが……」
美和の腰が再び震え始めた。
佐田もまた、射精が近いことを感じていた。
彼女の口の中の温もりと、舌の動きが、彼の限界を押し上げる。
「美和さん……私も……もうすぐ……」
彼は喘ぎながら伝えた。
美和は首を振り、より深く咥え込み、喉の奥まで受け入れようとした。
その瞬間、佐田の腰が突き上げられ、熱い液体が彼女の口の中で迸った。
「んっ! んぐっ……」
美和の頬が膨らみ、彼女は必死に飲み込もうとしているのがわかった。
同時に、彼女の股間でも小さな痙攣が起き、愛液がもう一度湧き出て、彼の顔を濡らした。
長い時間、二人はそのままの姿勢で、ただ互いの呼吸が落ち着くのを待った。
佐田がゆっくりと顔を上げると、美和も口を離し、こっくりとうなずいた。
彼女の唇の端から、白い液体が一滴、こぼれ落ちた。
彼女はそれに気づき、そっと手の甲で拭った。
「……ごっくん、しました」
彼女は真剣な顔で報告した。
「……味は、さっきより……濃かったです」
その言葉に、佐田は笑いが込み上げてきた。
そして、笑いと同時に、涙も出そうだった。
彼は床に座り込み、美和もまた彼の隣に、よろめくように腰を下ろした。
二人は肩を並べて、派手な壁紙の壁を背に、ただ息を整えていた。
「……こんな、気持ちいいことしてもらって……すみません」
美和が、ふと呟いた。
彼女はまだ裸のままで、膝を抱えていた。
「こちらこそ……美和さんに、そんなことさせて……」
「いえ」
美和は首を振った。
「私……すごく、気持ちよかったです。それに……」
彼女は少し間を置き、小さな声で続けた。
「佐田さんが、私の体を……嫌がらずに、触ってくれて。舐めてくれて。それが……なんか、嬉しかったです」
彼女はそう言うと、恥ずかしそうに顔を膝に埋めた。
佐田は彼女のその横顔を見つめ、胸がまた熱くなった。
「……美和さん」
「はい」
「……また、会ってくれませんか?」
美和は顔を上げ、きょとんとした表情で彼を見た。
その瞳は、まだ潤みを帯びていた。
「……また、気持ちよくしてくれるんですか?」
「ええ。もちろん。それに……お金も、ちゃんと渡しますから」
美和の目がぱっと輝いた。
「……それなら、願ったりかなったりです。よろしくお願いします」
彼女は深々と頭を下げた。
そして、何かを思い出したように顔を上げた。
「でも……次は、ホテルじゃなくてもいいですか? ここ……結構、お高いみたいですし」
その現実的な指摘に、佐田は思わず笑った。
「そうですね。じゃあ……次は、私の部屋に来てもらえますか? 少し狭いですが……」
「はい! ぜひ!」
美和が笑顔で答えた。
その笑顔は、初めて会った時の緊張した表情からは想像もつかない、生き生きとしたものだった。
佐田は、床に落ちた服を拾い、彼女に手渡した。
彼女は恥ずかしそうに受け取り、着衣を始めた。
彼もまた、自分の服を着た。
全てを終え、部屋を出ようとした時、美和が振り返った。
「……佐田さん」
「はい」
「今日は……本当に、ありがとうございました。それと……」
彼女は少し躊躇い、それから続けた。
「佐田さんて、本当に優しい人なんですね。私のわがままなリクエストも、全部聞いてくれて。そういうところ……好きです」
彼女はそう言うと、もう一度にっこり笑い、ドアの方へ歩き出した。
佐田はその言葉を胸に刻みながら、彼女の後を追った。
廊下の電気が、彼女の黒髪に柔らかな光を落としている。
彼はこの瞬間を、ずっと忘れないだろうと思った。
第3章 自宅という檻と、開発されゆく肉体

第3章: 自宅という檻と、開発されゆく肉体
次に会う約束をしてから、ちょうど二週間が過ぎた日曜の午後だった。
玄関のインターホンが鳴った時、佐田清彦は少しばかり慌てて、ソファから立ち上がった。彼は普段着のチャコールグレーのカーディガンに、少し擦り切れた感じのチノパンという、休日の自宅でのいつもの姿のままだった。胸の鼓動が、妙に速くなっているのを感じる。――来たな。
ドアを開けると、やはり小池美和が立っていた。今日は白いブラウスに、紺色のデニムのオーバーオールを着ていた。肩には帆布の大きなトートバッグがかけられ、中からスケッチブックの角らしきものが覗いている。黒く長い髪は、いつものようにストレートで、丸いフレームの眼鏡の奥の目が、きょとんと周りを見回していた。
「こ、こんにちは。お邪魔します」
美和が小さく会釈した。
「ああ、どうぞ。上がってください」
清彦はドアを大きく開け、彼女を招き入れた。
美和が玄関で靴を脱ぎ、上がり框に足を乗せた。彼女の足は白く、踝が細く繊細に見えた。彼女はそっと室内へ一歩踏み込み、きょろきょろと周囲を見渡した。
「……佐田さんのお部屋、初めてです」
「うん。ちょっと狭いけど……気にしないでくれれば」
清彦のマンションは築二十年ほどの2LDK。決して広くはないが、一人暮らしには十分すぎる空間だった。リビングには大きな窓が南向きにあり、午後の柔らかい日差しが差し込んでいた。ソファと低いテーブル、壁際には本棚とオーディオラックが置かれ、ごく普通の、地味な独身男性の部屋という印象だった。
美和はゆっくりとリビングの中央まで進み、そっと立ち止まった。彼女の視線は、壁際の本棚に釘付けになっていた。
「……本、たくさんあるんですね」
彼女が感嘆するように呟いた。
「ああ、昔から買い溜めちゃって。整理できなくてね」
清彦の本棚には、ビジネス書や歴史書、それに趣味で集めたジャズやクラシックのCDが詰まっていた。特に系統立てて整理されているわけではなく、ただ時系列に並んでいるだけだった。
美和は近づき、背表紙を一本の指でそっとなぞった。
「『日本経済の歩み』……『バロック音楽史』……佐田さん、真面目なんですね」
彼女が振り返り、微笑んだ。
その笑顔は、ラブホテルの緊張したものとは全く違い、自然で柔らかかった。清彦は、その笑顔を見ただけで、なぜか胸がほんのり温かくなるのを感じた。
「真面目、かな。ただ、好きなものを集めてるだけだよ」
「そういうところ、いいなあと思います」
美和はそう言うと、今度はオーディオラックに視線を移した。
「レコードプレーヤーもお持ちなんですか? 最近のものじゃなくて、昔ながらの……」
「ああ、これはね、学生時代から使ってるんだ。まだ動くから、つい使っちゃって」
美和の目が輝いた。
「すごい。こういうの、憧れます。時代を感じますよね。わたしの絵画でも、古い技法を学ぶのが好きで……伝統的なものには、何か温かみがあるというか」
彼女はそう言いながら、ソファの傍らに置かれた小さなサイドテーブルに、自分のトートバッグをそっと置いた。
「今日は……ホテルじゃなくて、こっちの方が落ち着きます」
美和が照れくさそうに言った。
「うん。そうだね。ずっと、リラックスできるし」
清彦はそう答えながら、自分でもなぜか安心していることに気がついた。確かにここは自分の領域だ。見知らぬラブホテルの不自然な空間よりも、はるかに気持ちが楽だった。
「お茶、淹れようか? コーヒーとか」
「あ、お願いします。そういう……日常的なこと、してみたかったんです」
美和の言葉に、清彦は少し驚いた。彼女はソファに腰を下ろし、膝の上で指を絡ませながら、部屋中を眺め回していた。その様子は、まるで初めて訪れた友人の家に興味津々な少女のようだった。
清彦がキッチンでコーヒーを淹れている間、美和は静かに本棚の前で立ち尽くしていた。彼女が一冊の分厚い画集を手に取り、ページをめくっているのが、背中越しに見えた。
――絵の話、してみたいのかな。
清彦はそう思った。今まで、彼女が美術大学で何を学んでいるのか、詳しく聞いたことがなかった。パパ活としての関係では、そんな深い話は必要ないと思い込んでいたからだ。
コーヒーカップをトレイに乗せ、リビングに戻ると、美和は彼のことを見て、慌てたように画集を棚に戻した。
「あ、すみません。勝手に触っちゃって……」
「いいんだよ。気にしないで」
清彦はテーブルの上にカップを置き、美和の正面のソファに腰を下ろした。
二人の間に、温かいコーヒーの湯気がゆらゆらと立ち上った。窓から差し込む陽射しが、湯気に虹色の輪を作っている。
「……佐田さん」
美和が突然、真面目な顔で言った。
「なにか気に入らないこと、あったら教えてください。わたし、まだわかんないことだらけで……でも、学びたいんです。佐田さんと一緒にいるときの、こういう感じを」
その言葉は、あまりに真っ直ぐだった。清彦は、コーヒーカップの取っ手をぎゅっと握りしめた。
「美和さんは……何がしたいの?」
彼は思わず、そう尋ねた。
美和は一瞬、目をぱちぱちさせた。それから、ゆっくりと頷いた。
「……気持ちよくなりたいです。佐田さんに触られて、またあの時の感じを味わいたい。それに……」
彼女は少し間を置き、声をひそめた。
「佐田さんのこと、もっと知りたいなって。この部屋を見て、そう思いました。佐田さんて、きっとすごく誠実な人なんだなって」
――誠実?
清彦は内心で繰り返した。自分がそんな言葉で形容されるとは、夢にも思わなかった。ただ、小心で、引っ込み思案で、女運のない男だと、ずっと自分では思っていた。
「そんなこと、ないよ。ただの、地味なオジサンだよ」
「違います」
美和はきっぱりと言った。
「地味かもしれないけど、ここの本やレコード……全部、長い時間をかけて集めたものばかりでしょ? ちゃんと向き合って、大事にしてきた痕跡が、あちこちにあります。そういうの、わたし……好きです」
彼女はそう言うと、コーヒーカップを手に取り、そっと一口含んだ。そして、目を細めてほんのり笑った。
「……おいしい。香りがいいですね」
その何気ない光景が、清彦の胸をぎゅっと掴んだ。彼女が自分の淹れたコーヒーを飲み、満足そうな顔をしている。こんな日常的な瞬間が、なぜかラブホテルでの激しい行為よりも、深く彼の心に突き刺さった。
コーヒーを飲み終えると、美和はそっとカップをテーブルに置き、立ち上がった。
「……そろそろ、いいですか?」
彼女の声は、少し震えていたが、逃げる気配は微塵もなかった。
清彦はただ、うなずくしかなかった。
美和は彼の前に立ち、そっと膝をついた。ラブホテルの時と同じ姿勢だ。彼女の手が、清彦のカーディガンの前をそっと押さえた。
「今日は……わたしから、したいんです」
彼女がそう囁くと、彼女の指がカーディガンのボタンを外し始めた。一つ、また一つ。その動きは前回よりも確かで、迷いが少なかった。
カーディガンが脱がされ、次はシャツのボタンだ。美和は真剣な表情で、一つ一つのボタンと向き合っていた。彼女の息が、時折、清彦の肌に触れる。温かく、湿り気を帯びている。
「……前回、覚えてます」
美和がぽつりと言った。
「佐田さんの味。あれから、時々思い出しちゃって……どんな味だったか、また確かめたくなりました」
彼女の告白に、清彦は息を詰めた。彼女が、あの行為を「思い出す」ことがあるという事実が、彼の股間を一気に熱くした。
シャツが開かれ、彼の瘦せた胸が露わになる。美和は少し間を置き、その胸板をじっと見つめた。彼女の視線が、乳首のあたりで止まる。
「……ここ、触っても?」
彼女が上目遣いで尋ねた。
「ああ……どうぞ」
美和の指が、左の乳首に触れた。そっと、くるりと円を描くように。清彦は、思わず背筋を伸ばした。その感覚は、あまりに直接的で、どこか恥ずかしかった。
「……硬くなりましたね」
美和が小さく笑った。
「男の人も、感じるんですね。わたし、勉強不足でした」
彼女はそう言うと、今度は顔を近づけ、その小さく硬くなった突起に、そっと唇を寄せた。
「んっ……ちゅ……」
彼女の舌先が、乳首をくすぐるように舐めた。清彦は、はっとして息を漏らした。こんなこと、今までされた覚えがなかった。彼の手が、無意識に美和の頭に触れ、彼女の黒く滑らかな髪を撫でた。
美和はしばらく舐め続け、それからゆっくりと顔を上げた。彼女の唇が、微かに湿って光っていた。
「……美味しいです。佐田さんの匂いがする」
彼女がそう呟き、今度はズボンのベルトに手を伸ばした。バックルを外す音。ジッパーが下りる音。全てが、前回よりもスムーズに、しかし確実に進んでいく。
トランクスが下ろされた時、清彦の陰茎はすでに完全に勃起し、先端からは透明な先走り液がにじんでいた。美和はそれをじっと見つめ、満足そうに頷いた。
「……待っててくれたんですね」
彼女はそう言うと、手を伸ばし、しっかりと幹を握った。その握りは、前回のたどたどしさとは違い、ある程度の自信を含んでいた。
「前より……大きい気がします。熱い」
美和はそう呟き、顔を近づけた。彼女は今度は、いきなり口に含むのではなく、まずは頬にその先端をこすりつけた。ヌメりと熱い感触が、彼女の頬の皮膚に伝わる。
「……こういうのも、してみたかったんです。映像で見て」
彼女が恥じらうように言いながら、顔を上下に動かした。勃起した陰茎が、彼女の頬、顎、時には鼻先に擦られ、先走り液で彼女の肌が薄く光る。
やがて彼女は口を開き、先端を咥えた。舌で亀頭を包み込むようにし、くちゅっ、と小さな音を立てて吸い付いた。
「んっ……ちゅぱ……この味……前より、少し濃いかも……」
美和は口の中で呟くように言い、それからより深く咥え込んだ。半分ほどを口に収め、舌で幹を舐め上げる。その動きは、明らかに前回よりも積極的で、貪欲だった。
清彦はソファの背もたれに寄りかかり、目を閉じた。彼女の口の中の温もり、柔らかい舌の動き、時折聞こえるくちゅくちゅという湿った音。全てが、彼を快楽の渦へと引きずり込んでいく。
「美和……さん……」
彼は喘ぎながら彼女の名を呼んだ。
美和は口を離し、糸を引く唾液を断ち切ると、上を見上げた。彼女の唇は淫らに腫れ、頬は紅潮していた。
「次は……わたしの番ですよね」
彼女がそう言うと、ゆっくりと立ち上がった。そして、自分自身のオーバーオールの胸元のボタンを外し始めた。
一つ、また一つ。デニムの生地が開き、その下から白いブラウスが見える。彼女はブラウスを脱ぎ、次はオーバーオールの肩紐を外した。全体がずり落ち、彼女の脚が現れる。今日は白い綿のショーツだけだった。ブラはつけていないようだ。
彼女は清彦の前に立ち、そっと脚を開いた。
「……見てください。わたしも……ずっと考えてましたから」
美和の声は、震えと熱気を含んでいた。
清彦は彼女の股間に視線を落とした。ショーツの中央は、すでにほんのりと湿ったシミができている。愛液が滲み出し、薄い布を透かして、陰唇の膨らみを浮かび上がらせていた。
「脱いで……もらっていい?」
清彦が声を嗄らせて尋ねた。
美和はうなずき、自分でショーツの端をつまみ、ゆっくりと引き下ろした。黒い陰毛、その下にぷっくりと膨らんだ小さな陰唇が現れる。大陰唇は薄いピンク色で、中央の割れ目からは、小陰唇の先端がほんのりと覗いている。全体が湿り気を帯び、艶やかに光っていた。
「……すごく、濡れてる」
清彦が呟いた。
「ええ……佐田さんのこと考えてたら、自然に……なっちゃって」
美和は恥ずかしそうに顔を背けながらも、脚を大きく開くことをやめなかった。
清彦は彼女の前にひざまずき、顔を近づけた。彼女の特有の甘酸っぱい匂いが、そっと鼻をくすぐった。彼は舌を出し、まずは外側の大陰唇をそっとなぞった。
「あっ……!」
美和の腿が跳ねた。
清彦はさらに舌先を割れ目に沿わせ、ゆっくりと上下する。愛液がじんわりと滲み出し、彼の舌を濡らす。その味は、ほのかな塩気と、独特の甘み。前回よりも濃厚に感じた。
「んっ……ちゅ……美和さん……すごく、美味しいよ……」
清彦は喘ぎながらそう伝え、舌の動きを速めた。彼は割れ目の一番上、陰核らしき小さな突起を探り当て、舌先で集中してこする。
「ああっ! だ、そこ……また、そこ……!」
美和の声が跳ね上がった。彼女の手が清彦の頭に伸び、髪を掴んだ。前回と同じように、離すつもりはないようだ。
清彦は陰核を咥え、軽く吸い付きながら、舌でつついた。くちゅっ、ちゅぱっ、という音が、静かな室内に響く。
「だめ……もう……頭が、ぼーっとして……あっ、ああっ……!」
美和の腰が前後に揺れ始めた。彼女の愛液がますます湧き出し、清彦の顎を伝って滴り落ちた。その温かく粘り気のある液体が、彼の皮膚に絡みつく。
清彦は片手を彼女の腿に回し、もう片方の手で彼女のお尻を支え、より深く顔を埋めた。彼の鼻が陰毛に触れ、彼女の体臭と愛液の匂いが混ざり合った、濃厚な芳香が彼を包んだ。
「んっ……じゅるっ……美和さん……気持ちいい?」
清彦は口を離し、喘ぎながら尋ねた。
「う、うん……すごく……もっと……お願い……」
美和の目には、涙が浮かんでいた。彼女はもう羞恥心を忘れ、快楽に身を委ねている。その無防備な表情が、清彦の欲望をさらに掻き立てた。
彼は再び舌を弄び始め、今度は割れ目の中へ、少しばかり押し込むようにした。彼女の膣口は、柔らかく温かく、彼の舌先を受け入れるように開いていた。
「あっ! 中……舌が……入ってる……!」
美和の声が詰まった。彼女の腿が大きく震え、腰が押し出される。清彦は舌をさらに深く入れ、じっとりとした粘膜の感触を味わった。
しばらく舐め続けた後、清彦はゆっくりと顔を上げた。彼女の股間は、舐められて赤く腫れ、愛液でびっしょりと光っていた。彼は人差し指を立て、その湿った割れ目にそっと触れた。
「……中、触らせて」
清彦が嗄れ声で頼んだ。
美和は目を見開いたが、すぐにうなずいた。
「……お、お願いします……優しく……ね?」
「ああ」
清彦は人差し指の腹で、膣口をそっとなぞった。そこは驚くほど柔らかく、熱を持っていた。彼は少しずつ圧力をかけ、指先を割れ目の中へと滑り込ませた。
「んっ……!」
美和の体が硬直した。
人差し指の第一関節が、膣口に飲み込まれた。中は彼の指を包み込むように締まり、じっとりとした温もりが伝わってきた。
「……あっ……入った……佐田さんの指……わたしの中に……」
美和が震える声で呟いた。
清彦はゆっくりと指を動かした。出入りさせる。そのたびに、彼女の膣内がきゅっきゅっと絞り上げてくる。愛液がたっぷりと分泌され、指が濡れる音が、くちゅくちゅと響いた。
「気持ちいい?」
「うん……すごく……中、あったかい……ずっと、こんな感じだったんだ……」
美和は目を閉じ、唇を噛みしめていた。彼女の額に汗が浮かび、呼吸が乱れている。
清彦はもう一本、中指を加えようとした。二本の指で膣口を広げる。
「っ……ちょっと……きつい……」
美和が苦しそうに声を漏らしたが、腰を引くそぶりは見せなかった。
清彦は慎重に、中指も少しずつ挿入した。二本の指が彼女のまだ狭い膣内に収まる。中の締まりが、さらに強く感じられた。
「んっ……ああ……すごい……埋まってる……」
美和の手が清彦の肩に掴みついた。彼女の爪が、シャツの上から彼の皮膚に食い込む。
清彦はゆっくりと指を動かし始めた。出入りさせる。そのたびに、愛液がたっぷりと溢れ出し、彼の手を濡らした。彼女の膣内の皺が、彼の指の関節に絡みつくような感触があった。
「美和さん……すごく、締まってる……気持ちいいよ……」
「わたしも……指で、こすられて……ああ……そこ……!」
美和の腰が動き始めた。彼女は無意識に、彼の指に合わせて腰を上下させている。その様子は、もう完全に快楽に酔いしれていた。
清彦は指の動きを速め、時折、彼女の膣内の壁をくすぐるようにかき回した。
「あっ! だめ……そんな……いきなり……あああっ……!」
美和の体が大きく震え、彼女の膣内が彼の指を強く締め付けた。愛液が迸るように溢れ出し、彼の手首まで濡れた。
「いっちゃう……また、いっちゃう……!」
美和の声が裏返った。彼女の腿が痙攣し、全身が弓なりに反り返る。長い絶頂の波が、彼女を何度も打ちのめしていく。
清彦は指を動かすのをやめ、ただ彼女の膣内に留めた。彼女の収縮を、じっと感じていた。その熱く締まりゆく感触が、彼自身の股間を激しく疼かせた。
美和の絶頂がようやく収まりかけた時、清彦はそっと指を抜いた。ぷちっ、と小さな音がし、彼女の膣口から愛液がとろりと溢れ出た。
美和はよろめきながら、清彦の前にひざまずいた。彼女は息を切らし、瞳もうつろだった。
「……佐田さん、まだ……ですよね」
彼女はそう言うと、清彦のまだ勃起した陰茎に手を伸ばした。彼女の指は、自分自身の愛液でびっしょりと濡れている。その手で、彼の陰茎を握りしめた。
「……わたしので、濡れてる……くっつくね」
美和が恍惚とした笑みを浮かべ、彼の陰茎に自分の愛液を塗りつけた。ぬるっとした感触が、幹全体を包む。
それから彼女は口を開き、その愛液で光る亀頭を咥えた。彼女自身の味と、清彦の先走り液の味が混ざり合い、彼女は目を細めて味わっているようだった。
「んっ……ちゅぱ……わたしの味……佐田さんの味……混ざって……くすっ」
彼女はどこか楽しそうに笑い、より深く咥え込んだ。彼女の舌が、幹を舐め上げ、亀頭をくちゅくちゅと啜る。その動きは、前回以上に熟練し、官能的だった。
清彦はソファにもたれ、ただ彼女の口の奉仕に身を任せた。彼の手が、彼女の頭を優しく撫でる。彼女の黒髪が、彼の指の間を滑り抜ける。
射精が近づくのを感じた。腰が勝手に突き出そうとする。
「美和……もう、すぐだ……」
彼が喘ぎながら警告する。
美和は口を離さず、首を縦に振った。それから、より深く咥え込み、喉の奥まで受け入れようとした。彼女の頬が膨らみ、むせそうな音が漏れる。
その瞬間、清彦の腰が痙攣し、熱い精液が彼女の口の中で迸った。
「んぐっ……!」
美和の喉が動き、必死に飲み込んでいるのがわかった。いくらかは口から溢れ、彼女の顎を伝って滴り落ちた。
最後の一滴まで射精し終えると、清彦はぐったりとソファにもたれかかった。美和もゆっくりと口を離し、こくりとうなずいた。彼女の唇の端に、白い液体が光っている。
「……ごっくん、できました」
彼女は真剣な顔でそう言い、手の甲で口を拭った。
「……味は、さっきのと混ざって……複雑でした」
その言葉に、清彦は笑いが出た。彼は腕を伸ばし、彼女を引き寄せた。美和は抵抗せず、彼の胸に顔を埋めた。
二人はしばらく、ただ抱き合い、互いの鼓動と呼吸を感じていた。清彦の部屋には、コーヒーの香りと、セックスの甘ったるい匂いが混ざり合い、独特の雰囲気を醸し出していた。
「……佐田さん」
しばらくして、美和がぼそりと言った。
「うん」
「今日は、お金、いらないです」
清彦は彼女の肩をそっと離し、彼女の顔を見つめた。
「どうして?」
美和はうつむいた。
「だって……ただで会いたくなっちゃったから。パパ活じゃなくて……佐田さんに会いたくて、ここに来たから」
その言葉は、清彦の胸を直撃した。彼は言葉を失い、ただ彼女の瞳を見つめるしかなかった。彼女の目は、真っ直ぐで、迷いがなかった。
「……美和さん」
「うん」
「……それ、本当に、それでいいの? お金、もらわなくても?」
美和は深く頷いた。
「うん。わたし、絵の具買うお金は、バイトでなんとかなるから。でも……佐田さんとこうして会える時間は、バイトじゃ手に入らないから」
彼女はそう言うと、また清彦の胸に顔を埋めた。
「それに……佐田さんのこの部屋の匂い、好きなんです。古い本と、コーヒーと、あと……佐田さん自身の、整髪料みたいなさっぱりした匂い。絵の具の匂いより、こっちの方が落ち着く」
――整髪料?
清彦は内心で驚いた。彼は確かに、安物の整髪料を少しつけていた。それが彼女に嗅ぎ分けられ、しかも「好き」と言われるとは。
彼はそっと彼女を抱きしめた。彼女の体は、まだ微かに熱を帯びていた。細く、華奢で、しかし確かな温もりを宿している。
「……じゃあ、次も、ここで会おう」
清彦が囁いた。
「うん」
美和は頷き、そのまま微動だにしなかった。
やがて彼女の呼吸が深くなり、規則的になっていくのに気づいた。清彦が覗き込むと、彼女は目を閉じ、すでに眠りに落ちているようだった。長い睫毛が、頬に影を作っている。
彼は動くのをやめ、彼女が眠り続けられるように、そっと腕を枕にした。彼女の無防備な寝顔を見つめながら、清彦はある事実を思い知らされた。
――この子は、もうただの“パパ活相手”じゃない。
彼は、この少女に激しい愛おしさを感じると同時に、深い罪悪感にも襲われた。彼女は十九歳。自分は六十二歳。孫ほどの年齢差がある。こんな関係が、果たして許されるものなのか。
しかし、彼女の温もり、彼女の寝息、彼女が発する微かな甘い匂い。全てが、彼をその罪悪感から救い出し、ただこの瞬間に浸らせた。
窓の外では、夕暮れが近づき、空が茜色に染まり始めていた。部屋の中は次第に薄暗くなり、二人の影が長く伸びていった。
清彦はそっと目を閉じた。彼女の鼓動を、自分の胸で感じながら。
――ただ、このまま、しばらく。
彼はそう願い、眠りに落ちる彼女とともに、ゆっくりと時間が流れるのを待った。
第4章 処女の贈り物と、交わされた約束

第4章: 処女の贈り物と、交わされた約束
初めて佐田清彦の部屋を訪れてから、ちょうど三ヶ月が経過しようとしていた。
窓の外に見える街路樹の葉が、少しずつ黄色味を帯び始める頃。夕暮れの空気には、夏の湿気が消え、澄んだ秋の気配が混ざり合っていた。清彦のマンションのリビングでは、テーブルの上に夕食の跡が片付けられ、二つのコーヒーカップが並んでいた。
美和はソファの端に坐り、膝の上で指を絡ませていた。今日はいつもより少し早く訪れ、二人でスーパーで買い物をし、彼女が作った簡単なパスタを一緒に食べた。彼女の「絵の具代はバイトでなんとかなる」という言葉通り、この一ヶ月ほどは金銭の受け渡しは一切なく、ただ「会いたいから」という理由で、彼女は週に一度、彼の部屋を訪れていた。
清彦は向かい側のソファに腰を下ろし、彼女の様子をそっと観察していた。彼女の表情には、何か言いたそうな、しかし言葉にできないもどかしさが浮かんでいるように見えた。黒く長い髪は肩にかかり、丸いフレームの眼鏡の奥で、彼女の目が時折、きらりと光る。
「……美和さん」
清彦が声をかけた。
彼女ははっとしたように顔を上げた。
「な、なんですか」
「何か、言いたいことあるんじゃないかと思って」
美和の頬が、ほんのりと赤くなった。彼女は深く息を吸い込み、それからゆっくりと吐き出した。その呼吸は、明らかに緊張を含んでいた。
「……佐田さん」
彼女は、彼の名前を呼んだ。その声は、普段よりも低く、真剣さに満ちていた。
「ええ」
「わたし……お願いがあります」
美和は膝の上で握りしめた拳を、そっと開いた。彼女の掌には、小さな汗の光りが見えた。
「なんだい。遠慮なく言ってくれればいいのに」
清彦は優しい口調で促した。彼自身、この三ヶ月で彼女との距離が、いつの間にか計り知れないほど近づいているのを感じていた。単なる肉体の繋がりを超えて、彼女の笑顔を見るのが日々の楽しみになり、彼女が学校で描いた絵の話を聞くのが、何よりの癒やしになっていた。
美和は立ち上がった。彼女はそっとテーブルの前に進み、それからゆっくりと振り返り、清彦をまっすぐに見つめた。
「わたしの処女……佐田さんにもらってください」
その言葉は、静かではあったが、部屋の空気を一瞬で張り詰めさせた。
清彦は耳を疑った。彼は思わず身を乗り出し、彼女の表情を確かめようとした。冗談ではない。彼女の瞳は、一瞬も揺るがず、真剣そのものだった。
「な……何を言ってるんだい。それは……そんなこと」
「お願いです」
美和の声が震えた。彼女の目に、突然涙が浮かんだ。
「パパ活じゃなくて……お金もいらないから。ただ……付き合ってください。佐田さんと、恋人になりたいんです」
清彦は言葉を失った。六十二歳の自分に、十九歳の少女が、恋人になりたいと言っている。そんなことが現実に起こるはずがない。きっと彼女が何か誤解しているに違いない。彼女の若さゆえの思い違いか、あるいは自分に対する同情から出た言葉なのか。
「美和さん……それは、君がよく考えずに言ってるだけだよ。僕は君より四十歳以上も年上だ。孫みたいなものだ。そんなの……ふさわしくない」
「違います!」
美和の声が、初めて強い調子を帯びた。彼女は一歩近づき、涙をこらえながら言葉を続けた。
「わたし、ずっと考えてました。この三ヶ月、毎週会うたびに……佐田さんのこと、もっともっと知りたくて。でも知れば知るほど、離れられなくなって」
彼女はこぶしでそっと目頭を押さえた。
「最初は本当に、ただお金が欲しくて……パパ活を始めました。でも、佐田さんに会って……全部変わったんです」
清彦は黙って、彼女の言葉に耳を傾けた。彼の胸の奥で、何かが熱く疼き始めていた。
「佐田さんは、わたしの話を、本当に真剣に聞いてくれた。絵の話をすると、『どんな色を使ったの?』『どんな構想なの?』って、細かく聞いてくれて。学校で失敗して落ち込んでいるときは、『次はきっとうまくいくよ』って、絶対に怒らないで、優しく教えてくれた」
美和の涙が、一筋、頬を伝って落ちた。
「それに……わたしの体を、恥ずかしいものって思わないでくれた。汚いって言わないで、綺麗だって言ってくれて……触ってくれて、舐めてくれて。わたし、自分の体が嫌いだったのに……佐田さんが触ってくれるから、だんだん愛おしくなってきたんです」
彼女は息を詰まらせ、声を絞り出すように続けた。
「何より……佐田さん自身が、すごく愛おしいんです。自分に自信がなさそうで、でもわたしのためなら勇気を出そうとしてくれて……そういうところ、本当に、本当に好きです」
美和はもう涙を止められなかった。彼女の肩が震え、嗚咽が零れそうになるのを必死にこらえている。
清彦は立ち上がった。彼は彼女の前に歩み寄り、そっと両手を伸ばした。そして、彼女の細い肩を、ゆっくりと抱きしめた。
「……バカだな」
彼の声も、わずかに震えていた。
「そんなこと言われちゃ……僕、どうしていいかわからないよ」
美和は彼の胸に顔を埋め、小さく泣きじゃくった。彼女の涙が、彼のシャツの生地をじんわりと濡らしていく。
「……ダメ……ですか?」
彼女が押し殺したような声で尋ねた。
清彦は彼女の背中を、そっと撫でた。彼女の体は、まるで小鳥のように細く、しかしその中に秘められた熱量は、彼の掌に確かに伝わってきた。
「……美和さんが、そこまで思ってくれるなんて……僕は、何て幸せなんだろう」
彼は彼女の耳元で、囁くように言った。
「僕なんか……年老いた、地味な男だよ。君には、もっと若くて、素敵な相手がいるはずだ」
「いりません」
美和が顔を上げた。彼女の目は涙で赤く染まりながらも、確かな光を宿していた。
「わたしが欲しいのは、佐田さんだけです。歳なんて……関係ない。わたし、佐田さんの、古い本の匂いも、少し白髪が混じった髪も、細くて頼りなさそうな手も……全部、好きなんです」
その言葉に、清彦の胸の中で固まっていた何かが、一気に溶け出した。彼は彼女をもっと強く抱きしめ、彼女の髪に顔を埋めた。彼女の髪の香りは、安いシャンプーの匂いだったが、彼にはそれが何よりも甘く感じられた。
「……僕もだ」
清彦が声を詰まらせた。
「美和さんのこと……大好きだ。こんなこと言っていいのかわからないけど……君がいないと、もう寂しくて仕方ないんだ」
美和の体が、ぴくっと震えた。彼女は彼の首筋に腕を回し、ぎゅっと抱きしめ返した。
「……じゃあ……いいんですか?」
「ああ」
清彦はそっと彼女を離し、彼女の涙で濡れた頬を、親指でそっと拭った。
「君がそこまで望むなら……僕は、君を誰よりも大切にするよ」
美和の唇が、ほのかな笑みを浮かべた。彼女はうなずき、それから彼の手を取った。
「……寝室に、行きましょう」
清彦のベッドルームは、リビングよりもさらに狭かった。シングルベッドが壁際に置かれ、傍らには小さなナイトテーブルがあるだけだ。カーテンは閉められ、室内には薄暗い落ち着きが漂っていた。
二人はベッドの縁に並んで坐った。今までのような淫らな興奮ではなく、どこか神聖な、しかし熱を帯びた緊張が、二人の間に流れていた。
美和はそっと眼鏡を外し、ナイトテーブルの上に置いた。彼女の目元が、より一層幼く、無防備に見えた。
「……初めてなので……うまくできるかわからないです」
彼女が小さな声で言った。
「大丈夫だよ。ゆっくりでいいから」
清彦は彼女の手を握り返した。彼の掌にも、汗がにじんでいた。
美和は立ち上がり、ゆっくりと服を脱ぎ始めた。今日はシンプルなワンピースを着ていた。ファスナーを下ろし、肩からすとんと布が滑り落ちる。その下には、白い綿のブラとショーツが現れた。彼女はそれらも丁寧に脱ぎ、完全に裸になった。
窓の隙間から差し込む薄明かりが、彼女の白い肌をほのかに照らした。未発達ながらも女性らしい曲線、細くしなやかな四肢。彼女は胸を隠すこともなく、ただ清彦の前に立っていた。
「……わたしの体……全部、佐田さんにあげます」
清彦は彼女の姿を、一瞬も見逃すまいと見つめた。彼も立ち上がり、自分の服を脱いだ。中年の、やせた体。皮膚には年齢の皺が刻まれ、陰毛には白いものが混じっていた。彼はそんな自分を恥ずかしく思ったが、美和の視線には嫌悪がなく、ただ深い愛情だけが湛えられているように見えた。
彼は彼女を抱き寄せ、そっとベッドに横たえた。シーツの冷たさが、二人の肌に触れた。
清彦は彼女の上に覆いかぶさるようにし、彼女の唇にそっとキスをした。今までのような情熱的なものではなく、誓いを交わすような、優しい接触だった。
「……痛かったら、すぐに言ってね」
「うん」
清彦は彼女の腿の間に手を滑り込ませた。彼女の陰部は、すでに十分に濡れ、熱を持っていた。彼は指でそっと割れ目を探り、愛液で滑るようにして、膣口に触れた。
美和は息を詰めた。彼女の目が、緊張で大きく見開かれた。
清彦は自分の陰茎を手に取り、先端を彼女の膣口にゆっくりと当てた。彼はこれまで、この行為をした経験がほとんどなかった。若い頃の数少ない記憶は、恥ずかしさと拙さばかりで、快楽と呼べるものではなかった。
だが、今は違った。彼は彼女を愛していた。この少女の全てを受け入れたい、彼女に全てを与えたいという思いが、彼の体を震わせた。
「……いくよ」
「……はい」
清彦は腰をゆっくりと押し出した。彼の陰茎の先端が、彼女の膣口を押し広げる。
「……っ!」
美和の顔が一瞬、痛みに歪んだ。彼女の手が、シーツをぎゅっと掴んだ。
清彦は動きを止めた。彼女の膣内は、想像以上に締まっていた。処女膜という薄い壁が、彼の侵入を阻んでいるのを感じた。
「……大丈夫?」
「……うん……少しだけ……痛いけど……大丈夫」
美和は涙を浮かべながら、うなずいた。彼女は清彦の腕に手を伸ばし、それをしっかりと握りしめた。
清彦は深く息を吸い込み、もう一度腰を進めた。ゆっくりと、しかし確実に。
「あっ……!」
美和の体が跳ねた。彼女の膣内で、何かが破れる微かな感触が、清彦の陰茎に伝わった。同時に、温かい液体がにじみ出し、彼の幹を濡らした。
彼は完全に中まで埋め尽くした。彼女の奥深くで、熱く、強く締まりゆく感触に、清彦は目を閉じた。――これが、結合か。
彼は今まで生きてきて、これほどまでに他者と一体となった感覚を味わったことがなかった。彼女の体の内側が、彼を受け入れ、包み込む。その温もりは、彼の孤独な人生を、一瞬で溶かし去るほど熱かった。
「……入った?」
美和が涙声で尋ねた。
「ああ……全部、入ったよ」
清彦は彼女の額に、そっとキスをした。
「痛い?」
「……うん……でも……それ以上に……佐田さんが中にいるって感じがして……嬉しい」
美和は涙を流しながら、ほほえんだ。その笑顔は、痛みと幸福感が入り混じった、とても複雑なものだった。
清彦は腰をゆっくりと引いた。ぬるっとした感触とともに、彼の陰茎が彼女の膣内を滑る。そして再び、ゆっくりと押し込んだ。
「んっ……!」
美和の息が乱れた。しかし、今度の声には、痛みだけではなく、どこかくすぐったいような、新しい感覚が混ざっていた。
清彦はリズムを刻み始めた。ゆっくりと、優しく。彼は彼女の表情を常に見つめ、痛そうな素振りがあればすぐに動きを止める覚悟で。
やがて、美和の体に変化が現れた。彼女の呼吸が深くなり、腰が微かに動き始めた。彼女の膣内が、彼の陰茎をより強く締め付け、愛液がたっぷりと溢れ出てくる。
「あ……こ、これ……前とは……違う……」
美和が喘ぎながら言った。彼女の目は、快楽でぼんやりと霞んでいた。
「気持ちいい?」
「うん……痛みが……だんだん……気持ちよさに変わって……あっ……そこ……!」
清彦は彼女の膣内の、特に締まりの強い一点を意識して、腰を動かした。彼女の反応が明らかに大きくなった。彼女の腿が彼の腰に絡みつき、腰を上げて彼を受け入れようとする。
「ああ……佐田さん……もっと……もっと動いて……!」
美和の声は、完全に甘ったるい色気を帯びていた。彼女はもう痛みを忘れ、本能的な快楽に身を委ね始めていた。
清彦もまた、我慢の限界が近づいていた。彼女の膣内の締まり、温もり、ぬめり。全てが彼を狂おしいほどに興奮させた。彼は腰の動きを少し速め、深く突き入れるようになった。
くちゅっ、ぐちゅっ、という湿った音が、静かな寝室に響く。ベッドがきしむ音。二人の喘ぎ声が重なり合う。
「あっ、あああっ……! だめ……頭が……とろけそう……!」
美和の体が大きく反り返った。彼女の膣内が痙攣し、彼の陰茎を強く絞り上げる。愛液が迸るように溢れ、二人の股間をびっしょりと濡らした。
「いっちゃう……また……いっちゃう……!」
彼女の絶頂が、清彦の腰の動きをさらに激しくさせた。彼ももう限界だった。
「美和……僕も……一緒に……!」
「うん……いっしょ……お願い……中に……出して……!」
その許可を得て、清彦は最後の一撃を深く突き刺した。彼の腰が痙攣し、熱い精液が彼女の奥深くに迸り出た。
「んぐっ……! ああ……!」
美和もまた、もう一度強烈な絶頂に襲われた。彼女の膣内が彼の射精に合わせて収縮し、全てを搾り取ろうとする。
長い時間、二人はそのままの姿勢で、ただ互いの鼓動と呼吸が落ち着くのを待った。清彦は彼女の上に崩れ落ちそうになりながらも、体重を支え、彼女を押し潰さないように気をつけた。
やがて、彼はそっと陰茎を抜いた。ぷちっ、という音とともに、彼女の膣口から白く濁った液体がとろりと溢れ出た。
清彦は彼女の傍らに横たわり、彼女を優しく抱き寄せた。美和はすっと彼の胸に顔を埋め、汗ばんだ彼の肌の匂いを深く吸い込んだ。
「……佐田さん」
「ん」
「……これで、わたし……全部佐田さんのでいっぱい」
彼女の言葉に、清彦は胸が熱くなった。彼は彼女の髪を撫でながら、そっと頷いた。
「……うん。君は、僕のものだ」
「ずっと……そばにいてくれますか?」
美和が、かすかな声で頼んだ。
「もちろん。君が僕を選んでくれる限り、ずっと」
清彦は彼女の額にキスをした。彼は今、この瞬間、自分がこの六十二年の人生で初めて、本当の意味で誰かに必要とされ、愛されていると感じた。
窓の外では、完全に夜が訪れ、星が淡く光り始めていた。部屋の中は暗闇に包まれ、ただ二人の体温だけが、確かな光を放っているようだった。
美和はやがて、ゆっくりと眠りに落ちていった。彼女の寝息が、清彦の胸元で規則的なリズムを刻む。
清彦は彼女の寝顔を見つめながら、静かに考えた。――これからどうなるかはわからない。世間の目も、年齢差の現実も、全てが彼らに立ちはだかるだろう。
しかし、今この瞬間だけは、この小さな体温に救われたことを、ただ感謝するしかなかった。彼はそっと目を閉じ、彼女の鼓動に耳を澄ませた。
まるで、新しい命の始まりを告げる鐘の音のように――。
登場人物
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佐田 清彦 さだ きよひこ男性 ・ 62
外見: 短い白髪混じりの黒髪、くすんだ茶色の瞳、やせ型で少し猫背。身長165cm。服装: 地味な色合いのYシャツにチノパン、上着はダウンジャケット。真面目で小心者、女性経験が極端に少なく、自分に自信がない。優しいが、引っ込み思案な性格。
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小池 美和 こいけ みわ女性 ・ 19外見: 腰まで届く長い黒髪ストレート、切れ長の黒目、未発達でスレンダーな体型。身長158cm。肌は透き通るように白く、胸は小さく控えめ。服装: 白いブラウスに紺のプリーツスカート、ニーハイソックス、丸いフレームの眼鏡。美術大学油画専攻。世間知らずで律儀、真面目すぎる性格。処女。感受性が強く、物事を真摯に受け止める。
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益田 ますだ男性 ・ 58外見: 薄くなった髪を短く刈り上げ、小太りで赤ら顔。身長170cm。服装: 開襟シャツにスラックス。佐田が通うスナックの常連。世間話が好きで、おせっかいな性格。パパ活の情報を仕入れては披露する。
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スナックのママ(まま)(女性、年齢不詳・50代前半)
外見: 豊かな栗色のウェーブ髪、目元の切れ長が印象的、豊満な体型。服装: 光沢のある黒いドレス。店のママとして客の話をよく聞き、穏やかに応対する。人生経験豊かで、達観したところがある。





