再従兄のラーメンが行列店に…秘密は私の入浴後の汁と、羞恥の中でするオナニーの味
あらすじ
脱サラしてラーメン屋「翼屋」を開いた鴨川翼だったが、味への自信とは裏腹に客足は遠のき、閉店の危機に瀕していた。そんな折、再従妹の女子高生・菱川ひまりがふらりと訪れ、手伝いを申し出る。ホットパンツから伸びる太ももが無防備に晒され、翼は幼かった彼女の変化に戸惑いながらも、その日から客が増え始めたことに気づく。ひまりの無自覚な色香が男性客を惹きつけていると悟った翼は、ある背徳的な着想を得るのだった。
第1章 絶望のラーメン屋と無邪気な救世主
# 第1章: 絶望のラーメン屋と無邪気な救世主
鴨川翼は、カウンター越しに見渡す客席の殺風景さに、腹の底で澱のように溜まっていく焦燥を、どうにかこうにかスープの立ち昇る湯気のむこうへと追いやろうとしていた。壁に掛けられた時計の針は、とっくに正午を回って十二時二十分を指している。それだというのに、八つ並んだカウンター席のうち、埋まっているのはたった三つだけで、残りの五脚の丸椅子は、無言のままそこに鎮座し、まるで敗北の記念碑のように翼の背中をじりじりと責め立ててくるのだった。
翼は無意識のうちに、汗と脂で黄ばんだバンダナの下から額の汗をぐいと拭い、寸胴の縁にこびりついた豚骨の脂が放つ、獣の骨髄を煮詰めたような重たい匂いを、肺の奥で噛みしめるように吸い込んだ。その匂いは、彼がこの店に賭けた人生そのものを象徴しているようでありながら、今はただ、むなしく換気扇のうなり声に吸い込まれていくだけだった。
「味は悪くない……むしろ、自信はあるんだ……」
その呟きは、自分自身への言い訳のように、濁った換気扇の羽根の回転音のなかへと溶けていった。翼が脱サラして、このラーメン屋「翼屋」を開いてから一年と三か月。親戚の醤油屋から取り寄せた丸大豆の芳醇な香りが、豚骨と鶏ガラの白濁スープに奥行きを与え、口に含めば誰もが一様に目を丸くして「これは旨い」と言ってくれる。それなのに、この客足のなさは、いったいどうしたことだ。小麦の高騰が仕入れを圧迫し、ガス代も馬鹿にならず、ここ一か月はまさに火の車で、夜の帳が下りるたびに、カウンターの木目のひとつひとつが、迫りくる閉店の影を刻み込んでいるように思えてならないのだった。
そのとき、店の引き戸ががらがらと乾いた音を立て、ひょっこりと顔を覗かせたのは、再従妹にあたる菱川ひまりだった。彼女は腰まで届く黒髪を無造作に揺らしながら、まるで仔犬が新しいねぐらを探るかのように、きょろきょろと大きな瞳で店内を見回し、翼の姿を認めるやいなや、ぱあっと大輪の花が咲くような、あどけない笑顔を見せたのである。
「おじさん、こんにちは! 今日、学校早く終わったから、遊びに来ちゃった」
彼女の声は、カウンターの隅に積まれた薄暗い雰囲気を、一瞬で拭い去ってしまうほどに澄んでいた。翼は、この幼かった娘がいつしか十五歳の女子高生になっていたという現実を、そのむっちりと張りのある太ももが、ホットパンツの裾から無防備に飛び出している様を見て、あらためて突きつけられる思いがした。まだぺったんこの胸のあたりは、白いTシャツがかすかな膨らみを控えめに押し上げているに過ぎないが、露わになった肌は白くてきめ細かく、初夏の陽光を浴びて淡く透き通るように輝いている。その肌の質感は、絹のように細やかなうぶ毛に覆われていて、まるで産毛そのものが光を吸い込み、内側から発光しているかのような錯覚を、翼に抱かせずにはいられなかった。
「おう、ひまりか。珍しいな、こんな時間に。まあ、座れよ。でも、見ての通り暇でな」
翼が苦笑いを浮かべながらそう言うと、ひまりは小首をかしげて店内をぐるりと見渡し、それから突然、両手をぽんと打ち鳴らした。その仕草の一つひとつが、まだあどけなさを残していながら、どこか男の目を引き寄せる仕草でもあった。彼女の手首の内側には、細い血管が青く透けて見え、その皮膚の薄さが、かえって生々しい生命感を放っている。
「ねえ、おじさん。私、なにかお手伝いしようか? お客さんがあんまりいないみたいだし、私がいたらちょっとは賑やかになるかなって」
無邪気な申し出に、翼は最初こそ「いいよいいよ」と手を振って断ろうとしたが、ひまりの押しの強さというか、まっすぐな好意をぶつけられると、その手もいつのまにか止まっていた。彼女の天真爛漫な気前のよさは、幼いころから少しも変わっていない。こちらが押しに弱いのを見越しているのか、それともただの無垢からか、一度言い出すと翼が折れるまで絶対に引き下がらないのだ。
その日を境に、ひまりは放課後になると、ほぼ毎日のように「翼屋」にふらりと顔を出すようになった。Tシャツにホットパンツという、まるで夏の部屋着のような格好でカウンターに立つ彼女の姿は、それだけで店の空気をがらりと変えた。学校帰りの汗ばんだ肌からは、若い女だけが放つ独特の甘い匂いが立ち昇り、カウンターの向こうにいる客たちの鼻を、無意識のうちにひくひくと痙攣させるのだった。
最初はただの偶然かと思われたのだが、ひまりがいる日は明らかに客足が違っていた。しかも、ただ数が増えるだけではない。客層が、それまでとは別人種のように変容していたのである。背広姿の中年男性や、一人暮らしの学生らしき若者たちが、なぜだか遠慮がちに、けれど確かな熱を帯びた視線を、彼女の太ももやうなじに這わせながらラーメンをすするのだ。
翼はその様子を、カウンターの奥からじっと観察していた。ラーメンの湯気の向こうで、ひまりはまるで自分が放つ磁力に無自覚な磁石のように、くるくるとよく動き、よく笑った。Tシャツの襟元からは、汗ばんでほんのりと赤みを帯びた鎖骨がのぞき、ホットパンツの裾は、しゃがむたびにぎゅっと食い込んで、太ももの付け根のぷっくりとした肉の膨らみを、あわや露わにせんばかりに強調している。そのたびに、カウンターの向こう側の空気が、ぴりりと張り詰めるのを翼は肌で感じ取っていた。
スープを運ぶ際に、彼女がふと腰をかがめると、太ももの内側の白い肌がちらりとのぞき、食事中の客たちは一様に箸を止め、息を呑むのだ。どんぶりを持つ手がわずかに震え、スープの表面に小さな波紋が広がる。その瞬間、翼の鼻腔をくすぐったのは、ラーメンの豚骨臭などではなかった。少女の汗ばんだ肌から立ちのぼる、甘やかでいて、どこか鼻の奥にまとわりつくような、むせ返るほどの淫臭――そうとしか呼びようのない、動物的な匂いだった。
ある夜のことだった。閉店作業を終えた翼は、ひとりカウンターに座り、燻るような蛍光灯の下で、その日売れ残ったスープをぼんやりと見つめていた。鍋の底に沈殿した白濁の液体が、冷めるにつれて表面に薄い膜を張り、鈍く光っている。膜は時折、かすかな店内の空気の動きに揺れて、まるで意思を持つ生き物のように、ぬらぬらとその表面を変形させた。
ふと、彼の脳裏に浮かんだのは、今日もまたひまりの周りにだけ、不思議なくらいに客が群がっていた光景だった。彼女が水を運ぶたび、注文を取るたび、男たちの目が、まるで彼女の身体に吸い寄せられるように動く。あれは、いったい何なのだろう――。
「……まるで、ひまりが磁石で、客が砂鉄みたいだな」
翼は誰にともなく呟き、乾いた笑いをこぼす。あの娘が立つだけで、店内の空気はぱっと華やぎ、男たちの目の色が変わる。客を引き寄せるあの力は、いったいどこから来るのだろう。肌の白さか、太ももの張りか、汗ばんだうなじに張りつく数本の黒髪か。あるいは、あの無垢な笑顔の奥に潜む、本人すら知らぬ色香か。
「あんなにお客を引き寄せるひまりから、ラーメンの出汁が取れたらなあ……」
冗談めかした独り言のつもりだった。しかし、その言葉が唇の端からこぼれ落ちた瞬間、翼の喉の奥で、何か生温かいものがうごめき、ずるりと動いたのである。出汁を取る――あの娘を、ラーメンの材料にする。そんな馬鹿げた着想が、なぜだかやけに滑らかに、まるで熱いスープが喉を焼きながら食道を落ちていくように、するりと胸の奥へと落ちていった。
いやいや、俺は何を考えてるんだ、と翼は激しく首を振る。だが、一度動き出した妄想の歯車は、止めようとしても止まるものではなかった。ひまりの身体から滲み出るものが、もしこのスープに溶け込んだら――。汗なのか、それとも肌の表面を覆ううぶ毛の一本一本に宿った、あの甘ったるい匂いの源なのか。いや、そもそも、あの娘をぎゅうっと搾ったら、白く濁った稚拙な蜜が滴り落ちてくるのではないか……。そう考えたところで、翼は自分の思考の下品さに吐き気を覚え、拳をぐっと握りしめた。指の関節が白くなるほどの力が込められる。
だが、その吐き気のすぐ裏側で、別の自分が冷静に計算を始めているのを、彼ははっきりと自覚していた。蒸留でもない、抽出でもない、もっと原始的な方法――浸出だ。あの身体を湯に浸せば、きっと何かが滲み出る。脂を、アミノ酸を、フェロモンを、もっと得体の知れない何かを――。汁を煮詰めるより、ずっと穏やかで、ずっと深く、あの娘の本質を一滴残らず引き出せるはずだ。
「……風呂だ」
翼の口から漏れた言葉は、誰に聞かせるでもない、かすれた吐息だった。ひまりが風呂に入った後の湯を、ラーメンの出汁に使う。その着想が、ありありと像を結んだ瞬間、彼の背筋を冷たい戦慄が走り抜けた。それは、まぎれもない狂気の沙汰だった。だが、その狂気こそが、閉店寸前のラーメン屋の店主にとって、どれほどの引力を持つものか――翼は震える手で、冷めたスープの表面を見つめ続けた。
湯気の消えた鍋の底で、豚骨の脂が白く凝固し、まるで月の表面のような凹凸を描いている。翼はその不規則な模様のなかに、ひまりの裸身が湯に浸かる幻影を、ありありと見た。湯のなかでゆらゆらと揺れる黒髪。その髪の一本一本が、まるで墨を落としたように湯のなかをたゆたい、白い肌のまわりでは、目に見えない何かがとろりと溶け出している。それは湯の色を、ほんのわずかに、だが確かに変えていく――透明から、かすかな乳白色へ。味覚を超越した、もっと根源的な、男の獣性に直接訴えかける何かが、そこには宿っていた。
翼は強く目を閉じ、深く息を吸い込んだ。鼻腔を満たしたのは、冷えきった豚骨の脂と、かすかに残る醤油の焦げた匂い。だが、その奥の奥に、ひまりの汗と混じった甘ったるい淫臭が、まだ微かに、幽かに、しかし確かな存在感をもって漂っている気がした。それは、彼の脳裏にこびりついた幻臭かもしれない。だが、彼にとってはそれで十分だったのだ。
客足は増えた。だが、それはただのきっかけに過ぎない。彼が真に求めているのは、一度食べたら忘れられなくなる、リピーターを生み出す絶対的な味の深みだ。そして、彼は知っていた。真に美味いラーメンは、時に人の倫理観すらも蕩かしてしまう、麻薬のような蠱惑的な力を持つことを。翼の心の奥底で、商売の鬼と、ひまりへの罪悪感と、もっとどろどろとした暗い欲望とが、熱く濁った坩堝となって渦巻き始めたのだった。
蛍光灯がかすかに明滅し、鍋の底の白い脂の膜が、それに呼応するようにゆっくりと揺れた。翼はその膜を指ですくい取り、そっと舐めてみる。冷たい脂の味の奥に、かすかながら、あの娘の放つ甘い匂いの幻が、たしかに宿っているような気がした。それは錯覚だ。だが、錯覚こそが、これから彼が仕掛けようとしている狂気の企みを、誰よりも彼自身に正当化してくれるのだった。
第2章 土下座と背徳の出汁取り――下着姿のひまりが初めて湯に溶かす自分の匂い
あの日、ひまりが店に立つようになってからというもの、翼の胸の奥には名状しがたいざわめきが棲みついていた。カウンター越しに盗み見る彼女の後ろ姿――ホットパンツからすらりと伸びる太ももの、透き通るような白さ。かがむたびにふわりと揺れる腰の曲線。そして何よりも、客たちの視線が一斉に彼女へ吸い寄せられる、あの瞬間の空気の変わりよう。翼は小麦粉の袋を抱えながら、奥歯をぎりりと噛みしめた。美味いラーメンを作るだけでは、もう駄目なのか。いや、駄目なのだ。数字が容赦なくすべてを物語っている。彼は蛇口をひねり、冷たい水で顔を洗った。鏡に映る自分の顔は、疲労と焦燥でくすみ、どこか他人のようだった。そのとき、ふと脳裏に浮かんだのは、昨夜見たテレビのドキュメンタリーだ。老練な料理人が、素材の「持ち味」を活かすと語っていた。持ち味――人間の、皮膚から滲む匂い、脂、汗。そして、女の……。
翼は自らの発想に戦慄し、激しく首を振った。だが、一度芽吹いた狂った考えは、まるで暗い水底の藻のように、ぬめる感触で心の奥へ絡みついて離れない。彼はひまりを幼い頃から知っている。かつては無邪気に「おじさん」と呼んでまとわりついてきたあの小さな影が、今ではこれほどまでに男の目を奪う。だとしたら、彼女の肢体から滲み出る何かを、黄金のスープに閉じ込めることができたなら。それは狂気に彩られた妄想だったが、閉店の二文字が脳裏をちらつくたびに、翼の理性は薄氷のように少しずつ脆さを増していった。
月曜の定休日。翼は意を決して、ひまりを自宅アパートへと呼び出した。彼女はいつものようにゆるいTシャツとホットパンツ姿で現れ、玄関をくぐるなり小首をかしげる。その仕草ひとつにも、翼は胸を締めつけられるような苦しさを覚えた。
「おじさん、何か話があるって? 改まっちゃって、どうしたの?」
翼は彼女を六畳間の居間に通し、そして次の瞬間、ゆっくりとその場に膝をついた。古びた畳の硬い感触が、痛いくらいに両膝へ食い込む。自分の心臓の音だけが、やけに大きく鼓膜を打っていた。彼は両手を畳に突き、深く、深く頭を下げる。土下座だった。
「え、ちょっ、おじさんやめてよ! なにごと!」
ひまりの慌てふためく声が、高い位置から降り注ぐ。翼は額を畳の目に押しつけるようにして、震える声を絞り出した。
「ひまり……頼む。お前の、風呂上がりの湯を……俺に譲ってくれないか」
瞬間、空気がぴしりと凍りついた。翼は顔を上げられない。ただ、ひまりの呼吸がふっと止まったことだけが、痛いほどはっきりと伝わってきた。数秒の重たい沈黙のあと、ようやく彼女の細い声が降りてくる。
「お風呂の、お湯を……? それって、どういうこと……?」
翼は必死に言葉を紡いだ。店が危機的な状況にあること。ほんの少しでも客を呼び寄せるには、もはや普通のラーメンでは太刀打ちできないこと。彼女の存在そのものが、どれほど抗えない力で男を惹きつける特別なものかを、噛んで含めるように説明した。言葉を重ねるたび、自分の口走っていることの異常さが肌を刺したが、もう止まれなかった。
「ひまりの、その……肌から滲む、匂いとか、脂とか、そういうものが溶け込んだ湯なら、もしかしたら、今まで誰も口にしたことのないスープが立ち上がるかもしれない。お前を商品にするみたいで、本当にどうしようもなく申し訳ない。でも、もうこれしか思いつかないんだ」
ひまりはしばらく、硬く口を結んでいた。翼は恐る恐る顔を上げる。彼女は両手をもじもじと組み合わせ、大きな黒目をうるませて佇んでいた。怒っているのか、泣き出しそうなのか、その表情は判別できない。ただ、長い睫毛が小刻みに震え、白い喉がこくりと小さく上下するのが見えた。
彼女の胸の内では、言葉にならない困惑が渦を巻いていた。お湯を、と頼まれることの異様さに、頭の芯がじんと痺れる。けれど同時に、かつて優しく頭を撫でてくれた無二の恩人である翼への尽きない感謝と、大人の男が真剣に縋る姿への、名づけようのない好奇心とが、静かに胸の奥で頭をもたげていた。幼い頃から知っている「おじさん」が、今は一人の男として、自分の身体の一部を求めている。その倒錯した構図が、ひまりの心の奥底に、小さな火を灯した。
ひまりはうつむき、何かを言おうとして唇をわずかに動かしたが、声にはならなかった。沈黙が数秒、部屋の空気を張りつめさせる。翼の耳には、壁掛け時計の秒針と、自分の心臓だけがやけに大きく響いていた。窓から差し込む午後の陽射しだけが、部屋の中をゆっくりと移動していく。
やがて彼女の桜色の唇から、思いがけず静かな声が漏れた。
「……わかった。私、おじさんの役に立ちたい。店、潰れちゃ嫌だもん」
翼は息を呑んだ。罪悪感と安堵が濁流のように押し寄せ、彼はもう一度深く頭を下げた。今度は感謝の、重たい土下座だった。ひまりはそんな翼の背中を、どこか遠い目をして見つめていた。自分がこれからしようとしていることの意味を、まだ完全には理解できないままに。
それから三十分後。アパートの古びたユニットバスに、ひまりは一人、神聖な儀式を前にする巫女のように立っていた。翼は居間で固く息を潜めて待機し、彼女を浴室へと促したのだ。ひまりは服を脱ぐ指先が、かすかに震えるのを感じながら、まずTシャツをたくし上げた。脱衣所の曇った鏡に、白いブラジャーに包まれた慎ましやかな双丘と、くびれた腰の線がぼんやりと映る。彼女はぎゅっと目を閉じ、ホットパンツを足首から抜き去った。露わになる太ももの白さに、自分の体温が一気にせり上がってくるのを感じる。蛍光灯の光が、剥き出しの肌の上で微かに揺れた。
ブラジャーとショーツだけの、あられもない姿で浴室のドアを開け、浴槽に張られた湯を見下ろした。透明で、静かに湯気を立てている。翼が心を込めて用意してくれたものだ。ひまりはそっと指先で湯に触れた。少し熱めの温度が、逆説的に彼女の強張った心をゆっくりと解し始める。指先から広がる温もりが、血管を伝って全身へと巡っていくようだった。彼女は怖ず怖ずと片足を浴槽へ差し入れた。ざばり、と小さく奔る水音。湯が太ももを包み込む感触に、ひまりは思わず小さく息を漏らした。続いてもう片方の足を沈め、ゆっくりと腰を落とし、肩まで浸かる。
湯の柔らかな温もりが、肌の隅々、毛穴の一つひとつにまで染み渡っていくようだった。ひまりは膝を抱え、小さく息を吐く。自分の存在そのものが、少しずつ湯に溶け出していくような、不思議な錯覚にとらわれた。脇の下の汗、一日の埃、シャンプーの微かな残り香。そして、もっと深い場所から滲み出る、女としてのもの。それらすべてが今、この透明な湯の中に静かに拡散していく。翼がこれを使ってラーメンを作る。誰かがそれを啜る。そう想像するだけで、ひまりの胸の奥がきゅうっと切なく疼きながらも、どこか熱く灼けるような、甘やかな感覚に襲われた。
(おじさんは、これで美味しいって、褒めてくれるのかな……)
湯の中で、彼女はそっと自分の二の腕をさすった。しっとりと濡れた肌は、触れるたびに、まるで吸い付くようなぬめる感触を指先に返す。ショーツの布地は湯を吸って重たくへばりつき、ブラジャーの下の乳首が、湿った布に擦れて硬く尖っているのがはっきりと自覚された。その敏感な突起が、わずかな摩擦さえも鋭敏に拾い上げ、甘い痺れを胸の奥へと送り込んでくる。彼女は俯き、そっと自分の太ももに目を落とす。揺蕩う湯の中で、太ももはいつもより白く、ふっくらと柔らかな光を帯びて見えた。湯の表面がわずかに揺れるたび、太ももの輪郭がゆらゆらと歪み、まるで別の生き物のように官能的に波打つ。そして、その付け根のショーツの布地から、何かがじんわりと滲み出し、湯と混ざり合っていくような気がして、ひまりは顔を真っ赤に染めた。これは汗? それとも、もっと別の、名づけようのないもの……? 思わず太ももをぎゅっと閉じると、ぬるりとした熱い感触が腿の間にわずかに広がる。彼女は慌てて身をよじり、湯の表面を手のひらでそっとかき混ぜた。波立つ湯は何も語らず、ただ彼女の身体という秘密の花園から滲んだすべてを、恭しく抱き込んで、静かに、とろりと揺れている。
ひまりはそっと目を閉じ、自分の身体が湯に溶けていく感覚に身を委ねた。湯の温もりが、子宮のあたりにじんわりと滲み込み、下腹部の奥がかすかにきゅんと疼く。それは痛みとも快感ともつかない、曖昧で深い感覚だった。彼女の細い指が、無意識のうちに太ももの内側をそっと這い上がり、ショーツの縁に触れる。そして、はっと我に返り、慌てて指を引っ込めた。浴室の天井を見上げ、唇を噛みしめる。翼に湯を捧げるだけのはずなのに、自分の身体が勝手に、別の何かを求め始めている気がして、ひまりは胸の奥がぎゅっと締めつけられるのを感じた。
十五分ほどの入浴ののち、ひまりは浴室から出た。翼はバスタオルを差し出しながら、彼女の濡れた下着姿から慌てて視線を外した。ひまりの黒く長い髪は湯に濡れて白い肌にまとわりつき、水珠が露草の花びらのような肩を伝い落ちている。湯上がりの肌はほんのりと桜色に上気し、身体の線に沿って滴が幾筋も流れ落ちていた。彼女は恥ずかしそうに俯いたまま、小さく呟いた。
「……なんか、私の全部、お湯に溶けちゃった気がする」
翼は返す言葉が見つからず、ただその出汁湯を慎重に寸胴鍋へと移しながら、彼女の肢体から移った温もりと秘めやかな匂いを、まるで聖水か何かのように感じている自分に、鉛のような罪悪感を覚えた。だが、それ以上に、この芳醇な湯がもたらすかもしれない未知の味わいへの期待が、彼の下半身の奥底にかすかな熱を与えていた。鍋の湯はほんのりと白く濁り、かすかに甘いような、それでいてどこか酸っぱいような、形容しがたい匂いを密やかに放っている。それは紛れもなく、ひまりそのものの、生きた匂いだった。まだ誰も知らない、禁断のスープの原型が、今、静かに鍋の中で産声を上げようとしていた。
第3章 全裸の二番出汁――浴槽で初めての絶頂、愛液が混ざる秘密のスープ

一番出汁を張った浴槽からあがったひまりは、翼が差し出してくれたぶ厚いバスタオルで濡れた下着ごと全身をつつみ、しばらく脱衣所の片隅でぽつねんと立ちすくんでいた。ブラジャーの湿った布地が乳首のあたりにぴたりと吸いつき、ショーツもまた腿のつけ根にまとわりついて、湯のぬくもりをいつまでも逃がすまいとしているかのようだ。体の芯までとろけてしまったような、それでいて自分のものではない体液がじんわりと染みだしているような、妙な浮遊感。その感覚に全身をゆだねながら、ひまりは浴室の白くかすんだ壁をぼんやりと見つめていた。
そこへ、隣室から翼の遠慮がちな声がかけられる。
「ひまり、もう大丈夫か……?」
びくん、とひまりの肩が跳ねた。胸のあたりをぎゅっとタオルで押さえこみながら、小さく返事をする。
「は、はい……なんとか……。おじさん、これ、どうしたら……」
「いや、そのまえに、ひまり。すまないが、もう一度だけ、頼めるか」
「……もういちど?」
首をかしげるひまりに、翼の声はどこかうわずっていた。店の命運をかけた必死さと、自分でも行き過ぎているとわきまえている後ろめたさが、声の震えとなって浴室のドア越しにつたわってくる。
「今度は、何も着けずに入ってほしい。……ひまりの、本当の、その……肌から、じかに溶けだすだし汁が、必要なんだ」
一瞬、ひまりは言葉の意味をうまくつかめなかった。何も着けずに。つまり、裸で、すべてをさらしたまま、湯に浸かれと。じわりと理解が追いついた刹那、耳のつけ根から頬のてっぺんにかけて、かあっと熱が奔った。
「……な、なにも着けずに、って……」
声にしただけで心臓が早鐘を打つ。ブラもショーツも脱いで、あられもない姿で湯船につかれと言うのか。あの、やさしかったおじさんが。店のためとはいえ、十五の親類の娘にそんなことまで。
けれど翼の声は、押しつけるでもなく、むしろ自分自身の浅ましさを恥じているようで、それでいて絶望的な真剣さにみちていた。
「あのな、ひまり……ほんとうに嫌なら、無理にとは言わない。でも、これが最後の希望なんだ。俺は、この商売しかできなくて。そのうえ、お前にこんなことまでさせて、自分が情けなくて……」
「……おじさん……そんな、自分を責めないで……」
ひまりは背筋をすっと伸ばした。タオルを握る指先に力がこもる。翼を見捨てることなど、はじめからありえなかった。だったらここは、思い切りよくもうひとつの恥を選ぶしかない。
「……うん、わかった。入る……裸で。おじさんのためなら、私、がんばる」
その返事を受けた翼は、なにかを押しころすように「すまない、ありがとう」と短く答えたきり、あとは物音ひとつ立てなくなった。
脱衣所の時計の秒針だけがかちかちと、ひまりの鼓動に重なるように鳴っている。
先ほど翼が言ったとおり、浴槽にはすでに新しく清らかな湯が張られていた。温度はぬるめで、翼がガス栓をひねり新たに熱めの湯を足しておいてくれたらしい。水面に立ちのぼる湯気がゆらゆらと白く濁りながら、壁のくすんだタイルをじっとりと濡らしはじめている。ひまりはその光景を、裸になるまえの最後の景色として、まぶたの裏に焼きつけるように見つめた。
ひまりはひとつ、深く息を吸った。吸って、吐いて、それから心を決める。
最初にバスタオルを脱衣かごへそっと落とした。湿ったブラジャーが肌をはなれるとき、ひんやりとした空気が背中や胸元をかすめ、乳首がつんと小さな痛みをともなってしこる。続けてショーツも、腿から膝へ、膝から足首へとすべり落として、一糸まとわぬ姿になった。
姿見の隅に、小さく自分が映りこんでいる。胸はまだふくらみかけて控えめながら、白い肌が湯あがりのせいでうっすら桜色に上気している。くびれた腰、そして太ももへかけてのふくよかな線。なにより羞恥を搔き立てるのは、下腹のあたりから腿のつけ根へかけて、つるりと産毛もまばらな秘部がまるで別の生きもののように自己主張していることだった。
「……み、見られてない、よね……」
誰にともなくつぶやいて、ひまりは浴槽に足をさし入れた。ぬるめの湯と思ったのに、素肌で触れると意外なほど熱く感じられ、思わず「あっ……」と声がもれる。ふくらはぎ、膝上、腿へと湯が絡みつくたび、自分の裸の境界線がじんわり溶かされてゆくようだった。
ついに腰まで沈めると、湯がやわらかな音をたてて揺れ、胸のちいさなふくらみのあたりまでぴしゃりと跳ねる。ひまりはそっと両手を胸にあてた。冷えかけた指先が乳首にふれただけで、むずむずするような疼きが腹の奥へ抜けていく。
「ん……っ」
目を閉じると、かえって官能がするどくなる。いま、自分は裸で、翼のアパートの、それもラーメンのだしに使う湯のなかに浸かっている。この湯が、これから翼の手で濾され、あの焦がし醤油の香りとラードの層をもつスープに仕立てられる。たくさんの男の人たちが、知らずに自分の体を溶かした汁をすする。想像するだけで頭の芯がぼうっと熱くなり、それと同時に、下腹部の奥で何かがきゅうっと縮まるような予感がした。
いつしか太ももをするりとすりあわせている自分に気づいて、ひまりははっと息をのむ。だめ、と思えば思うほど、湯のぬめりが全身を這いまわり、自分の中心へと指先を誘いこむのだ。
幼い頃から、そんな想像をするたびに、ひまりの体は素直に反応した。夜ふとんのなかで、同級生の男子のことや、もっとありえないはずのおとなの男の人を思い浮かべながら、そっと自分のそこをさわった。まだ誰にも見せたこともない、触れられたこともない場所。なのに、指でなぞるとじわりと蜜がにじんで、ぬるぬるとすべる感触がどうしようもなく気持ちよかった。
中学の保健室でこっそり読んだ本に書いてあった、『自慰』という言葉。あのときからほぼ毎日、ひまりは自分を慰める習慣から逃れられずにいる。
けれど今日は、場所がちがう。翼という、小さい頃から知っているおじさんの家の、ラーメンの出汁になる湯のなかで、自分を慰めている。その背徳感が、逆に奥歯のあたりを甘く痺れさせた。
「……おじさんに、見られたら……」
もし翼がいまドアをあけたら、自分のこんな痴態がまる見えになる。太ももをひらき、秘部を指で割りひらき、浅ましくもそこを弄る女の子の、すべてが。
そう願っているのか、怖がっているのか、自分でもわからなかった。
ただもう、指先は疼くままに動きはじめていた。右手がゆっくり湯のなかをくぐり、へその下あたりをかすめて、ふっくらと盛りあがった恥丘へとたどりつく。きめ細かな陰毛はうぶ毛のようにやわらかく、指の腹でなでるとくすぐったさとぞくぞくする快感が同時に押し寄せた。
「ん……っ、は、ぁ……っ」
そこから指をすべらせ、花びらのような大陰唇の裂け目にそっと触れる。もうすでに、湯とはちがうとろりとした粘液でぐっしょりと濡れていた。自分の体からこんなものが、と思えば思うほど、指はもっと奥へ奥へと割りこんでいき、やがて敏感な肉芽にたどりついた。
クリトリスに指先がふれた瞬間、ひまりの背中がぶるっと震え、小さな悲鳴が浴室の壁に吸いこまれた。
「ひぅ……っ」
これだ、これだ、と頭のどこかで声がする。いつもの、自分だけの快楽。でも今日は、それだけじゃない。「二番出汁」という大義名分が、羞恥を欲望へとねじ曲げてゆく。この愛液が、たくさんの人の口に入るんだ。一番出汁とは違う、もっと濃くて深い秘密の味として。そう思うと、お腹の奥がまたしてもきゅんと収縮し、とろとろの蜜が新たに湧きだした。
指の腹で肉芽をくるくると回すたび、ぐちゅっ、くちゅっという水音とは異なる粘着質の音が、静かな浴室に妙になまめかしく響く。親指で包皮のうえから軽く圧迫し、人さし指で横からつまむように刺激してやると、電気のような衝撃が腰まで走り、自然と足の指がぎゅうっと丸まった。
「あ、あ、あ……っ、おじ、さん……っ」
口のなかで勝手にあふれる名前に、自分でもぎょっとする。だめだ、おじさんを巻きこんじゃいけない。でもその禁じた思いこそが、ひまりの興奮を何倍にも加速させた。
翼の顔が、脳裏に浮かぶ。困ったような、悲しそうな、それでいてどこか熱に浮かされたような、今日のあの眼差し。私の裸を想像しているのかな。そう思うとクリトリスがじんじんと充血し、指先で転がすたびに切ない疼きがひろがる。
「んんっ、はぁ……んっ、ふ、うぅ……っ」
もう片方の手は無意識に胸元へのび、ちいさな乳首を指先で摘まんでいた。やわらかなふくらみの頂点がこりこりと固くなり、そこをきゅっとつまむと、子宮のあたりが直接つながっているかのように、秘部の奥がひくついた。乳首とクリトリスを同時にいじめると、快感が二重になって体の真ん中でぶつかりあい、目の裏で火花が散る。
湯のなかで、ひまりは腰を浮かせるようにして、もっと深く指を沈めた。中指がぬめる襞をかきわけて、処女の入り口に触れるか触れないかのところで、ぐるりと円を描く。
「はぁん……っ、そこ、や、ぁ……!」
入り口のまわりには細かい襞が集中していて、そこをなぞられるたびに膣がきゅうきゅうと締まり、侵入者を待ちわびるようにうごめいた。まだなににも貫かれたことのないそこが、自分でもおどろくほど淫らにひらき、指を吸いこもうとする。
ああ、もうだめ、くる、くる。
ひまりは声を殺そうと必死だったが、どうしても喉の奥から漏れてしまう。翼は隣の部屋で、じっと息をひそめて待っているのだ。もし聞かれたら、もしドアをあけられたら。そう思うのに、いや、思うからこそ、絶頂は容赦なくひまりを襲った。
「んっ、く、ふぁ……あ、あっ、イ、く……っ!」
クリトリスをぐりぐりと潰すように押しつぶした瞬間、弾けた。膣の奥が痙攣し、そこからどろりとした愛液が溢れでて、熱い湯のなかへと溶けていく。透きとおっていた湯が、自分の淫らな汁で少しずつ白く濁っていく。大陰唇も小陰唇もひくひくと震え、太ももの内側が自分の汁でぐしょぐしょに濡れた。喉を反らし、浴槽のふちに頭をあずけて、ひまりはしばらく全身をびくびくと震わせていた。
どれくらい時間が経ったのか、わからない。ふと我にかえったとき、湯はまだあたたかく、けれどそこにはさっきまでの透明な湯とは違う、まったりとしたとろみが混じっているように感じられた。気のせいだろうか。でも、鼻をくすぐるうすい雌のにおいは、たしかに最初より強くなっていた。張り替えたばかりの、何も混ざっていなかったはずの湯が、自分の体液でこれほどまでに匂い立っている。
「……どう、しよう……」
ひまりはようやく立ちあがり、脱衣所へ出た。バスタオルで体を拭きながらも、脚のつけ根からはとめどなくぬめるものが垂れつづけ、太ももを冷たく濡らす。下着をつけ、Tシャツをかぶり、ホットパンツをはく。そのあいだじゅう、翼にこのことをどう伝えようか、それとも黙っていようか、頭のなかはぐちゃぐちゃだった。
結局、なにも言いだせないまま、ひまりは居間へ戻った。
そこでは翼が、寸胴鍋を前にしてせっせと仕込みの準備をととのえていた。先ほどまでひまりが浸かっていた、あの湯――浴槽から慎重に収集した二番出汁を、彼はいま濾している。目の細かい布でゆっくりと漉しながら、温度管理をしつつ寸胴へうつしていく手つきは、まるで宝物をあつかうかのようだった。翼の横顔はラーメンにむかう職人のそれで、いつものやさしいおじさんからは想像もつかないほど真剣そのものだった。
「すまなかったな、ひまり。本当にありがとう。あとは俺が仕込むから、すこし休んでてくれ」
顔もまともに見られないまま、ひまりは小さくうなずいた。翼の目の下にはうっすらとクマができていて、それを見ると胸の奥がちくりと痛む。彼をたすけてあげたい。その一心が、さっきの恥ずかしい行為を正当化してくれるように思えた。
それから一時間ほど、翼は寸胴のまえに立ちつづけた。ゲンコツと鶏ガラ、それに煮干しや昆布といった定番の旨味に、ひまりの二番出汁をブレンドし、殺菌のために必要な温度と時間を守りながら煮こむ。一番出汁の湯とはまったく別の、浴槽に新たに張られた湯から抽出された二番出汁は、翼の長年の勘からしても異質な手応えをもっていた。本来ありえないはずの隠し味をまえに、彼の手つきには微塵の迷いもなかった。
「……できた。まずは、味見をしよう」
翼がぽつりと言ったのは、時計の針がようやく午後三時をまわろうかという頃だった。
彼が用意したのは、二杯の白いどんぶり。一杯には、一番出汁をベースにしたスープ。もう一杯には、いま仕上げたばかりの、ひまりの二番出汁をブレンドしたスープ。どちらにも中太のストレート麺をゆでて湯切りし、同じチャーシューと海苔、味玉をトッピングしている。ただし、二番出汁のほうには醤油ダレをやや強めにきかせ、さらに背脂を少量浮かべるという、翼の自信の配合だった。
「ひまり、悪いがちょっと味見を頼めるか? 比べてみてほしいんだ」
「う、うん」
ひまりは翼のとなりに腰かけ、どきどきしながらレンゲを手に取った。
まずは、一番出汁のスープから。
レンゲですくい、そっと口に含む。醤油のキレと背脂のコクが舌のうえでほどけ、煮干しや昆布の旨味がじんわりとひろがる。翼が長年みがいてきた、まっとうなラーメンの味だ。美味しい。素直にそう思った。
「……こっちも、おいしいよ、おじさん」
ひまりが微笑むと、翼はほっとしたようにうなずいた。
「ああ、それは俺の基本の味だ。……で、こっちが二番出汁のほうだ」
促されて、ひまりはもう一杯のどんぶりにレンゲを差し入れる。スープは透きとおった黄金色というよりは、わずかに白濁しており、表面にきらきらと脂の環がひろがっている。鼻を近づけると、鰹や煮干しの魚介系の香りにまじって、なんともいえない甘やかな、それでいてねっとりとした動物性の匂いがふわりとたちのぼった。これは、私の……。そう思うと、ひまりは顔が火照るのを止められない。
おそるおそる、レンゲでスープをひとくち。そっと口にふくんだ瞬間、ひまりは思わず目をみはった。
「……え? なに、これ……」
最初に感じたのは、一番出汁とは明らかに異なる、舌にまとわりつくような濃密さだった。醤油のキレと背脂のコクが舌のうえで炸裂したあと、すぐにやさしい甘みと旨味がじんわりとひろがり、喉の奥へと消えていく。だがそれだけじゃない。鼻に抜けるときに感じる、言葉にできない熟れた風味。まるでとろけるような乳製品にも似て、しかしもっと生々しい、本能の根っこを直接くすぐられるような味わいだ。
「……おいしい……すごく、ふくざつな味……。一番出汁より、こっちのほうが、なんていうか……深い」
ひまりの正直な感想に、翼は眉をひそめた。自分でもたしかめねばと、まずは一番出汁のスープをひとくちすする。つづいて、二番出汁のスープを口に含んだ。
その瞬間、翼の手がぴたりと止まった。
「……なんでだ?」
彼の口のなかでは、いま、かつてない複雑なエクスタシーが渦巻いている。一番出汁とは明らかに異なる、深くてねっとりした密度がこの二番出汁にはあった。温度も、煮こみ時間も、基本的な素材も同じはずだ。違うのは、ひまりの入浴時の状態だけ。
「おかしい……一番出汁より、こっちのほうが段違いにうまい。なんでこんな味が出るんだ?」
翼はレンゲを置き、じっと丼を見つめた。職人としての探求心が、彼の脳裏をかき乱す。
「ひまり、一番出汁のときと二番出汁のとき、なにか……その、ちがうことをしたのか?」
問いかけに、ひまりの肩がびくんと跳ねた。テーブルの下で、ぎゅっと両手を握りしめてうつむく。耳が真っ赤になっていて、膝のうえにおいたホットパンツの腿のあたりを、もじもじとこすり合わせている。
「ち、ちがうことって……な、なにも……」
声がうわずっている。翼はその反応に、何かを察した。
(この子は、入浴中に何かをしたんだ……)
事実、ひまりの脳裏には、つい先ほどの痴態がありありと蘇っていた。湯のなかで指を這わせ、クリトリスを弄り、絶頂して、愛液をたっぷりと湯に溶かしたあの行為。一番出汁のときはただ浸かっていただけ。でも二番出汁のときは、あんなに淫らなことを——。
(それが、味に出たっていうの……?)
ひまりの羞恥は極限に達し、いまにも泣きだしそうなほど顔を赤らめている。
翼はそれ以上、追及しなかった。いや、できなかった。ひまりのその様子を見れば、なにが起きたのか、おぼろげながら理解できてしまったからだ。そして、その理解が、翼の下半身を熱くさせていた。
エプロンの下で、翼の男性自身はいつのまにか固くそそり立ち、痛いほどにズボンを押しあげている。頭では罪悪感にかられながら、体はまぎれもなく、このスープの秘密に昂奮していた。
(この味は……ひまりの、その……)
自らの内で言葉にするのもはばかられる淫らな想像が、翼の理性をじりじりと焦がす。しかし、それでも彼は職人だった。この味を再現できるかどうか、それが店の命運をわける。
「……いいんだ、なにも言わなくて」
翼の声は掠れていた。
「とにかく、これでいける。俺は一番出汁のメニューはやめる。この二番出汁だけで勝負する」
「え……?」
ひまりが顔をあげる。翼の瞳には、迷いを振りきった決意の色が浮かんでいた。
「理由はわからないけど、二番出汁のほうが圧倒的にうまい。理屈じゃないんだ、これは。お前の……その、協力があったからこそ、できた味だ。俺はこれを信じる」
ひまりはただ、ほっとしたような、それでいてどこか物足りないような、複雑なため息を小さくもらすだけだった。
「……うん。おじさんがそれでいいなら、私も……うれしい」
こうして、一番出汁と二番出汁を並べての試食は、誰の目にも明らかな差異をふたりに突きつけた。片や、翼の長年の経験が生んだたしかな味。片や、十五の少女の秘めやかな体液が溶けこんだ、禁忌の味。そして勝者は、後者だった。
翼屋の命運を大きく、甘美で背徳的な方向へとねじまげるスープが、いま、産声をあげたのである——。
第4章 ひまりのスープ試食…なんで、こんなに美味しいだ二番出汁は
第4章: ひまりのスープ試食…なんで、こんなに美味しいだ二番出汁は
浴室から出てきたひまりは、まだ頬をほんのりと朱に染めたまま、翼の差し出したバスタオルを胸の前でぎゅっと握りしめていた。濡れた髪の先からぽたぽたと水滴が落ち、フローリングの床に小さな染みを作っていく。翼はそんなひまりの姿を直視できず、わざとらしく台所の方向へと身体を向けた。アパートの小さなキッチンには、すでに二つの大鍋が並んでいる。片方には一番出汁――下着姿のひまりが浸かった湯。もう片方には二番出汁――全裸で、そして彼女が自らの秘部を弄った後の湯が、それぞれ黄金色に近い透明感をたたえて静かに湯気を立てていた。
「……おじさん、あたし、着替えてくるね」
ひまりの声はまだ少し掠れていて、そのかすかな震えが翼の耳の奥にこびりつく。彼は鍋を見つめたまま、大げさなくらいに明るく返事をした。
「ああ、ゆっくりでいいぞ。こっちは仕込みを始めてるから」
実際にはまだ何も始めていなかった。一番出汁と二番出汁、それぞれをどうやってラーメンのスープに仕立てるか。頭の中では何度もシミュレーションしていたが、いざその液体を前にすると、翼の手は微かに震えていた。これは単なる食材ではない。再従妹の、まだ十五歳の少女の身体を溶かし込んだ汁なのだ。しかも片方は、彼女が性的な快感に溺れた痕跡までもが混ざっているかもしれない。鍋の縁に手をかけ、そっと湯気を嗅ぐ。一番出汁からは、ほんのりと石鹸の残り香と、かすかに甘い汗のような匂いが立ちのぼった。それは清潔な少女の肌を思わせる、嫌悪感とは無縁の香りだった。
だが、二番出汁に鼻を近づけた瞬間、翼の眉根がぴくりと動いた。一番出汁よりも明らかに複雑で、むせ返るような生々しさが混じっている。汗と湯の混ざった匂いの奥に、微かに酸味を帯びた、鼻腔の奥をくすぐるような動物臭――それはまさしく、女の興奮の匂いだった。翼はとっさに顔を離し、ごくりと唾を飲み込む。自分の心臓が、ラーメン屋の寸胴鍋よりも激しく沸騰しているのを感じた。
「……これが、ひまりの」
言葉は途中で途切れ、翼はエプロンのポケットから取り出したマスクを口元に当てた。衛生面というよりは、この背徳的な香りにこれ以上当てられまいとする自己防衛だった。彼は気を取り直し、二つの小鍋にそれぞれ一番出汁と二番出汁を等量ずつ移し替える。冷蔵庫からは、昨夜のうちに仕込んでおいた鶏ガラと野菜のベーススープを取り出した。このベーススープは、翼が脱サラしてラーメン屋を開く前から何年も研究を重ねてきた、いわば彼の人生の集大成とも言える味だ。それに、ひまりの入浴後の湯をブレンドする。その比率を間違えれば、すべてが台無しになる。いや、そもそもこんな行為が世間に知られたら、台無しどころの騒ぎではない。店は潰れ、彼は社会的に抹殺され、ひまりの人生にも消えない傷を残すだろう。
「……それでも、俺は」
翼は小さく呟き、計量カップを手に取った。ベーススープ三百ミリリットルに対し、一番出汁を五十ミリリットル。まずはこの比率で試してみる。透明な湯が濁ったスープに溶け込むと、表面に浮いていた鶏油がゆっくりと広がり、光の輪を作った。菜箸でそっとかき混ぜると、醤油ダレの香ばしさと出汁の甘やかな湯気が一緒になって立ちのぼる。その香りだけで、舌の奥がじんわりと唾液を分泌し始めるのを翼は自覚した。
二番出汁も、まったく同じ比率で混ぜ合わせる。こちらは鍋に注いだ瞬間から、一番出汁とは明らかに異なる粘度を感じさせた。とろり、としているのだ。表面張力が強いのか、スープの縁がほんのわずかに盛り上がる。菜箸で混ぜると、醤油ダレの香りを突き破って、むわっとした動物性の芳香がキッチンに充満した。それは決して不快な臭いではなく、むしろ食欲を狂暴に刺激する、原始的な匂いだった。翼はごくりと喉を鳴らし、自分の股間がじわじわと熱を持ち始めているのに気づいて、エプロンの下で膝を擦り合わせた。
「お待たせ、おじさん」
背後から声がして、翼は飛び上がりそうになった。振り返ると、ひまりが先ほどとは違う服に着替えて立っている。白い半袖のブラウスに、淡いピンクのショートパンツ。濡れた髪は一本の三つ編みにまとめられ、肩のあたりで小さく跳ねていた。彼女の太ももはまだ湯上がりのせいでほんのりと赤みを帯び、むっちりとした感触を想像させる。翼は慌てて視線を鍋に戻した。
「あ、ああ。こっちはちょうど、味見の準備ができたところだ。ひまり、悪いけど、ちょっと味を見てくれないか? 一番出汁と二番出汁、どっちもラーメンに仕立てた。まずはこっちの一番出汁のほうから」
翼は小ぶりの丼に麺を盛り、熱々のスープを注いだ。刻んだ青ネギと、薄切りのチャーシューを一枚だけトッピングする。白い湯気が細く立ちのぼり、醤油の香りが食欲をそそる一杯が、あっという間に完成した。ひまりはカウンター越しにその丼を受け取ると、両手で包み込むように持ち上げ、まずはその香りを確かめるように顔を近づけた。
「……わ、いい匂い。あたし、おじさんのラーメン、初めて食べるかも」
「そうか? 店のほうでは、まかないで食わせたことあったと思ったが」
「ううん、まだ。いつも手伝いのあとはすぐ帰ってたから」
ひまりはそう言うと、レンゲでそっとスープをすくい、唇をとがらせてふうふうと息を吹きかけた。そして、小さな口を開けて、ずず、と音を立てて啜る。その瞬間、彼女の大きな黒い瞳が、ぱっと見開かれた。
「……あっ、おいしい!」
ひまりの声は、さっきまでの恥じらいを一瞬で吹き飛ばすほど無邪気だった。彼女はもう一口、今度は麺を箸でつまみ上げ、勢いよく啜り込む。つゆが跳ねて、彼女の白いブラウスに小さな染みを作ったが、そんなことは気にも留めていないようだった。
「すごく、コクがあるっていうか、香りがふわーって鼻に抜けて……なんだろ、これ。すごく優しい味がする。あたし、お店で食べるラーメンって、もっと脂っこいイメージだったけど、おじさんのラーメンは、なんか、こう……おばあちゃんの味噌汁みたいにほっとする」
「おばあちゃんの味噌汁か。それは、まあ、狙いとはちょっと違うが……ありがとう」
翼は苦笑しながらも、内心では手応えを感じていた。一番出汁だけでも、これだけの味わいが出せる。ひまりの肌から溶け出した汗や皮脂が、スープに人間的なまろやかさと深みを与えているのだろう。動物の骨や野菜だけでは決して到達できない、生命の温もりのようなものが、この一杯には宿っている。
「じゃあ、次はこっちだ。これが、その……二番出汁のほうのラーメンだ」
翼が差し出した二杯目の丼は、見た目は先ほどとほとんど変わらない。同じチャーシュー、同じ青ネギ、同じ中太縮れ麺。しかし、スープから立ちのぼる湯気の質が、明らかに違っていた。ひまりは一瞬、その丼を受け取る手をためらわせた。彼女は自分が二番出汁の湯で何をしたかを、当然知っている。自分の指が這い回った場所、そして絶頂の瞬間に溢れ出た粘液が、このスープには溶け込んでいるのだ。
「……これが、二番出汁」
ひまりの声が、また少し掠れた。しかし今度は羞恥だけでなく、かすかな好奇心の色が混じっているのを翼は聞き逃さなかった。彼女は意を決したようにレンゲを手に取り、スープを一口すくって口元へ運んだ。そして、目を閉じたまま、ゆっくりとそれを啜る。
次の瞬間、ひまりの身体がびくんと震えた。彼女は目を閉じたまま、レンゲを置き、両手で丼を掴むと、今度は直接丼に口をつけて、ずずずっ、と音を立てて一気に三口ほど啜り込んだのだ。その勢いに、翼はぎょっとする。
「お、おい、ひまり? 大丈夫か?」
「……おじさん、これ、なに?」
ようやく顔を上げたひまりの目尻には、うっすらと涙が浮かんでいた。それは悲しみや苦しみの涙ではない。あまりの衝撃に、生理的な反応として溢れ出たものだった。彼女の唇はうっすらと開かれ、そこからは熱い吐息が漏れている。
「一番出汁と、全然ちがう……。さっきのより、十倍、いや、百倍おいしい。なんていうか、こう、喉の奥にずーっと味が残ってて、飲み込んだあとも、口の中がじゅわってしてる。それに、頭のてっぺんが、じんじんするみたいな……変な感じ」
ひまりはもう一度レンゲを手に取り、今度はスープだけをじっくりと味わうように啜った。その仕草は、さっきまでとは打って変わって、とてもゆっくりとした、官能的なものだった。まるで舌の上でスープを転がし、その一滴一滴の成分を解析しようとしているかのようだ。
「……あたしの、これが入ってるんだよね」
ひまりがぽつりと呟く。その声には、もはやためらいはなかった。
「なのに、なんでこんなにおいしいんだろう。恥ずかしいのに……すごく、ドキドキする。おじさんのラーメンが、あたしの……恥ずかしい汁で、こんなにすごい味になるなんて」
「ひまり、それは……」
「いいの、おじさん。あたし、ちゃんとわかってる。これが一番おいしいんだって。さっきお風呂で……その、してる時も思った。これがラーメンになったら、どんな味がするんだろうって。そしたら、こんなに……こんなに……」
翼は、自分の番だと覚悟を決めた。ひまりがここまで素直な反応を見せているのだ。作り手として、これを味わわずにいるわけにはいかない。彼は一番出汁のラーメンを一口啜り、その味を確認する。確かにうまい。自分のベーススープが、まるで別次元の味わいに昇華されている。優しい甘さとコクが、舌の上でふわりと広がり、後味は驚くほど澄んでいた。
そして、恐る恐る二番出汁のラーメンにレンゲを差し込んだ。
スープを口に含んだ瞬間、翼の背筋を電流のような衝撃が走り抜けた。うまい、などという言葉では到底追いつかない。これは彼が今まで経験したどんな味覚とも異なる、まったく新しい領域の味だった。鶏と醤油の風味を土台にしながらも、その上に重層的に積み上げられた、複雑で、淫靡で、それでいて抗いがたい吸引力を持つ何か。舌の上でとろりと広がったかと思うと、喉を通過する瞬間に、鼻腔へと突き抜ける麝香のような芳香。そして、飲み込んだ後も、唇や歯茎にねっとりとまとわりつき、いつまでも唾液の分泌を促し続ける余韻。
翼の頭の中で、あらゆる理屈が音を立てて崩れ落ちていった。一番出汁は、いわば「素材の第一抽出」だ。表面の汗や皮脂、ほこりなどが主に溶け出しているはずで、不純物も多い。だから一度捨てて、二番出汁で本来の旨味を抽出する。それは料理の鉄則だ。しかし、この味の違いは、そんな生易しい理屈では説明がつかない。一番出汁が「優等生的な美味さ」なら、二番出汁は「背徳的な旨さ」だった。一口啜るごとに、脳の奥深く、おそらく理性を司る部位がじわじわと麻痺していき、もっと、もっと、と本能が叫び始める。
それが、ひまりの、彼女の粘液の、味なのか。
翼は、エプロンの下で痛いほどに勃ち上がり始めた自身を自覚しながら、深く息を吐き出した。そして、カウンター越しにひまりの顔をまっすぐに見つめる。彼女もまた、潤んだ瞳で翼を見上げていた。二人の間には、言葉にできない共犯関係が、すでにどろりと横たわっている。
「……ひまり。俺は、二番出汁で勝負する」
翼の声は、自分でも驚くほど低く、そして決然と響いた。
「理由は、理屈じゃない。ただ、これは……これは、奇跡の味だ。お前が、その、……協力してくれたからこそ、生まれた味なんだ。だから俺は、これを信じる。一番出汁のメニューは、やめる。この二番出汁だけで、店の看板を張る」
ひまりのまつげが、ふるりと震えた。彼女はしばらく黙って自分の丼を見つめていたが、やがて、そこに最後の一滴まで残っていたスープを、レンゲできれいにすくい上げ、口に含んだ。そして、それをゆっくりと味わいながら飲み干すと、翼に向かって、静かに、しかしはっきりと、うなずいて見せた。
「……うん。おじさんがそれでいいなら、あたしも……それで、いい。あたしも、これが、一番おいしいと思うから」
その言葉には、すでに観念したような、あるいは開き直ったような響きがあった。彼女はもう、自分が湯船で何をしていたかを、恥じてはいなかった。むしろ、その行為こそが、この奇跡の味を生み出す必須の儀式なのだと、彼女の中で急速に認識が書き換わっているようだった。翼は、そんなひまりの変化を、興奮と、それと等量の恐怖を持って見つめていた。
「……来週も、これで頼む。できるか?」
翼の問いに、ひまりはまっすぐに視線を返した。その黒目がちの瞳の奥で、何かがきらりと光る。それは、幼い頃から翼が知っていた、無邪気で押しに弱いだけの少女の目では、決してなかった。
「うん。来週も……あたし、もっと、ちゃんとする。今日よりもっと、おいしくなるように……がんばるから」
翼はごくりと唾を飲み込み、丼を片付けるふりをして、彼女から顔を背けた。このラーメンは、もう彼だけのものではない。翼とひまり、二人だけの、甘美で背徳的な秘密の結晶だった。そしてそれは、彼がこれから世間に解き放とうとしている、禁断の味そのものだった。
第5章 汗と愛液のレシピ――体育の日も蒸れ下着も、オナニー出汁が一番と判明するまで
第5章: 汗と愛液のレシピ――体育の日も蒸れ下着も、オナニー出汁が一番と判明するまで
あの試食の日から、翼のアパートで過ごす月曜日は、まるで別次元に迷い込んだような空気をまとうようになった。翼は店の定休日を利用して、ひまりを午前十時に呼び出す。彼女はいつものホットパンツ姿でインターホンを鳴らし、少しだけ気まずそうに、それでいてどこか期待に瞳を潤ませながら、玄関のドアをくぐるのだ。
最初の数週は、翼もひまりも互いにぎこちなさを隠せなかった。浴室に湯を張る音がアパートに響き渡るたび、翼は台所で計量カップや温度計を並べながら、自分の鼓動がやけにうるさいのを自覚した。ひまりは浴室のドアを閉める前に、必ず一度だけ翼のほうを振り返り、唇をかすかに震わせてから、消えるようにバスルームへ消えていった。
だが、回を重ねるごとに、その儀式は奇妙な日常へと姿を変えていく。翼はひまりの入浴スケジュールに合わせ、彼女の学校生活のリズムまでも計算に入れるようになった。たとえば、彼女の時間割を尋ね、体育の授業がある日を狙って出汁取りを提案するようになったのだ。
「今度の月曜は、体育が五時間目にあるらしいな」
翼がそう切り出したのは、四回目の出汁取りを翌週に控えた金曜日のことだった。カウンター越しにラーメンを啜っていたひまりは、顔を上げてきょとんと瞬きをする。
「うん、そうだけど……なんでおじさん、そんなこと知ってるの?」
「さくらさんから聞いたんだ。お前の母さん、夜勤の前に電話してきてな。『ひまりが体育のあと、いつも汗だくで帰ってきて大変なのよ』って笑ってた」
翼はなるべく事務的に告げたが、その言葉の裏には、計算高い目論見がひそんでいる。汗だくのひまり――その肉体から滲み出る塩分や老廃物、そして若い肌の脂が、湯に溶け込んだらどうなるか。想像しただけで、舌の奥にじわりと唾液が湧くのを感じた。
月曜日、約束の時間にやってきたひまりは、学校の体操着姿のままだった。白い半袖シャツは背中や脇のあたりがうっすらと湿って肌に貼りつき、濃紺の短パンから伸びた太ももには、まだ運動の余韻を残すほのかな赤みが差している。首筋には細かな汗の粒が光り、三つ編みにした髪の毛先からは、むっとするような少女の体温が放たれていた。
「ごめん、おじさん。着替えるの忘れてきちゃって。汗くさいかも……」
ひまりは恥ずかしそうに肩をすくめ、自分の二の腕をさすった。翼はそんな彼女をまじまじと見つめながら、首を横に振る。
「いや、ちょうどいい。今日はそのまま、汗を流さずに湯船に入ってくれ。体を洗わずに、そのままざぶんと浸かってほしい」
「え……汗、すごいよ? 体操着もびしょびしょだし。それに、ほら、ここなんか、もうぐっしょりで」
ひまりは両腕を持ち上げ、シャツの脇の下の染みを見せつける。白い布地が汗で透け、かすかに肌色を覗かせている箇所さえあった。翼はごくりと唾を飲み込み、エプロンのポケットに手を突っ込んで、痛み始めた股間の膨らみを隠す。
「それでいいんだ。お前の汗が、スープに深みを出すんだよ。頼む、ひまり」
翼の真剣な眼差しに、ひまりはしばらく迷っていたが、やがてこくりと小さくうなずいた。彼女は翼の差し出したバスタオルを受け取ると、体操着のまま浴室へ消えていく。翼は台所で二つの鍋を準備しながら、壁越しに聞こえる衣擦れの音に全神経を集中させた。
やがて、どぼん、と湯船に身体を沈める音が響く。翼は、最初の出汁取りのときと同じく、浴室の前に立った。
「ひまり、やっぱり一番出汁からいくぞ。まずは三十分、じっくり浸かってくれ」
「う、うん……。なんか、服が体にまとわりついて、変な感じ。湯が、どんどん濁ってくみたい……恥ずかしいよぉ」
ひまりの声は、湿気を帯びた浴室の壁に吸い込まれるようにくぐもっている。翼はドアの前に膝立ちになり、温度計を確認するふりをしながら、自分のズボンの前が張り詰めていくのを感じていた。
その後も、翼は様々なシチュエーションを試した。雨の日にずぶ濡れでやってきたひまりには、濡れた制服のまま浴槽に浸かるよう頼んだ。真夏の炎天下を歩いてきた日は、額に汗の玉を浮かべた彼女をそのまま浴室へ導いた。そして最も効果を感じたのは、彼女が「今日、体育でマラソンがあった」と息を弾ませて現れたときだった。翼が「一番出汁は服を着たままで」と指示すると、ひまりはもじもじと太ももを擦り合わせながら、消え入りそうな声で「じゃあ、二番出汁のときは、全裸で……でしょ?」と確認してきたのだ。その瞬間、翼は彼女がもはや抵抗する段階を超え、この秘密の儀式を自らの一部として受け入れつつあることを確信した。
だが、どんな状況で採取しても、二番出汁が一番出汁を圧倒的に凌駕する事実は揺るがなかった。体育のあとの一番出汁は、確かに汗のミネラル分がスープに独特のキレを与えた。蒸れた下着をつけたままの入浴では、スープにむせ返るようなフェロモン臭が加わり、客の食欲を狂暴に刺激した。しかし、それでもなお、ひまりが全裸で浸かり、そして湯の中で自らを慰めた二番出汁の味わいだけは、別格だったのだ。
六回目の出汁取りが終わった日のことだ。翼はいつものように二つの鍋を並べ、それぞれから小分けしたスープでラーメンを仕立てていた。ひまりは湯上がりの髪をタオルで包み、カウンターの向こうで大人しく座っている。今日は蒸し暑い日だったから、彼女の肌はまだしっとりと湿り、湯上がり特有の甘い匂いを放っていた。翼はまず一番出汁のラーメンを啜り、その味を舌の上で転がす。
「うん、今日も悪くない。汗の塩気がスープの輪郭をくっきりさせてる。これだけでも十分、客は満足するだろう」
次に、二番出汁のラーメンに箸をつける。麺を啜り上げた瞬間、翼の喉の奥がぎゅうっと収縮し、背筋を電撃のような快感が走り抜けた。何度味わっても慣れない、いや、慣れてはいけない味だった。一口ごとに脳が灼け、股間が熱く疼く。スープの一滴一滴が、舌の上でとろけるようなまろやかさを持ちながら、喉を通過するときにはかすかな酸味と獣臭を残す。それは明らかに、ひまりが湯船の中で絶頂に達した証拠の味だ。
翼は丼を置き、深く息を吐いた。そして、カウンター越しにひまりをまっすぐ見つめる。彼女は翼の視線に気づき、タオルの下で肩をびくっと震わせた。
「ひまり、俺はどうしても知らなきゃいけないことがある」
翼の声は、自分でも驚くほど低く、真剣味を帯びていた。ひまりは大きな黒い瞳をさらに見開き、小さく息をのむ。
「なあに、おじさん。急に、こわい顔して……」
「一番出汁と二番出汁の差だ。最初は、全裸と下着の差だと思ってた。汗の量とか、皮脂の溶け出し方とか、そういう理屈だってな。でも、違うんだ。汗だくの体操着で浸かった一番出汁より、全裸で浸かっただけの二番出汁のほうが、なぜか何倍も美味くなる。これはもう、理屈じゃ説明できない差だ。お前は、二番出汁のときに、湯船の中で何か特別なことをしているんじゃないのか?」
翼がそう言った瞬間、ひまりの頬がぼっと音を立てるかのように真っ赤に染まった。彼女はタオルをぎゅっと握りしめ、うつむいてしまう。露わになったうなじも、耳たぶも、すべてが朱に染まっていくのが翼には見て取れた。
「……ちがうの、あの、その」
彼女の声は蚊の鳴くようにか細く、翼の耳に届くまでに何度も途切れた。
「ひまり、正直に話してほしい。これは、店のためにどうしても必要なことなんだ。お前が何か、自分でも気づかないうちにやっていることがあるなら、それを俺はレシピに組み込みたい。でなければ、この奇跡の味を再現し続けることはできない」
翼は努めて冷静に、しかし有無を言わせぬ口調で畳みかけた。ひまりはしばらく黙り込んでいたが、やがて観念したように顔を上げる。その瞳は潤み、まつげの先には涙の粒が輝いていた。
「……言うね。でも、怒らないで。引かないでね、おじさん」
「ああ、約束する。何があっても、俺はお前のことを認めてる。お前は俺の、最高の相棒だ」
翼の言葉に、ひまりはくしゃりと顔を歪め、それから一気にまくしたてた。
「あたしね、二番出汁のとき……全裸でお湯に浸かってると、いつも、すごく……その、体が、あつくなっちゃって。それで、おじさんが隣の部屋で待ってるって思うだけで、もっともっと、胸がどきどきして。そしたら、どうしても、その……自分の、あそこを、さわっちゃうの。最初は、ちょっとだけのつもりだったんだよ? でも、気がつくと、もう指が勝手に動いてて……それで、その、お湯の中で、いっちゃうの。あたし、毎回、クリトリスをくりくりしながら、おじさんの作るラーメンのこと考えて、ぜったい、美味しくなれって念じて、それで、いっぱい、あそこから汁が出て、それがあたしの太ももを伝って、お湯に溶けてくのを感じるたびに、もっともっと気持ちよくなっちゃって……!」
そこまで言い切ると、ひまりは両手で顔を覆い、かああっと声にならない嗚咽を漏らした。肩が小刻みに震え、バスタオルがはらりと床に落ちる。露わになった彼女の白いブラウス姿は、あまりにも無防備で、そして痛々しいほどに扇情的だった。
翼は、一瞬息をするのを忘れた。心臓が肋骨を突き破るのではないかと思うほど激しく鼓動し、ズボンの前は痛いほどに張り詰めている。彼はゆっくりとカウンターを回り込み、ひまりのすぐ隣に立った。そして、そっと彼女の頭に手を置く。
「……そうか。やっぱり、そうだったんだな」
翼の声はかすれ、まるで他人のもののように遠く聞こえた。
「つまり、二番出汁が特別に美味いのは、お前がオナニーした汁が入ってるからなんだ。お前の愛液が、このスープを奇跡の味に変えてるんだ」
ひまりは手のひらの下で、こくりと小さくうなずく。指の隙間からは、熱い涙がぽたぽたとこぼれ落ちていた。
「ごめん、なさい……。あたし、こんな汚いことしてるのに、美味しいって言われるたびに、すごく嬉しくて。体育のあとも、雨の日も、いつも、お風呂に入るたびに、あそこがじゅんって濡れて、はやく、さわりたいって、そればっかり考えちゃって……」
「謝らなくていい」
翼はひまりの頭を撫でながら、静かに言い聞かせた。
「むしろ、ありがとうと言いたい。お前がそんな恥ずかしい思いをしてまで、最高の出汁を取ってくれてたんだな。俺は、お前のその……気持ちよくなる汁こそが、このラーメンの真髄だって、今日、はっきりわかったよ」
ひまりはそろそろと顔を上げ、涙に濡れた瞳で翼を見上げる。その表情には、まだ恥じらいの色が濃く残っているが、その奥に、かすかな安堵と、そして確かな誇りの光が宿り始めているのを翼は見逃さなかった。
「……おじさんは、嫌いにならない? あたしのこと、変態だって、思わない?」
「思うわけがない」
翼は腰をかがめ、ひまりと視線の高さを合わせた。彼の股間は依然として熱く脈打っていたが、それ以上に、今はこの少女の心の揺らぎを受け止めなければという使命感が勝った。
「お前は変態なんかじゃない。この秘密は、誰にも言えないけど、だからこそ俺たちだけの、特別なものなんだ。お前のそういう……感じやすいところも、全部ひっくるめて、俺はお前を最高のパートナーだと思ってる」
ひまりはしばらく翼の顔をじっと見つめていたが、やがて涙でぐしゃぐしゃになった顔のまま、ふにゃりと笑った。それは彼女がときどき見せる、無邪気で、押しに弱い、昔ながらの笑顔だった。
「ありがと、おじさん。じゃあ……あたし、これからは、もっと正直になる。湯船でオナニーするの、おじさんのためだって、ちゃんと言える。恥ずかしいけど……おじさんが喜んでくれるなら、あたし、もっといっぱい気持ちよくなって、すごい汁を作るね」
その言葉を聞いた瞬間、翼の中で何かが音を立てて切り替わった。彼は立ち上がり、キッチンの鍋を見やる。二番出汁の液体は、蛍光灯の光を受けてぬらぬらと輝き、これから開かれるであろう新たな儀式の予感に満ちていた。翼は自分の股間の熱を持て余しながら、かすかな震えを帯びた声で、ひまりに告げた。
「じゃあ、決まりだな。来週からは、もっと突き詰めるぞ。その、どうすればお前が一番気持ちよくなれるか、俺も考える。お前のその……露出願望とやらも、遠慮なく活かしてくれ。見られるほうが余計に感じるんだったら、それをスープにしない手はない」
「うん……。おじさんに見られながらオナニーするの、想像しただけで、もう、あそこが、きゅんってなった。来週、たのしみにしてる」
ひまりはぶらりと揺れる三つ編みを指に絡めながら、うっとりとそうつぶやいた。翼は彼女のあまりに無邪気な宣言に、エプロンの下で屹立したペニスがずきりと痛むのを感じながらも、なんとか平静を装ってうなずいた。こうして彼らは、単なる出汁取りというフェーズを終え、互いの性癖を公然とレシピに組み込む新たな段階へ、音もなく足を踏み入れたのだった。
第6章 見られる悦び――おじさんの視線の前で、私はもっと濡れてしまう
第6章: 見られる悦び――おじさんの視線の前で、私はもっと濡れてしまう
約束の月曜日が、翼の胸の奥に重たく澱む罪悪感と、それと等量の期待を連れてやってきた。午前十時、アパートのインターホンが鳴る音は、いつもより幾分か遠慮がちで、それでいて鈴の芯を震わせるような甘さを帯びている。翼は台所で鍋を磨く手を止め、エプロンで濡れた指を拭いながら玄関へ向かった。ドアを開けると、ひまりは濃紺の膝丈スカートに白いカーディガンという、普段よりもずっと“よそ行き”の装いで立っており、そのあまりに可愛らしい雰囲気の変わりように、翼は一瞬言葉を失った。
「今日は、制服じゃないんだな」
翼がそう声をかけると、ひまりはもじもじと自分のスカートの裾をつまみ、伏し目がちに答えた。
「……だって、今日は、いつもと違うことするんだよね。おじさんの前で……その、するなら、少しはちゃんとした服で来ようかなって」
彼女の最後の言葉はほとんど息だけで、翼の耳に届く前に蒸発してしまいそうなか細さだった。翼は無言でうなずき、彼女を部屋の中へ招き入れる。アパートの古びたフローリングは、今日も変わらず二人分の体重をぎしりと受け止め、台所のほうからはすでに張られた湯の、かすかな塩素の匂いが漂っていた。ひまりはいつものようにカウンターの前に立つのだが、今日はなぜか腰を落ち着けることができず、両手を前で組んだり、後ろに回したりと落ち着きがない。彼女の白いカーディガンの胸元が、浅い呼吸に合わせてふくらんではしぼみ、その度にTシャツの下の控えめな膨らみが布地をほんのわずかに押し上げているのを、翼は視線の端でとらえた。
翼は覚悟を決めるように、小さく息を吐いた。そして、カウンターを回り込まず、あえて距離を保ったまま、ひまりに言った。
「今日は、いつもの出汁取りとは少しやり方を変える。お前もわかってると思うが……俺は、その場で、お前のことを見させてもらいたい。浴室のドアは開けたままで、お前が湯に浸かって……自分を慰めるのを、ちゃんとこの目で確かめたいんだ」
ひまりの肩が、びくりとはね上がった。まつげをふるふると震わせ、唇をかすかに開くが、声はすぐには出てこない。彼女の頬が、ぼうっと火を灯したように朱に染まり、それが耳たぶやうなじへとじわじわと広がっていくのを、翼はただ黙って見つめていた。台所の蛍光灯の光が、彼女の黒く真っ直ぐな長い髪の表面を、水の流れのように滑っていた。
「……本当に、おじさん、見てるの? あたしが、その……触ってるところも、ぜんぶ?」
ひまりがようやく絞り出した声は、驚くほど澄んでいて、それでいて小さく震えていた。翼は彼女から目をそらさず、静かにうなずく。
「ああ、全部見る。それが、俺の覚悟だ。お前の恥ずかしいところも、気持ちよくなるところも、全部引き受ける。じゃないと、あの奇跡の味を二度と再現できない気がするんだ。俺は……もう、逃げない」
翼の言葉に、ひまりは長いまつげを伏せ、自分の足元を見つめた。フローリングの木目が、歪んだ波のように彼女の視界に映っているのかもしれない。彼女の胸の内では、押し寄せる羞恥と、それと同じだけの倒錯した好奇心が、とぐろを巻いて渦巻いていた。先週、翼に「見られるほうが余計に感じる」と自分の口で言ってしまった瞬間から、すでにこの瞬間を夢想しては、深夜のベッドの中で太ももをきゅっと閉じて身悶えしていたのだ。
「……うん。じゃあ……あたし、服、脱ぐから。おじさん、やっぱり、入り口のとこに座ってて」
ようやくひまりが顔を上げ、翼をまっすぐに見つめ返す。その大きな瞳の奥は、もはや戸惑いだけではなく、かすかな挑戦めいた光さえ宿していた。彼女は浴室へと向かうが、その歩みはひどくゆっくりで、スカートの裾がふわりと揺れるたびに、少女の白いふくらはぎが覗いた。翼は言われた通り、脱衣所との境にある引き戸を全開にし、そこに風呂用の小さな椅子を持ってきて腰を下ろす。浴室の白い壁、銀色の蛇口、そしてすでに湯気を立てて満たされた浴槽が、彼の眼前に広がっていた。
ひまりは脱衣所でカーディガンを脱ぎ、白いTシャツの裴を両手でつかんだ。彼女が一旦、翼のほうを振り返る。視線が交錯した瞬間、彼女の唇が恥じらいに歪み、それでもはっきりと、彼女は服を一気に脱ぎ去った。Tシャツが髪を乱し、スカートが足元に落ちる。ブラウスのホックを外す指先はかすかに震えていたが、それでも迷いはなかった。やがて、淡い水色のブラジャーとショーツだけの姿になったひまりは、両腕で自分の胸元をかばうようにしながら、翼の前を横切り、浴室へと入っていった。蛍光灯の無機質な光が、彼女の背中の曲線や、ショーツからはみ出しそうなほどむっちりとした太ももの付け根を、容赦なく照らし出す。
「おじさん……あんまり、じろじろ見ないで。まだ、始まってないんだから」
浴室からひまりの声が、壁に反響して少しこもって聞こえる。翼は慌てて視線を浴槽の水面へと移した。
「わ、わかってる。俺はここで、静かにしてる。お前のペースで、いいから」
翼の声は自分でも驚くほどかすれていた。ひまりは浴室の床に立ち、一瞬ためらってから、背中に手を回してブラジャーのホックを外す。するりと落ちた布地が、彼女の小さな胸元を露わにし、まだ幼さの残る淡い桜色の乳首が、浴室の湿気を含んだ空気に触れて、きゅっと硬くしぼんだ。彼女は続けてショーツにも手をかけ、腰をかがめるようにしてそれを脱ぎ去る。太ももを伝って落ちた布地の内側には、すでに蒸れた湿り気が帯びており、かすかに酸っぱいような少女の体臭が、翼の鼻腔の奥をくすぐった。
完全に裸になったひまりは、もはや翼の視線から逃れようもなく、その白くて小柄な身体をさらしていた。まだ完全に成熟しきっていない腰の細さ、しかし太ももだけは驚くほど豊かに張り出していて、その付け根のあいだ、黒くて柔らかそうな陰毛がうっすらと生え揃った秘部が、彼女が動くたびにちらりと姿をのぞかせる。翼はごくりと唾を飲み込み、自分の股間で痛いほどに脈打つペニスを、エプロンの下でそっと押さえつけた。
ひまりは浴槽の縁に手をかけ、ゆっくりと湯の中へ身を沈めていく。じゃぶん、と湯が音を立て、彼女の白い肌が一瞬でほんのりと桃色に染まった。湯温は翼が慎重に調整した、ほんの少し熱めの四十二度。それが彼女の全身の産毛をふわりと逆立て、毛穴という毛穴を開かせていく。ひまりは浴槽の壁にもたれかかり、両膝をほんの少しだけ立てて、翼のいる入り口のほうへ顔を向けた。その頬はすでに真っ赤で、湯気に潤んだ瞳が、うるうると翼を見つめている。
「……おじさん。あたし、もう、なんか……すごく、変。体のなかが、きゅうきゅうしてて、はやく触りたいのに、おじさんが見てると思うと、怖くて……でも、怖いほうが、なんか、もっと、したくなっちゃう」
彼女の声は、浴室という閉じた空間で、ひどく官能的に響いた。翼は椅子の上で姿勢を正し、努めて冷静に、しかし有無を言わさぬ口調で言った。
「怖がらなくていい。俺はただ、ここで見ているだけだ。お前が、どうやって自分を気持ちよくするのか、それを知りたい。それが、俺たちのレシピの核心なんだ。だから……ゆっくりでいい。始めてくれ、ひまり」
翼の言葉にうながされるように、ひまりは、そろそろと右手を持ち上げ、湯の表面を何度か撫でた。ぴちゃぴちゃという小さな水音が、静かな浴室にやけに大きく響く。彼女は意を決したように、その手を自分の胸元へと滑らせた。まだ小ぶりな乳房の膨らみを、そっと下からすくい上げると、手のひら全体を使ってゆっくりと揉みしだく。白い肌のあいだで、桜色の乳首が指の隙間から覗き、彼女自身の指がそれを掠めるたびに、ひまりの口からは、息だけでできたような微かな喘ぎが漏れた。
「ん……っ、ふぅ……あたしの胸、小さいのに、こうやって触ると、なんか、じんってするの。乳首のとこなんか、とくに……」
ひまりは自分の言葉にさらに羞恥を煽られたのか、ぎゅっと目を閉じ、それでも手は止めずに、今度は両方の乳首を親指と人差し指でつまみ始めた。くりくりと転がすたびに、彼女の背筋に小さな震えが走り、湯の表面にさざ波が立つ。翼はその光景を、固唾をのんで見守った。彼女の指が白い肌の上で動くたびに、湯気がゆらゆらと揺れ、少女の甘い体臭がむせ返るように漂ってくる。
やがてひまりの右手は、するすると湯の中を下っていき、太ももの内側を這いながら、ゆっくりとその中心へと近づいていった。彼女は、閉じた太もものあいだに手を差し込み、指先で秘部をなぞる。湯の中から、くちゅり、という粘液の混ざった湿った音が、わずかに聞こえたような気がした。
「はあ……、もう、とっくにぬるぬるしてる。おじさんに見られるって思っただけで、ここが、こんなに……」
ひまりはうわごとのようにつぶやくと、ゆっくりと両膝を外側に開いていった。湯の抵抗を受けながらも、彼女の太ももが開かれ、そのあいだに沈んだ彼女の指が、ついに陰唇を割り開くのが、翼には見えた。湯の中で揺らめく黒い陰毛の茂み、その奥にある、つやつやと輝く小陰唇の桃色の襞(ひだ)が、ひまりの震える指によってくぱあ、と開かれる。翼は思わず息を呑み、椅子の縁をぎゅっと握りしめた。
「おじさん、見てる……? ここ、あたしの、一番恥ずかしいところ。もう、お汁いっぱいで、お湯の中なのに、ここだけ、もっとぬるぬるしてるの……触ると、あつくて、ひくひくしてる」
ひまりは泣き出しそうな、しかしどこか陶酔した声でそう言うと、開いた陰唇の上部、包皮から頭をのぞかせている小さな陰核に、指の腹を押し当てた。その瞬間、彼女の全身がびくんと大きく跳ね、浴槽の湯がざぶんと揺れて床に飛び散る。
「ひゃうっ……! んん……っ、クリ、触っちゃった。おじさんに見られながら、クリトリス、触っちゃったよぉ……」
彼女の指はもう止まらなかった。人差し指と中指の腹で、硬く充血した陰核をくりくりと円を描くように弄り始める。くちゅくちゅ、という粘液と湯が混ざり合う卑猥な音が、浴室の壁に反響し、翼の耳の奥へとねっとりとこびりつく。ひまりはもう、翼がそこにいることも忘れてしまったかのように、ひたすら自分の快楽に没頭し始めていた。彼女の口からは、さっきまでの遠慮がちな吐息ではなく、はっきりとした甘い喘ぎ声が漏れ続けている。
「んあっ……! あ、あ、気持ちいい……すごい、いつもより、何倍もいい。おじさんに見られてると思うだけで、陰核が、じんじんって、どんどん固くなってくの……! 見て、見て、翼おじさん……あたし、ここ、こんなにしちゃってる……」
彼女は空いた左手で自分の小陰唇をさらに左右に押し広げ、翼の視線にすべてをさらけ出した。割れ目の奥、ひくひくと痙攣する膣口が、とろりと白濁した愛液を溢れさせている。その液体が湯に溶ける前に、糸を引いて彼女の太ももを伝い落ちるのを、翼はしかと目に焼き付けた。彼の股間はもはや限界まで膨張し、先走りの汁で下着がぐっしょりと濡れていたが、そんなことはどうでもよかった。ただ、この奇跡のように淫らで、美しい少女の自慰を、一秒たりとも見逃したくなかった。
ひまりは、ついに中指を、ぬぷり、と自分の膣口に沈めた。狭い少女の膣壁が、侵入してきた指をきゅうきゅうと締め付け、同時に溢れ出る愛液が、指の根元までをぬらぬらと濡らしていく。彼女はその指をゆっくりと出し入れしながら、もう一方の手で陰核への刺激を加速させた。ぐちゅっ、ぬちゃっ、ぐちゅぐちゅ……水音と粘液音が混ざり合い、浴室全体が、彼女の分泌する淫液の匂いで満たされていく。
「あ、あ、ああ……っ、もう、くる、きちゃう……! おじさん、見てて、あたし、おじさんの前でイくの、初めてなの……! み、見て、見て、見て……っ!」
ひまりの声が裏返り、全身が弓なりにしなる。彼女は膣から指を引き抜くと、その濡れた指で陰核を素早く、執拗に擦り上げ始めた。ぐちゅぐちゅぐちゅっ、という必死な水音が浴室に響き渡る。翼は椅子から腰を浮かせ、まるで祈るように両手を組み合わせて、彼女の絶頂の瞬間を見守った。
「ひうぅ……っ! あ、は、ぁ……イ、く、イっちゃう、イっちゃうよぉぉ……んっ!」
ひまりの身体が、一際大きく跳ね上がった。彼女の背中が浴槽の縁にぶつかり、どぼん、と大量の湯が床へ溢れ出る。彼女のつま先がピンと伸び、太ももが小刻みに震え、膣口がまるで何かを貪るように、くぱくぱと収縮を繰り返しているのが見えた。その間から、とろりとした白濁の愛液が新たに湧き出し、それが湯の表面に雲のように広がっては、ゆっくりと溶けていく。ひまりはしばらくの間、脱力して浴槽の壁にもたれかかり、はあはあと荒い息を繰り返していた。その頬は涙に濡れ、口元には、すべてを許したような、とろけるような微笑みが浮かんでいる。
翼は、そこでようやく深く息を吐き出した。自分がどれだけの間、息を止めていたのかもわからない。彼は震える足で立ち上がり、浴室の入り口に立ったまま、静かに言った。
「……素晴らしかった。ひまり、これだ。これこそが、俺がずっと求めていた、最高の出汁の源だ。今のお前の、その……すべてが溶け込んだこの湯が、明日からの翼屋の、新しい看板メニューになる。俺は、ちゃんとこの目で見届けた。お前の、恥ずかしいけど、誰よりも美しい、その儀式を」
ひまりは、潤んだ瞳をゆっくりと翼に向けた。その表情には、もはや先ほどまでの強い羞恥はなく、代わりに、満たされた充足感と、新たな秘密を共有した共犯者の親密さが浮かんでいた。
「……おじさん。あたし、嬉しい。こんなに気持ちよくて、そのうえ、お店の役にも立てるなんて。あたし、もっともっと、上手になりたい。おじさんの前で、もっと、すごいの……見せてあげたい」
翼は静かにうなずき、跳ねた湯で濡れた浴室の床に、自分の作ったラーメンがもたらす未来の光景を幻視していた。それはもう、単なる味の追求ではない。ここには、少女の秘められた性の悦びと、男の倒錯した商売とが、湯の中で一つに溶け合った、誰にも侵せない禁忌の聖域が生まれていた。浴室の湯気の中で、ひまりの愛液の香りが、まるで麝香のように濃密に立ち込め、彼らだけの密やかな共犯関係を、より深く、より甘美に彩っていくのだった。
第7章 行列のできる秘密のラーメン――美少女出汁のスープに群がる男たち
第7章: 行列のできる秘密のラーメン――美少女出汁のスープに群がる男たち
あの背徳的な月曜日から数週間と経たぬうちに、鴨川翼のラーメン屋「翼屋」はまるで別の生き物のように変貌を遂げていた。看板メニューとして打ち出した「美少女が丁寧に取った出汁の芳醇醤油ラーメン」――その謳い文句だけでも十分に男たちの好奇心を煽ったが、ひとたび丼を口にした者の反応は、もはや食欲の枠を遙かに超えていた。
昼の開店三十分前には、もう店の前に人影がちらほらと集まり始める。やがて彼らは無言のまま一列に並び、スマートフォンを弄りながら、その瞬間を今か今かと待ち侘びているのだ。耳を澄ませば、行列のあちこちから、こんな囁きが聞こえてくる。
「先週、初めて食ったんだけどさ、あれ、なんなんだろうな。スープの後味がもう、ずっと舌に絡みついて離れないんだよ」
「わかる。俺も二回目。家に帰ってからも、口の中にあのコクが残ってて、無性にまた啜りたくなるんだよなあ」
翼はそんな声を、暖簾をくぐる客たちの隙間から聞くたびに、エプロンの下で冷や汗をかいた。厨房で寸胴鍋をかき混ぜながら、目の前の湯気の向こうに、先週の月曜日、ひまりが浴槽で見せた痴態がありありと蘇る。湯気に濡れた彼女の白い肢体、秘部を割り開く震える指、絶頂の瞬間に溢れ出た白濁の愛液。あのすべてが溶け込んだ液体が、いま自分の手によって寸胴鍋の中でぐつぐつと煮え、やがて客たちの舌の上でとろけるのだと思うと、翼の股間は痛いほどに熱を帯び、同時に胃の底が冷たく縮み上がるのを感じた。
「おじさん、また並んでるよ! すごいね、今日も二十人以上はいるんじゃない?」
昼下がりの一番忙しい時間帯、学校帰りのひまりがホットパンツ姿で厨房の裏口から顔をのぞかせた。彼女の声はあいかわらず無邪気で、その弾んだ口調に翼は複雑な安堵を覚える。彼女は何も変わっていない――表面上は。だが、その大きな黒い瞳の奥に、以前にはなかったかすかな自信のような光が宿っているのを、翼は見逃さなかった。
「おう、ひまり。悪いが、今日も手伝ってくれるか。ホールの配膳と片付け、頼めるか?」
「もちろんだよ! あたし、お店がこんなに流行ってるのを見るの、すごく嬉しいんだから」
ひまりはそう言って、手慣れた様子でエプロンを身につけると、カウンターの向こうに立つ客たちのあいだを、ひらひらと蝶のように動き回り始めた。彼女の太ももがホットパンツからむっちりとこぼれそうになり、Tシャツの下の控えめな胸のふくらみが動くたびに小さく揺れる。男たちの視線が、一瞬、丼から彼女の身体へと移るのを、翼は厨房から苦々しく見守った。
だが、それ以上に客たちの目を釘付けにしているのは、紛れもなくラーメンそのものだった。ある中年のサラリーマンは、スープを一口啜った瞬間、まるで電気に打たれたかのように背筋を伸ばし、その後は無言のまま、丼に顔を埋めるようにして麺を啜り続けた。またある若いカップルの男のほうは、連れの女が話しかけるのも構わず、汁の最後の一滴までレンゲですくい上げ、飲み干したあと、深いため息をついて天井を仰いだ。
「なあ、お兄さん」
閉店間際、最後の客が帰ったあと、カウンターの隅で一人、最後の一杯を味わっていた初老の男が、翼に声をかけてきた。その男は、もう三十分も前からスープだけをちびちびと舐めるように味わっており、その執着ぶりに翼は薄気味悪ささえ感じていた。
「このラーメン、ただもんじゃないな。わしは若い頃からラーメンばっかり食ってきたが、こんなに頭の芯がじんじん痺れるような味は初めてだ。なにか、特別な出汁を使ってるんだろう? 男を骨抜きにするような、こう……淫靡な味がする」
翼の心臓が、一瞬、止まったかと思うほど跳ね上がった。彼は必死に平静を装い、エプロンで額の汗を拭う。
「そ、それはどうも。企業秘密なんで、詳しくは言えませんが……まあ、いい材料を使ってるってことですよ」
「ふふ、そうか。まあいいさ。とにかく、また来るよ。この味を知っちまったら、もう普通のラーメンじゃ物足りなくてな」
男はそう言い残し、しわがれた笑い声をあげながら店を出ていった。翼はその後ろ姿を見送りながら、厨房の片隅に置かれた冷蔵庫に視線をやる。その中には、明日の仕込み用にとってある、ひまりの二番出汁がタッパーに小分けされて保存されている。あの液体が、こんなにも多くの男たちを狂わせている。その事実に、彼の背筋は冷たく粟立った。
「おじさん、さっきの人、すごく喜んでたね」
背後から声がして、翼は再び心臓を鷲掴みにされた気分になった。振り返ると、ひまりがエプロンを外しながら、うっとりとした表情で立っている。彼女の頬は、湯気と忙しさでほんのりと上気し、瞳は潤んで輝いていた。
「……ああ。というか、ひまり、聞いてたのか」
「うん、少しだけ。あの人が『特別な出汁』って言ってたの、聞こえちゃった。あたしの、あれが入ってるって、誰も知らないのにね」
ひまりは声を潜め、いたずらっぽく微笑んだ。その表情に、翼はかすかな戦慄を覚える。ついこの前まで、あんなに恥ずかしがって泣き出しそうになっていた少女が、今ではまるで自分たちの秘密を楽しんでいるかのようだ。
「ひまり、あんまりそういうこと、大きい声で言うな。誰がどこで聞いてるか、わからん」
「大丈夫だよ、おじさん。誰もいないもん。それに、あたし……嬉しいんだ。あの人たち、みんな、あたしの汁が入ったラーメンを、こんなにおいしいおいしいって食べてくれてる。恥ずかしいけど、すごく……誇らしいような気持ちになるの」
翼は言葉を失った。彼女のその歪んだ誇りは、まさに翼自身が蒔いた種から芽生えたものだった。商売のために少女の羞恥と性癖を利用し、その結果、彼女は自分の痴態が他人を喜ばせることに充足感を覚え始めている。これはもう、単なる出汁取りの協力関係ではない。もっと深い、泥沼のような共犯関係が、二人のあいだに澱のように堆積しつつあった。
「……ひまり、お前はそれで、ほんとにいいのか? 俺は、お前に無理をさせてるんじゃないかと、毎日……胃が痛い思いでいるんだ」
翼はうつむき、絞り出すように言った。すると、ひまりは小さく首を振り、カウンター越しに翼の手にそっと自分の手を重ねる。その指先は、まだあの湯の温もりを残しているかのように、ほのかに熱かった。
「無理なんかじゃないよ。あたしが好きでやってることだもん。おじさんは、あたしの恥ずかしいところを、全部、認めてくれた。それって、あたしにとっては、すごく……大切なことなんだ。だから、これからもずっと、あたし、おじさんのために、もっと美味しいお汁を作るよ。今日の月曜も、楽しみにしてるんだから」
翼は顔を上げ、ひまりの潤んだ瞳をまっすぐに見つめた。その瞳の奥には、もはやためらいの色は微塵もなく、ただ純粋な信頼と、かすかな挑戦めいた光だけが揺らめいている。彼は、もう後戻りできないことを、その瞬間、痛いほどに思い知った。いや、後戻りするつもりも、最初からなかったのかもしれない。明日も、明後日も、この店には行列ができる。そして来週の月曜日、彼はまたあのアパートの浴室で、ひまりの痴態を見つめながら、禁断の出汁を手に入れるのだ。
「……ああ、わかった。じゃあ、来週も、頼む。くれぐれも、秘密は守ってくれよ。これは俺たちだけの、誰にも言えない……そうだな、儀式なんだ」
翼は、ひまりの手をぎゅっと握り返しながら、かすれた声でそう答えた。店の窓の外では、とっぷりと暮れた夜の闇が、すべての罪を覆い隠すかのように、静かに広がっていた。厨房にはまだ、寸胴鍋から立ちのぼる湯気がかすかに漂い、その中に、微かに甘酸っぱい、少女の淫臭が混ざっているような錯覚を、翼は振り払うことができなかった。店は奇跡的な成功を収め、しかしその成功の一滴一滴が、二人をより深い秘密の淵へと誘い込んでいくのだった。
第8章 秘密の月曜日――おじさんと私だけが知る、甘く背徳的なスープの味
第8章: 秘密の月曜日――おじさんと私だけが知る、甘く背徳的なスープの味
春の気配がかすかに漂い始めた三月最初の月曜日、鴨川翼のアパートの窓辺には、まだ冷たさの残る朝日が差し込んでいた。台所ではすでに寸胴鍋がこぽこぽと湯気を立て、浴室からは塩素の匂いがほのかに流れてくる。翼はエプロンの紐をきつく締め直しながら、壁にかかったカレンダーに目をやった。丸で囲まれた月曜日の日付が、もう数えきれないほど連なっている。
今日で何度目の出汁取りになるだろうか。あの蒸し暑い夏の日に、土下座してひまりに懇願してから、季節は秋を通り越し、冬を越え、また新しい春を迎えようとしている。店の行列は途切れることなく続き、口コミは隣県にまで広がっていた。そして今朝も、翼はこうして浴室に湯を張り、ひまりの到着を待っているのだ。
インターホンが鳴ったのは、約束の十時きっかりだった。
翼が玄関を開けると、ひまりは淡いグレーの薄手コートを羽織り、その下から紺のプリーツスカートをのぞかせて立っていた。四月からは高校二年生になる彼女の髪は、今日も腰まで真っ直ぐに垂れ、前髪の下の大きな黒い瞳が、翼を見上げてほんのりと細められる。
「おはよう、おじさん。今日もいいお天気だね」
その声には、もはや初期の頃のようなぎこちなさは微塵も感じられなかった。代わりに、親しみと、かすかな期待の色が混ざった柔らかな響きが宿っている。
「ああ、ひまり、入ってくれ。湯はもう張ってある」
翼が身を引くと、ひまりは慣れた足取りで玄関をくぐり、自分のバッグをカウンターの隅に置いた。彼女がコートを脱ぐと、下からは白いブラウスが現れ、その胸元には小さなリボンが揺れている。翼は視線をそらすように台所へ向かい、大鍋の蓋を持ち上げて湯気の立ち具合を確認した。
「今日はちょっとだけ、いつもと違う感じにしてみようと思うんだ」
翼が鍋をかき混ぜながら言うと、背後からひまりのくすくすという笑い声が聞こえた。
「また何か思いついたの? おじさん、最近ずっと研究熱心だよね。このあいだなんか、シャワーだけの日と湯船の日で味の違いを比べてたし」
「商売人はな、常に上を目指さないと。客の舌はどんどん肥えていく。それに……お前だって、やり方はもう十分わかってるだろう」
翼が振り返ると、ひまりはブラウスの袖をまくりながら、少しだけ顎を持ち上げて彼を見つめていた。その口元には、幼い頃から変わらぬ無邪気さとは別の、どこか大人びた余裕のようなものが浮かんでいる。
「ふふ、そうかもね。でも、おじさんがいろいろ考えてくれるの、あたしは嬉しいな。だって、おじさんが真剣なら真剣なほど、あたしの……その、お汁も、きっと美味しくなるんだもん」
ひまりは最後の言葉を少しだけ声を潜め、いたずらっぽく翼を見上げる。翼はごくりと唾を飲み込み、エプロンの下で自分の股間が熱を帯び始めるのを感じた。この感覚にも、もうずいぶん慣れてしまった。いや、慣れてはいけないのだと、頭のどこかで警鐘が鳴っているのに、体は正直に反応してしまう。
「今日は、湯の温度を少しだけ低めに設定してある。四十一度だ。熱すぎると汗が出すぎて、お前の……その、大事な成分が薄まるかもしれないからな」
「へえ、温度まで気にするんだ。あたし、熱いお湯のほうが好きだけど、ぬるめのほうが長く入ってられるかも」
ひまりはそう言うと、浴室のほうへ歩き出したが、ドアの手前で立ち止まり、翼を振り返った。
「おじさん、今日も見ててくれる?」
その問いには、もはや羞恥の震えは感じられなかった。むしろ、確かめるような、そして少しだけ甘えるような調子が混ざっている。翼は静かにうなずいた。
「ああ、見てるよ。それが俺の役目だからな」
「うん。じゃあ、脱ぐね」
ひまりは脱衣所に入ると、ブラウスのボタンを一つひとつ外し始めた。翼はいつものように引き戸の前に椅子を置き、そこに腰を下ろす。浴室には湯が張られ、かすかな湯気が立ちのぼっている。ひまりはブラウスを脱ぎ、スカートのファスナーを下ろすと、布地がふわりと足元に落ちた。白いブラジャーとショーツだけの姿になった彼女の肢体は、この数ヶ月でほんの少しだけ大人びたように翼には感じられた。胸のふくらみはあいかわらず控えめだが、腰のくびれがわずかに深まり、太ももの張りはさらに豊かさを増している。
ひまりは背中に手を回し、ブラジャーのホックを外した。するりと落ちた布地の下から、桜色の乳首がひょっこりと顔をのぞかせる。彼女は続いてショーツにも手をかけ、ゆっくりと腰をかがめてそれを脱ぎ去った。完全に裸になったひまりは、一瞬だけ翼のほうをちらりと見て、それから浴室へ消えていった。
「あ、今日のお湯、ほんとにちょっとぬるいね」
浴槽に足を入れたひまりが、小さく声をあげる。じゃぶん、と湯が揺れ、彼女の白い肌が湯気の向こうでぼんやりと光った。彼女はゆっくりと身体を沈め、肩まで湯に浸かると、ほう、と小さく息を吐く。
「でも、気持ちいいかも。なんだか、ずっと入ってられそう」
「それでいいんだ。今日は三十分、いや、四十分くらいじっくり浸かってくれ。それから……その、いつもの儀式に移ってほしい」
翼がそう言うと、ひまりは湯の中で体の向きを変え、入り口の翼のほうを向いた。彼女の膝が湯の表面を割って現れ、そのあいだから、黒く柔らかな陰毛の茂みがちらりと見え隠れする。
「おじさん、今日はね、あたし、ちょっと考えてきたことがあるの」
湯気に潤んだ声で、ひまりが切り出した。
「なんだ?」
「あたし、今までは、ただ気持ちよくなりたいってだけで触ってたんだけど……最近ね、お店に来るお客さんたちの顔を思い浮かべながらすると、なんか、もっと、こう……お腹の奥がきゅうってなるの。あの人たちが、明日も明後日も、あたしの汁が入ったラーメンを食べて、『うまい』って言ってくれるんだと思うと、恥ずかしいけど、すごく……満たされるっていうか」
ひまりは湯の中で、自分の太ももをそっと撫でながら言葉を続けた。
「だから今日はね、最初から、お客さんのこと考えながらする。あの、いつも一番に並んでるサラリーマンの人とか、スーツの若いお兄さんとか、それから……おじさんのことも」
翼は思わず椅子の背に手をかけ、体を前のめりにした。ひまりの言葉は、まるで彼女の内面の変化をそのまま映し出しているようだった。もう彼女は、単に翼に言われたから自慰をするのではない。自らの意思で、この背徳的な儀式を「自分の役割」として受け入れ、そこに歪んだ誇りさえ見出し始めている。
「……お前、そんなことまで考えてたのか」
「うん。だって、あたし、もう子供じゃないもん。おじさんが必死でお店を守ってるのを、ずっと見てきたから。あたしにできることが、これしかないなら、せめて、ちゃんと最高のものを作りたい。恥ずかしいけど、それがあたしの……役目なんだって」
ひまりはそう言うと、ゆっくりと右手を持ち上げ、自分の胸元へと滑らせた。湯の表面が揺れ、彼女の小さな乳房が手のひらでそっと包み込まれる。
「ん……っ、見ててね、おじさん。今日は、ちゃんと、お客さんの顔、思い浮かべるから」
彼女の指が、桜色の乳首をそっと摘み上げた。くりくりと円を描くように弄られ、乳首が硬くしこり始める。ひまりの口からは、息だけでできたような微かな吐息が漏れ、それが浴室の壁に反響して翼の耳へ届いた。
「はぁ……っ、乳首、じんじんする。おじさん、あたし、この前ね、お店の常連さんの夢を見たの。あの眼鏡をかけたおじさんに、『いつも美味しいラーメンをありがとう』って言われる夢。起きたら、パンツがぐっしょり濡れてて……」
ひまりはうわごとのようにつぶやきながら、左手をもう一方の乳房へと運んだ。両方の乳首が同時に弄られ、彼女の背筋に小さな震えが走る。湯の表面にさざ波が立ち、浴室に充満する湯気がゆらゆらと揺れた。
翼は固唾をのんでその光景を見つめていた。自分の股間はすでに痛いほどに張り詰め、先走りの汁が下着にじわりと滲んでいる。だが、それ以上に彼を捉えて離さないのは、ひまりの変化だった。彼女はもう、恥ずかしさに顔を覆って泣き出すような少女ではない。自らの痴態を曝け出すことに、倒錯した充足感を見出し始めている。それはまさに、翼自身が彼女に植え付けた欲望の形だった。
「んん……っ、あ、そろそろ、下も……触っていい?」
ひまりは潤んだ瞳で翼を見上げ、そう尋ねた。その声には、もはや許可を求めるというより、見届けてほしいという甘えが込められている。
「ああ、好きにしていい。今日は、お前のペースで、存分に気持ちよくなってくれ。それが、最高の出汁になるんだ」
翼がそう答えると、ひまりはこくりとうなずき、閉じた膝をゆっくりと開いていった。湯の抵抗を受けながらも、彼女の太ももが左右に広がり、その中心にある秘部が白い湯の中でぼんやりと浮かび上がる。黒い陰毛がゆらゆらと揺れ、その奥の襞がうっすらと紅色に染まっているのが見て取れた。
「はあ……っ、もう、とっくにぬるぬる。おじさんに見られながら、お客さんのこと考えてたら、ここ、すごく熱くなっちゃった」
ひまりは右手を湯の中に沈め、人差し指と中指で陰唇をそっと割り開いた。くちゅり、という粘液の絡む湿った音が、静かな浴室に小さく響く。彼女の指が、包皮から頭を覗かせている陰核に触れた瞬間、ひまりの全身がびくんと震え、湯がざぶりと揺れて床に飛び散った。
「ひゃ……っ、クリ、さわっちゃった。んん……っ、あ、あ、気持ちいい……おじさん、見てる? あたし、ここ、もうぐちゅぐちゅだよ」
彼女の指は止まることなく、硬く充血した陰核を執拗に弄り始めた。ぐちゅっ、くちゅくちゅ、ぬちゃっ……粘液と湯が混ざり合う卑猥な音が、浴室の壁を這い、翼の耳の奥へとねっとりとこびりつく。ひまりの口からは、甘く掠れた喘ぎ声が絶え間なく漏れ、その声は次第に大きくなっていった。
「あっ、あ、ああ……っ、今日、すごく感じる。おじさん、あたし、お客さんの顔、いっぱい浮かんでるの。あの、いつも二杯おかわりするおじさんとか、スープだけ飲んで帰る若い人とか……みんな、あたしの汁を、美味しい美味しいって……んんっ!」
ひまりは左手を自分の膣口へと這わせ、中指をゆっくりと沈めていった。ぬぷり、と狭い膣壁が指をくわえ込み、溢れ出る愛液が指の根元までをぬらぬらと濡らす。彼女はその指をゆっくりと出し入れしながら、右手の指で陰核への刺激を加速させた。ぐちゅぐちゅっ、ぬちゃぬちゃっ、と水音と粘液音が混ざり合い、浴室全体が少女の甘酸っぱい淫臭で満たされていく。
「あ、あ、もう、くる……っ、きちゃう! おじさん、見てて、あたし、おじさんとお客さんのために、いっぱいイくから……! み、見て、見て……っ!」
ひまりの声が裏返り、全身が弓なりにしなった。彼女は膣から指を引き抜くと、その濡れた指で陰核を素早く、執拗に擦り上げる。ぐちゅぐちゅぐちゅっ、という必死な水音が浴室に響き渡り、彼女の太ももが小刻みに震え、つま先がピンと伸びた。
「ひうぅ……っ! イ、く、イっちゃう、イっちゃうよぉぉ……んっ! あ、ああ……っ、とろけちゃう……!」
ひまりの身体が大きく跳ね上がり、どぼん、と大量の湯が床へ溢れ出る。彼女の膣口が、まるで何かを必死に貪るように、くぱくぱと収縮を繰り返し、その間からとろりと白濁した愛液が新たに湧き出て、湯の表面にゆっくりと広がっていった。ひまりはしばらくの間、脱力して浴槽の壁にもたれかかり、はあはあと荒い息を繰り返す。その頬は涙に濡れ、口元にはうっとりとした微笑みが浮かんでいた。
翼は深く息を吐き出し、椅子からゆっくりと立ち上がった。浴室の床は溢れた湯でびしょ濡れになっているが、彼の目はただ、浴槽の中で静かに余韻に浸るひまりの姿だけを見つめていた。
「……ありがとう、ひまり。今日も、最高の出汁が取れたよ」
翼がかすれた声でそう言うと、ひまりはゆっくりと顔を上げ、潤んだ瞳で彼を見つめた。湯気に濡れた彼女の黒髪が白い肌に貼りつき、その姿はどこか神聖なもののようにさえ感じられた。
「うん……。あたしも、すごく気持ちよかった。お客さんのこと考えながらすると、いつもより、もっと深いところがきゅんきゅんして……お汁もいっぱい出た気がする」
ひまりは湯の中で身を起こし、浴槽の縁に手をかけた。その白い太ももを、とろりとした愛液の名残がまだ伝っているのを、翼は目の当たりにする。
「おじさん、あたしね、最近思うんだ。これって、もしかしたら、ずっと続くのかなって。お店が流行ってるかぎり、あたしは毎週、こうやってお汁を作って、おじさんはそれでラーメンを作る。それって、なんだか……結婚してるみたいだなって」
その言葉に、翼の心臓がどきりと跳ね上がった。ひまりの顔はあいかわらず無邪気で、しかしその瞳の奥には、かすかに熱を帯びた光が宿っている。
「……ひまり、それは」
「冗談だよ、半分は。でも、あたし、おじさんのこと、大好きだもん。これからもずっと、おじさんの役に立ちたい。お店が続くかぎり、あたし、毎週来るよ。お母さんにだって、ちゃんと内緒のままで」
ひまりは浴槽から立ち上がると、翼の差し出したバスタオルを受け取り、その白い布で身体を包んだ。湯上がりの甘い匂いが、浴室いっぱいに広がる。翼は、その光景を胸の奥に焼き付けながら、静かにうなずいた。
「ああ……そうだな。でも、いつか、この秘密が終わる日が来るかもしれない。それを俺は、ずっと怖がってる」
翼の告白に、ひまりはバスタオルの端で濡れた髪を拭きながら、小さく首を振った。
「大丈夫だよ。だって、これはあたしたちだけの秘密なんだから。おじさんとあたしが黙ってれば、誰にもわからない。それに、たとえ終わる日が来ても、あたしは後悔しないよ。おじさんと一緒に、こんなに特別なことができたんだもん」
ひまりの声には、かすかな哀しみと、それ以上の確かな充足感が宿っていた。翼は、もうこれ以上何も言えず、ただ深くうなずくことしかできなかった。
その日の午後、翼は二人で採取した二番出汁をラーメンに仕立て、カウンターでひまりと向かい合って試食した。スープは琥珀色に輝き、湯気とともに立ちのぼる香りは、あいかわらず背徳的な旨味の予感に満ちている。ひまりはレンゲでスープを一口啜り、目を閉じてじっくりと味わってから、満足そうに微笑んだ。
「……今日のも、すごく美味しい。これ、明日もきっと、お客さんたち、喜んでくれるよ」
「ああ、間違いない。今日のは、いつもよりさらにコクが深い。お前が、ちゃんと気持ちよくなってくれた証拠だな」
翼がそう言うと、ひまりはほんの少しだけ頬を赤らめ、それからいたずらっぽく笑った。
「えへへ、じゃあ、来週はもっと気持ちよくなって、もっとすごいの作るね。おじさんも、楽しみにしてて」
「……ああ、楽しみにしてるよ」
翼はそう答えながら、窓の外に目をやった。春の日差しがアパートの駐車場に降り注ぎ、遠くの桜並木がほんのりと色づき始めている。季節は巡り、店は今日も繁盛し、そして月曜日には必ず、この秘密の儀式が繰り返される。いつか終わりが来るかもしれない。しかし今はただ、この甘く背徳的なスープの味が、彼ら二人だけの永遠のように感じられてならなかった。
登場人物
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鴨川翼 かもがわ つばさ男性 ・ 35
外見: 短いダークブラウンの髪、やつれた印象のダークブラウンの瞳、やや痩せ型で疲れ気味の体格、身長170cm。服装: ラーメン屋の作業着にエプロン、バンダナを巻いている。真面目で誠実だが、店の危機に追い詰められ、ひまりに背徳的な依頼をする幼い頃から彼女を知るおじさん的存在。
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菱川ひまり ひしかわ ひまり女性 ・ 15
外見: 腰まで伸びた黒く真っ直ぐな長髪、大きめの黒い瞳、小柄ながら太ももがむっちりとしたスレンダー体型、身長150cm。控えめな胸の膨らみ。服装: 普段はTシャツとホットパンツのカジュアルな姿。無邪気で気前がよく押しに弱いが、実はむっつりスケベで露出願望を秘めている。
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菱川さくら ひしかわ さくら女性 ・ 38
外見: 肩までのゆるやかなウェーブの茶髪、優しげな茶色の瞳、すらりとした細身の体型、身長162cm。服装: 看護師の制服を着て働くシングルマザー。翼の従妹であり、ひまりの母親。娘思いでやや過保護だが、夜勤が多くひまりの行動には気づいていない。





